杏果さんの運動紀行①
放課後、いつもの部室。
優斗先輩は万屋箱の中をあさり、今日の依頼を確認していた。
「う〜ん・・・今日は結構多いな・・・」
中身を確認した優斗先輩はそうつぶやいた
今日の依頼なんだけど結構量が多いんだけど大丈夫かな?特に運動部だから杏果ちゃんになるんだけど・・・」
「私は別にかまわないけど、そんなに多いの?」
杏果さんが椅子を漕ぎながら優斗先輩に聞き返す。
「えっとね、女子バスケ部の助っ人と柔道部のスパーリング、剣道部の対戦相手役、女子バレー部の監督が不在らしいからその代わりの計4つあるんだ」
「げっ、ほんとに多いな」
「明日は土曜日だからね、次の日練習試合が被ってるのかも。それでもかなり多いから今日はサポートに冬馬くんにも行ってもらおうかなって思ってるんだけど」
「僕ですか?」
「私じゃないんですか?」
美月ちゃんもおんなじ考えだったらしい。女子の部活なら女子である美月ちゃんが適任だと思ったからだろう。
「美月ちゃんの方にも依頼が来てるんだよ。裁縫部の顧問の竹中先生から代理顧問として来て欲しいんだって。だから今回は冬馬くんに杏果ちゃんの付き添いをしてもらいたいんだ」
「そういうことだったんですか」
てか美月ちゃんを代理顧問にしたいってくらい裁縫の腕あるんだな。確かに服も作れるくらいだからかなりすごいんだろうな。
「分かりました。じゃあ私の方は行ってきますね」
「うん、ご褒美用意して待ってるからね」
「はい、ありがとうございます!」
そう言うと美月ちゃんは鞄をもって部室をあとにした。
「さてっと、じゃあ私たちも準備していくかシロ」
「そうですね」
「ところで優斗〜、今日のご褒美ってな〜に〜?」
準備をしながら杏果さんは猫撫で声で優斗先輩に聞いていた。
こういう時だけ甘えた声を出すあたり卑怯なんだよな〜・・・
「今日は杏果ちゃんの好きなチーズケーキ、それもバスクチーズケーキでどうだい?」
「頑張ってくる!行くぞシロ!」
そう言うと杏果さんはすごい勢いで部室を出て行ってしまった。
「うぇ!?ちょ、杏果さん!?待ってくださいよ!」
「あ、冬馬くん、これ持って行って、きっと役に立つから」
そう言われ優斗先輩から保冷バックを受け取る。
「分かりました、じゃあ行ってきます!」
杏果さんの後を追うように僕は部室を後にした。




