飼育部からの緊急依頼③
「で、ボスコはこの茂みのあたりにいるのかい?」
「はい、もう少しで捕まえれてたんですけど……」
「悪かったってば」
「まぁやっちゃったことは仕方ないよ。でもどうしよっか」
「そうですね〜…おんなじ手が使えればいいんですけど…さすがに警戒されてるでしょうし…」
美月ちゃんはとうもろこしの粒をとりあえずと、茂みから手前の方までまき、隠れて様子を見ることにした。
「おーっす、ここにいたのか」
「見つかりましたか?」
隠れて待っていると部長と糸部さんがこちらに近づいてきた。
「一応見つけたは見つけたんですけど、あの茂みのあたりに隠れて出てこないんですよ」
「今餌で誘き出せるか試してるところなんだ」
「なるほどな。あの茂みのあたりにいるんだな?」
「おそらくね」
「だったら俺と糸部で茂みをあさるからそれで出てきたところを捕まえるってのはどうだ?」
「それだと部長さんと糸部さんが危険じゃないですか?」
「がさいれしたらさすがに逃げ出すだろうから大丈夫だろ。最悪こっちにきたら俺たち2人が捕まえたら御の字だしさ」
「だといいのですけど」
「大丈夫だってみーちゃん。襲われたとしてもつつかれるくらいだ」
「お前は美月ちゃんの優しさをもう少し見習え。じゃあ糸部は左側から、俺は右側から行くぞ」
「わかった」
「お前らはとりあえず茂みに平行に並んで、もし出てきたらネットか網でつかまえてくれ」
「オッケー」
「『了解』です!」
「じゃあ作戦開始だ」
部長と糸部さんが両脇から茂みの中へと入っていく。
少しずつ、ガサガサと茂みの中から音が聞こえてくる。
すると突然、
「そっちいったぞ!」
部長の大きな声が聞こえてきた。
茂みの中から凄い勢いでボスコが飛び出してきた。
出てきた正面には網を持った優斗先輩。
「優斗先輩そっち行きました!」
「任せて!」
優斗先輩はまるで虫を捕まえるかのように軽々とボスコを網で捕まえた。
「ネット持ってる人〜ネット投げて〜」
すかさず冬馬がネットを投げ、ボスコは無事確保された。
「いや〜ありがとう。おかげで助かったよ」
「おう。今度は気をつけろよ」
「無事確保できて良かったですね〜」
「お手柄ですね。優斗先輩」
「たまたま僕のところに出てきただけだよ」
「私のとこに出てきてたら私だってすぐ捕まえれてたのに」
「杏ちゃん先輩拗ねちゃダメですよ〜」
「別に拗ねてないしー」
「まあまあ、今回はお疲れ様だったな。帰ったら優斗の菓子で打ち上げでもしようぜ」
こうして飼育部からの緊急依頼をやり遂げた万屋部だった。