プリンを作ろう③
「お、1番のりは冬馬くんか」
部室に戻ると机に部長と優斗先輩がスタンバイしており、後ろのホワイトボードには[第一回プリン王者決定戦]と書かれていた。
この人達もやる気満々だな。
「早速だが、出来たものを見せてくれたまえ」
「なんなんですかそのキャラは……」
コトッと部長たちの前に作ったプリンを差し出す。
「冬馬くんは王道のプリンにしたんだね」
「はい、2人は違うのを作る感じだったので」
「なるほど。気をてらうより王道で勝負といったところかな。しかし、王道だからこそ審査は厳しくなるというものだぞ、冬馬くん」
「あの、部長…元の部長に戻ってください…」
「俺は今審査員だからこの感じでいいんだよっ!」
「はあ……」
「ところで冬馬くん。何か工夫した点とかはあるのかな?」
「工夫した点、ですか?」
「アピールポイントはしっかりアピールしてくれたまえ」
工夫した点…アピールポイントか……。
「強いて言えば…砂糖ですかね…」
「ほう、砂糖」
「普通の上白糖じゃなくて黒糖を使ってみたんです。卵に溶かしきるのに少し苦労しましたけど、アドバイスどおり裏ごしもしましたし変ではないと思います。カラメルにも黒糖を使ってみたので風味も変わるかなって」
「なるほど…砂糖を変えてきたわけだね」
「シンプルな変化がどう出るかだな。じゃあ早速いただこうか」
「いただくね」
なんでかな、すごいドキドキする。料理番組とかで評価うける人ってこんな気持ちなのかな。
2人が味わっているのを固唾を飲んで見守る。
2人とも一口食べたあとスプーンを置いた。
「さて、じゃあ採点に移るとしよう」
「採点はお互い10点満点で合計20点満点で採点するからね」
「お、お願いします…!」
「じゃあまず僕の方から」
そう言うと優斗先輩は机の下をごそごそとあさり始めた。
そして点数の書かれたちっちゃなプラカードを出してきた。
その点数、7点。
「じゃあ次は俺だな」
部長も机の下から8点と書かれたちっちゃなプラカードを出してきた。
「合計点は15点だな」
思いの外、高得点で少し。と言うよりかなり嬉しい。初めて作ってからなら万々歳じゃないのかな
点数らホワイトボードに書かれた、冬馬の名前の横に書き出される。
「じゃあ評価について解説を優斗からたのむわ」
「プリン液に黒糖を使ったのはとてもいい案だったかな。味わいも良かったし裏漉しもしてあったから舌触りもすごくよかった。でも、カラメルにも黒糖使っちゃったのがマイナスポイントかな。カラメルに黒糖使っちゃうと黒糖の風味の方が強くなっちゃうからカラメルが普通の砂糖だったらもう少し点数は上がってたかな」
「なるほど…カラメルは普通のやつの方がよかったのか…」
「でもアイデアはすごくよかったよ」
「ありがとうございます!」
「俺も大まかにはおんなじだな。カラメルが甘すぎる感じがしたからそこさえ良ければ10点だったな」
「黒糖だと色が変わるのがわかりづらいからね」
「次回リベンジだな」
「そうですね、今度は満点取りたいです!」
「さて、じゃあ冬馬くんもこっち触って残りの2人を待つとしよっか」
「そうします」
冬馬は余分に作っていた一つを口にする。
自分で作ったやつは美味しい、その教えは本当のようで甘かったけど美味しかった。