飼育部からの緊急依頼①
それは突然やってきた。
いつもの部室で優斗先輩の入れてくれたお茶をすすっているといきなり部室の扉が勢いよく開いた。
「万屋部!やってるか!」
肩で息をしながらすごく焦っている様子だった。
「糸部じゃないか。どうかしたのか?」
「部長さん、お知り合いなんですか?」
「あぁ、こいつは糸部俊輔。飼育部部長だ」
飼育部なんて部活もあるのかこの学校。さすが県屈指のマンモス校。
「んで、そんなに急いでどうしたんだ?」
「お前たちに至急の依頼があるんだ!」
「まぁ今暇してるから別に構わないが……内容は?」
「脱走したニワトリの探索と確保だ」
うちの学校ニワトリなんか飼ってたのか…
「逃げた数は?」
「1匹なんだが、その逃げた個体が問題なんだ」
「げっ、もしかしてその逃げたやつってボスコじゃないよね?」
「そのまさかなんだよ……」
「マジかよ…まためんどくさいのもってきたな」
「杏果さん、ボスコってなんですか?」
「うちの学校で飼ってるニワトリのなかの文字通りボスなんだけど、気性は荒いし、脱走も前に一回やってるんだけどその時は生徒の靴をめちゃくちゃにしてたんだよ」
「前はまだ小さかったから俺たちだけでも捕まえられたんだけど、前よりも大きくなっちまったから人手が欲しいんだ…飼育部は男子が少ないし、人数もそんなに多い部活じゃないから…頼む!力を貸してくれ!」
「まぁ…依頼なら仕方ないか…よーしお前らとりあえず体操服に着替えていくぞー」
「すまん、恩にきる!」
体操服に着替え、ニワトリの飼われている飼育小屋へと足を運ぶと、ニワトリ小屋に穴がガッツリ空いていた。
「これはまた…すごいことなってんな〜」
「こんなに穴って空くもんなんですか?」
「この小屋自体がもう古くなってるんだ。その穴空いてるところも僕たちが直してた部分だったんだけど…」
「そこを狙われたって感じか」
糸部さんはこくんっと頷いた。
「とりあえずどこに逃げたか探すところからだな。探すのは俺たちでやるから飼育部は小屋の修理でもしててかれ」
「すまん。任せた」
「おう、任せとけ」
「それで?何か策はあるの?」
「手分けして探すのもいいけど、さすがにこの学校広いから。それにボスコは凶暴だから杏果ちゃん美月ちゃんには誰かついていてあげる方がいいだろうね」
「んじゃあ杏果には優斗、美月ちゃんには冬馬くんがついていってくれ」
「私は別に1人でもいいけどな」
「ダメだよ杏果ちゃん、運動神経いいとはいえ相手は凶暴だからね。何かあった時1人だと危ないから」
「ゆうとは心配性だな。ま、いっか」
「よろしくお願いしますね、シロくん」
「うん、僕達も気をつけて探そっか」
「琢磨くんはどうするの?」
「おれか?おれは糸部と行動するつもりだ。ちゃっちゃと直して探す方に加わるからそれまでは4人で探しててくれ」
「万屋部のみなさん、これを」
そういうと、糸部さんは網とネット貸してくれた。
「心許ないかもしれませんけど、使ってください」
「じゃあ、優斗・杏果ペアは東校舎から、冬馬くん・美月ちゃんペアは西校舎から探索してきてくれ」
「わかったよ、じゃあ行こっか杏果ちゃん」
「シロ、くれぐれもみーちゃん守るんだぞ〜」
「こっちも行こっか」
「はい!」
こうして、ボスコを探す依頼が開始した。