バレンタインデーの万屋部④
「たっだいま〜!みーちゃんが来てくれたからわりかしすぐ終わったぞ〜」
勢いよく部室の扉を開いて杏果さんが部室に戻ってきた。
「お、おかえり杏果ちゃん。早かったね」
部長を2人でソファーに寝かしつけたタイミングで2人が帰ってきた。
「ん〜?琢磨どうしたんだ?」
「えーっと…疲れたからちょっと横になるって言ってたよ」
「ふーん、ま、いいけど。それよりさみーちゃんがチョコくれるって!シロたちも貰ったんだろ?」
「はい、もらいましたよ…すごく綺麗で可愛らしくって食べるのが勿体無いくらいのやつを」
「いいな〜」
「杏ちゃん先輩の分はこれです。はい、どうぞ〜」
「やった〜!開けていい?」
「どうぞどうぞ」
「うわっ!めっちゃかわいい!高かったでしょこんないいやつ、ありがとうね」
杏果さんのも綺麗に作られている丸いチョコが4つ入っていた。
杏果さんはそのうちの一つを手に取り口に運ぼうとする。
「全然高くなかったですよ、なんせ手作りですから♪」
その発言を聞いた時にはすでに遅かった。
杏果さんはチョコを口の中に放り込んでいた。
杏果さんはビクンッと身体が動いた後、その場から動かなくなった。
「杏ちゃん先輩?どうしたんですか?」
美月ちゃんが杏果さんの顔を覗き込もうとする。
「美月ちゃん!そういえば優斗先輩からもバレンタインのチョコがあるんだってさ!」
覗き込もうとする美月ちゃんを遮り、注意を杏果さんからそらす。
「そ、そうだね、2人の分持ってくるから座って待ってて」
「ささっ、美月ちゃんも座って座って!」
「でも杏ちゃん先輩は、」
「ちょっと疲れて動かなくなっちゃっただけだと思うから!ちょっと休ませておいてあげて!」
「そうですか、シロくんがそう言うなら…そう言えば今回の依頼ってなんだったんですか?」
「チョコを作って送ろうって依頼だったんだ。だから作るのに疲れちゃったんじゃないかな〜」
苦しいか!?この言い訳だと!!
「そうだったんですか、それは疲れちゃっても仕方ないですね」
通じた!よかった!
美月ちゃんはわりとちょろかった。
「はい、2人とも。ハッピーバレンタイン」
優斗先輩からのバレンタインは手作りチョコのムースだった。
「これとは別に依頼報酬のザッハトルテもあるからいつでも言ってね〜。飲み物もホットチョコがあるから欲しかったら言ってね〜」
「ありがとうございます!すっごく美味しそうですね!」
「じゃあ」『いただきます』
チョコのムースはとっても美味しかった。軽い食感で、中からベリー系のジュレが出てきて甘酸っぱさとチョコの風味と甘味が相まってとても美味しかった。まるで売り物みたいだ。
冬馬たち2人はペロリと平らげてしまった。
「ありがとうございました。ムース、とっても美味しかったです!」
「喜んでもらえてよかったよ、まだケーキはあるから食べてってね〜」
すかさず優斗先輩は次のケーキを出してくれた。
僕達2人がケーキを食べてる間、優斗先輩は杏果さんのところに何かを持っていっていた。
コップを持っていってたからおそらくホットチョコを持っていったのだろう。そのおかげで杏果さんはなんとか復活して、無事バレンタインケーキにありつけたのだった。




