ちっちゃなゲーム大会と初詣③
「あーさむっ、外出るとやっぱ寒いなー」
はぁーと手に息をかけながら手をすり合わせ。杏果さんがぼやいた。
「杏ちゃん先輩、私カイロ持ってますけどひとつ使いますか?」
美月ちゃんが上着のポケットからカイロをひとつ取り出して杏果さんに渡した。
「サンキューみーちゃん。それはそうとさっきまでポケットに入ってたってことはそのポケットの中はもしやほかほか状態なのでは?ちょっと失礼しちゃおっかな!」
「ひゃぁぁ!冷たいですー!」
「おぉ!ぬくぬくだ!みーちゃんの手もあったかいな!」
「杏ちゃん先輩の手が冷たすぎるんですよー!」
「よいではないかよいではないかー!」
「ひゃぁぁぁ!」
2人して楽しそうで何よりだ。
そんな光景を見てほっこりしていると、美月ちゃんと目があった。
「シロくんも使いますか?」
そう言うと別のポケットからカイロをひとつ出してくれた。
「いいの?」
「はい、かまいませんよ」
「じゃあ」
手を伸ばして受け取ろうとすると、その手を夏菜にグイッと引っ張られた。
「お兄ちゃん、カイロなら私のを貸してあげるから」
引っ張られたその手ごと夏菜の上着のポケットに突っ込まれた。
「お、おう、ありがとう」
「雨宮さん、気を使わせて申し訳ありません。ほんとどうしようもない兄で」
「ううん、全然大丈夫だよ〜」
「ありゃ修羅場だな」
「だねー」
「妹さん、冬馬くん取られたくないのバレバレだな」
「当の本人は気づいてない感じだけどね」
「気づかないもんなんかね、ああ言うのって」
「案外気づかないのもなんじゃない?」
「冬馬くんも大変だな」
後ろの方で部長と優斗先輩が何か話してる。
平然としてるけどやっぱ妹のポケットに手突っ込んで歩いてるのってやっぱ変かな?
「ありがとう夏菜、もう大丈夫だから」
考えると少し恥ずかしくなり手を引っこ抜こうとする。
しかし、抜こうとしたその手をさらにグイッとポケットに突っ込まれた。
「お兄ちゃん、遠慮しなくていいのよ。寒いんだもの、こうしてた方が暖かいでしょ」
引っ張られた手がびくとしない。いつの間にこんなに力つけたんだ。
「兄弟仲いいんだなシロ」
「仲良いことはいいことですよシロくん」
冬馬は諦めて妹のポケットの中で手を繋がれながら神社へと向かうのだった。