春と子猫①
「最近温くなってきたな」
「ですね〜。すっかり春って感じになってきましたね」
いつもの放課後いつもの部室、優斗先輩が入れてくれた紅茶を啜りながら部長と僕はほのぼのとしていた。
「春ってなんだか時間がのんびりに感じますよね〜」
「そうだね、ついつい気が緩んじゃうね」
期末テストが終わったから余計に頭がぽわぽわしていた。そんな3人のゆるゆるな空間になっていたのだった。
そんな時、部室の扉が勢いよく開けられた。
「お疲れ様〜みんな揃ってる〜?」
「あ、杏果さん。お疲れ様です〜」
「なんだこの緩みきった空間は」
「もう春だなって。テストも終わりましたし、あとは春休みを待つだけなので〜」
「優斗、今日依頼は?」
「ないみたいだからゆっくりできるよ」
「ならよかった。みーちゃん」
「はい」
杏果さんが美月ちゃんのことを呼ぶと美月ちゃんは恐る恐る部室に入ってくる。その手には段ボールが持たれていた。
「美月ちゃんどうしたのその段ボール」
「え〜っと…これはですね…」
美月ちゃんが段ボールを部室の机に置く。
そしてゆっくりその段ボールを開けていく。
「みゃー」
中から予想外の声が聞こえてきた。
「美月ちゃん…これって…」
「はい、子猫拾ってきちゃいました…どうしましょうぅ…」
「えっと…どこで拾ってきたの?」
「今日学校に来る途中にです。1匹だけで可哀想だったのでつい…あの、誰か飼える人いませんか?」
さっきまでゆるゆるだった空間が一気になくなってしまった。
とりあえずと言うことで優斗先輩が子猫にミルクをあげ、どうするかの会議が始まった。
「んー…俺のところは無理だしな〜…優斗のところはどうだ?」
「僕のところも犬もう飼っちゃってるからね…ちょっと難しいかな」
「僕のマンションも動物禁止ですし…」
「私のところはお母さんがアレルギーだから無理なんだよね」
「やっぱり無理なんでしょうか…」
肩を落としながら美月ちゃんは子猫の方を見る。
「いや、なんとかなるかもしれん」
「ほんとですか!?」
「新聞部の奴らの学内新聞のトップに大々的に乗せてもらえるように俺が交渉しよう。その間はこの部室で当分置いとくってのでどうだ?」
「それいいアイデアだね」
「そうと決まれば早速いってくるわ」
そう言うと部長は部室から出て行き新聞部の方に走っていった。
「よかったね美月ちゃん」
「はい!じゃああとは名前ですね。何にしましょうか…」
見た感じ三毛猫だからミケ?安直すぎるかな…
「じゃあ三毛猫だからミケちゃんにしましょう!」
美月ちゃんは安直だった。