学力試験③
「何だよ英語って…何書いてるかさっぱりなんだけど…」
「はいはい、回収するぞー」
杏果さんがぶつぶつと何かを言ってるのを尻目に、無慈悲にも解答用紙は回収されていった。
かく言う冬馬自身もそれはもう悲惨な結果になるんだろうなと言うことは自覚していた。
もう早く終わってくれ…ただそれだけを考えるだけだった。
「じゃあ最後、社会科配るぞ〜」
今回ラストの社会科の用紙が各々に配られる。
「社会科って必要なのか?歴史とか今後必要ないだろ…」
「必要ない勉強なんざねーんだよ。つべこべ言わずにさっさと準備しろ。今回も40分だからな〜。じゃあ始めるぞ」
部長がタイマーのスイッチを押す。
最後の科目、社会科がスタートした。
カチカチと時計の針の音とカリカリとシャープペンで書く音のみが部室内に響きわたる。
社会科はほとんどが記憶問題だ。とりあえず思い出せるものは思い出せ!
冬馬は必死に自分の記憶の中から解答と思しきものを引き出し続け解答用紙に書き記した。
〜40分後〜
ピピピッとタイマーが静寂な部室の中に鳴り響く。
「はい、終了、みんなペンおけ〜」
部長がタイマーを止めながらそう言った。
「あぁぁあ!わっかんねー!!」
杏果さんが頭を掻きながら大きな声でそう嘆いた。
「はい、回収回収」
嘆く杏果さんを無視し、部長はさっさと解答用紙を回収していく。
「杏果さん…お疲れ様でした。どうでしたか?」
「どうもこうもねぇよ…最悪だよ〜…」
「僕もです…」
いきなり学力試験なんてされてもいい成績なんて出せるわけがない…
ひどい結果なのは僕だけじゃないみたいだ。
その一点だけが冬馬の唯一の安心できる所だった。
「んじゃあ解答用紙と答え渡していくから各々で採点してくれ。あと先に言っとくが答えとあってなかった時点でそれはバツだからな。厳しく採点するように」
そう部長から言われ解答用紙と答えが配られた。
答え合わせするのが怖いけどもうここまできたらやるしかない。冬馬は意を決して自分自身の解答にまるばつをつけていった。
〜20分後〜
「おっし終わりっと…優斗の方も終わったか?」
「うん、こっちも終わったよ」
「杏果〜終わったか〜」
「終わってるよ…なにもかも」
「そうか。まぁ本番はまだこれからだから気を落とすな。勉強すりゃいいんだよ。冬馬くんもそんなこの世の終わりみたいな顔したいでいいからな〜。美月ちゃんもおわったか?」
「はい、私も終わりました」
「じゃあ各々点数言っていってくれ。俺は国語87点、数学89点、理科97点、英語78点、社会98点だ」
「めっちゃ高得点じゃないですか!」
「忖度だ!不正があったんじゃないの!」
「ある訳ないだろ、普通に予習復習してりゃ取れるんだよ。次優斗な」
「僕は国語98点、数学95点、理科97点、英語99点、社会100点だよ」
あれ?この人達って頭いい人だらけなの?
「次、杏果は?」
「国語68点…数学54点…理科42点…英語25点…社会35点…」
「理科と英語と社会が絶望的だな」
「これから勉強する予定だったんだよ!」
「杏果ちゃんそう言って勉強してた試しがないでしょ」
「ゆうとまでそんなこと言う〜……」
「次、冬馬くんは?」
「えっと…国語60点、数学55点、理科64点、英語45点、社会50点です」
「まぁまぁ平均って感じだな。英語だけなんとかすりゃ赤点は回避できるだろ。最後美月ちゃんは?」
「全部100点でした!」
この子はあれだ。天才なんだな。
「そいつは上場、ご褒美は美月ちゃんの物だな。そいでもって杏果と冬馬くんにも特別ご褒美、杏果は俺と優斗が、冬馬くんには美月ちゃんが勉強を教えるってことで」
「頑張ろうね、杏果ちゃん」
「ビシバシいくからな」
「こんなご褒美やだ〜!!」
「よろしくお願いしますね♪シロくん」
「お手柔らかにお願いします」
こうして期末テストに向けて勉強会をすることになった万屋部なのだった。