春と子猫②
「新聞部の奴らに話してきたぞ〜」
部長が部室に戻ってきた。
「どうでしたか?」
少し心配そうに美月ちゃんが部長に詰め寄る。
「安心しろ、写真さえ撮って持ってきてくれればすぐに作って、出来次第掲示してくれるそうだ」
グッと親指を立てて部長は言った。
それを聞くと美月ちゃんの顔はパッと明るくなり、すぐに撮りましょう!と部室にあるカメラを探し始めた。
「見つけました!さぁ撮りましょう!」
意気揚々と美月ちゃんはミケを撮り始めた。
「みーちゃんさ、ここに来るまですごい不安がってたんだよ」
杏果さんは静かにそう語った。
「どうしてですか?」
「ん〜?猫嫌いな人がいるかもしれないとか面倒ごとだから迷惑かけるかもしれないとかさ。私たちそう言うの請け負う部活なのにね」
杏果さんは少し笑いながらそう言った。
「だから安心したんだと思うよ。受け入れてもらって、真摯に一緒に考えてくれる私らのことを知ってさ」
「そうですね」
一生懸命可愛く撮ろうと頑張る美月ちゃんのことを見ながらミケのことをどうにかしてあげたいって思いをひしひしと感じるのだった。
「部長さん!こんな感じでどうでしょうか!」
「どれどれ…ふむ…この写真とこの写真はかなり可愛く取れてるからこの2つで検討してもらえるように言ってくるか。美月ちゃんも一緒に来るか?」
「いいんですか?」
「あぁ問題ないぞ」
「じゃあ行きます!」
「んじゃあいってくるわ、ミケの事頼むぞ」
「「はーい」」
「いってらっしゃい2人とも」
部長達は新聞部のところへと向かっていった。
その道中、
「なぁ美月ちゃん」
「どうしたんですか?部長さん」
「杏果から聞いたぞ。よく相談してくれたな」
「いえそんな!依頼がもしあったら皆さんに迷惑をかけちゃうし、その…いろいろ心配してて…でもあの子を見て見ぬふりもできなくて…」
「面倒ごとでも迷惑ごとでもなんでも言ってくれ。そのための万屋部だからな」
部長はにっと笑いながら美月ちゃんにそう言った。
「はい…ありがとうございます!」
美月ちゃんは涙を堪えながら部長はお礼を言った。
こうしてミケが乗った学内新聞は作成され学校の掲示板に貼られた。
後日、無事ミケは引き取られることになった。
寂しくもあったがミケがこれから幸せになってくれるならと暖かく見守り、見送ってあげた。
その日飲んだ紅茶はほんの少し苦く感じた。




