飼育部からの緊急依頼②
「ボスコボスコ、ボスコやーい」
「杏果ちゃん、そんなに不用心に行ったら危ないよ」
東校舎組、杏果さん優斗先輩ペアは靴箱周辺を探索していた。
「大丈夫だよ、ここら辺見通しいいし見つけたらすぐわかるって。優斗は心配性すぎるんだよ」
「そうは言っても、見通しが良くても危険なのは危険ななんだからね」
「わかってるって」
「冬馬くんたちも大丈夫かな」
「なんかあったらスマホに連絡入れるように言っといたから大丈夫だろ」
「ならいいんだけど……」
「それより、ここにはいないみたいだし、次のところ行こ〜」
「そうだね。駐車場の方も見に行こう」
〜〜一方その頃〜〜
「ボスコさ〜ん、どこですか〜?」
「ここら辺にはいないのかな」
冬馬と美月ちゃんペアは西校舎にある学内園に来ていた。
畑の野菜を狙ってくる可能性にかけて様子を見にきたのだった。
「狙い、外れたんでしょうか…」
「もしかしたら杏果さんたちの方にいるのかもしれないね」
その時、近くの茂みから音がした。
「シロくん、今そこの茂みから音がしませんでしたか?」
「したね…もしかしたらボスコかも…」
恐る恐る、網で茂みを突いてみる。
すると網をぐいっと何かに引っ張られた。
かなり力が強い。思い切って引っ張ってみると60センチほどもある大きいニワトリが姿を表した。
間違いない、こいつがボスコだ。
ボスコはそのまま咥えていた網を離すと、また茂みの中へと姿を消した。
「すごくおっきなニワトリでしたね…。あれがボスコさんでしょうか」
「多分ね、あんなに大きいとは思わなかったけど…。とりあえず杏果さんたちに連絡入れとくよ」
「お願いします」
「これでよしっと。で、どうやって茂みから誘き出そうか」
「そうですね…さすがに茂みに入って捕まえるのは危ないでしょうし…」
「何か作戦があればいいんだけどね…」
「そうだ!こんなのはどうですか?」
そういうと美月ちゃんはちょっと待っててくださいとだけ言い残し、どこかへと行ってしまった。
少しすると何かを片手に戻ってきた。
「これ、園芸部の人にとうもろこしもらってきました!これをまいておびき出しましょう!」
すごく安直な作戦だ…。
「出てくるかな〜…」
「物は試しですよ」
そういうと美月ちゃんは、とうもろこしの粒を茂み付近に投げやった。
「ほんとにこれで出てくるのかな…」
「これでちょっと様子見てみましょう」
僕達は少し離れたところに隠れて様子を見ることにした。
「やっぱりダメだったんじゃない?」
「いえ、見てください」
見てみると茂みの中から顔だけ覗かせとうもろこしを啄むボスコの姿が見えた。
まさかの最高である。
でも、身体までは出さずまた茂みの中へと入っていってしまった。
「シロくん成功です!」
「信じられないけど成功だねこれ」
「今度はもう少し手前にもまいてみましょうか!」
美月ちゃんはまだとうもろこしの粒を取り、今度は茂みの方から手前の方に粒をまいてまた少し離れたところで様子を見ることにした。
すると、今度は茂みから姿を出してとうもろこしを啄みだした。
そうして啄み終わるとまた茂みに隠れてしまった。
「出てきましたねシロくん」
「よし、今度は出てきたところをネットで捕まえよ」
さっきとおんなじようにとうもろこしをまき、隠れる。手にはネットを持っていつでも捕まえれる準備を整える。
ボスコが茂みから姿を現す。
できるだけ近づくまで待つ。
「今ですシロくん!」
美月ちゃんの合図とともに出ていこうとした時、
「おーいシロ〜!ボスコどこだ〜!」
大声が後方から聞こえてきた。
その声に驚いたのかボスコは茂みの中へと隠れてしまった。
「杏果さん…せっかく捕まえれてたのに…」
「え?なになに?私なんかやらかした?」
絶好のチャンスを逃してしまったのだった。