プリンを作ろう④
「うぃーっす、出来たぞ〜」
「2番手は杏果ちゃんか」
ガラガラっと扉を開けて杏果さんが中に入ってくる。
「杏果はどんなプリンつくったんだ?」
部長のキャラが元に戻ってる……
「私が作ったのはこれだ!」
そう言うと各々の前に鞄に入ったプリンが置かれる。
その側面にはイチゴの断面がみられて、淡いピンク色をした綺麗なプリンだった。上にはカラメルではなく赤いジュレのようなものがのっていた。
「これは……生プリンかい?」
「さすがは優斗、気がついたな」
「あの…生プリンってなんですか?」
思わず聞いてしまった。
「生プリンはオーブンなんかで焼かないで作るプリンのことだよ。焼かない代わりにゼラチンなんかを混ぜ込んで冷蔵庫で冷やして固めるプリンのことだね。焼きプリンなんかと違って、すごい柔らかくてとろとろなのが特徴なんだ」
「私蒸し焼きの硬めプリンも好きだけど、生プリンのとろっとしたのも好きでさ、今日は生プリンの気分だったからこっちにした」
「杏果さん料理なんてできたんですか」
「シロは私をなんだと思ってるんだよ…」
「いや、てっきり食べるだけで作らないのかなって」
「まぁ基本はそうなんだけどな、たまにはこうして作ることもあるよ。優斗ほどじゃないけどね」
杏果さんがここまでつくれる人だなんて…思いもしなかった…。見た目も綺麗だし、美味しそうなのが見てすぐにわかる。
「ほら、シロの分もあるから、シロの作ったのも私にちょうだい♪」
「ありがとうございます。はい、僕の作ったプリンです。どうぞ」
「サンキュー」
「んじゃまあ採点するか」
「そうだね、じゃあいただきます」
僕も一口、
パクリと口に運ぶ。
口いっぱいにイチゴの風味が広がり、プリンがとろっととろけるような食感。イチゴの果肉と上にかかっているいちごジャムが甘酸っぱくプリンの甘さとマッチしていてすごく美味しい。
これ優斗先輩にも引けを取らないんじゃないか!?
「うん、すごく美味しいねこれ。腕あげたんじゃない?杏果ちゃん」
「まさか杏果がこんなに美味いもん作るとは…ありえない…」
「ほんとにこれ杏果さんが作ったんですか?」
「お前らは私をなんだと思ってるんだよ!!」
「食べ専のぐーたら?」
「死ね!くそオタク!」
パーンと部長に杏果さんの上履きが飛んでいった。
「でもどうやってこれ作ったの?」
「んー、ググって美味しそうなの見つけたからそれ真似して作った」
「あーそう言うことね。材料はどうしたの?」
「イチゴは園芸部のとこからもらってきて、いちごジャムは近くのスーパーで買ってきた」
僕のプリンを食べながらそっけなく答える杏果さん。
「シロ〜これ美味しいけどカラメルにも黒糖使ったのはまずったんじゃない?」
「さっきそれ指摘されました…」
「やっぱりな。プリン自体は美味しいのにもったいなかったな」
伊達に優斗先輩のスイーツを食べてる杏果さんなだけあってそこはしっかり指摘してくるんだな。さすがです。
「じゃあ採点するね」
優斗先輩は10点満点のプラカードを出した。
今大会初の満点だった。
対する部長は3点のプラカードを出して、合計13点となった。
「おいこらオタク。なんで3点なんだよ」
「だってお前これググって作ったんだろ。いわば盗作だからな3点でも高いほうだ」
「味がよかったらいいじゃねーか」
「あと審査員に手を挙げたので減点しました」
「なんだと、このやろう!」
「また減点されたいのか!」
「やれるもんならやってみろ!」
「2人とも落ち着いて、まったくもう…」
こんな2人が一緒で優斗先輩大変だっただろうな…
とは言え順位は現在冬馬が一位。
最後の美月ちゃんがどんなものを作ってからかで変わってくる。
美月ちゃんが作るプリンも楽しみだ。