ようこそ闇鍋会へ④
「ラスト行こうと思うけど…みんな大丈夫か?」
「さすがにちょっとお腹が膨れてきたな〜。私のもちがきいたかな、でもまだあとちょっとなら入るぞ」
「私もあと一回なら大丈夫です」
「男子勢は頑張ってくれよ」
「僕たちに拒否権はなしですか……」
「諦めよう冬馬君」
優斗先輩に肩をポンと叩かれる。
せめて美月ちゃんが変なもの入れなければいいんだけど……
「じゃあ明かり消すぞ〜」
ぱちっと部長が明かりを消し、スマホの明かりを頼りに席につく。
「じゃあラスト入れてくぞ」
スマホの明かりを消し、部長が何かを入れていく。ぼちゃんと何か重たいものを2つほど入れたような音がした。
続く優斗先輩はぱしゃぱしゃっと軽い音がした。おそらくは葉野菜系の何かだと思う。
次に冬馬の番がまわってくる。
冬馬はトレーになったたらの切り身を鍋に流し入れる。
ぱちゃぱちゃぱちゃっと音を出しながら鍋の中へと入っていった。
次の杏果さんもぽちゃぽちゃぽちゃっと音をさせながら何かを入れた。
杏果さんも杏果さんでなにを入れるかまるで検討もつかない。変なもの入れそうな気がするし……
(音的には野菜系だったら根野菜系だろうし魚介系かもしれないし……ダメだ、分からない)
最後に問題の美月ちゃん。
ぽちゃぽちゃぽちゃっと音をさせながら鍋に何かを入れていく。美月ちゃんはほんとに見当がつかない。
今回は缶から開けてないあたり変なものじゃないような気もするけど……
全員が入れ終わり、蓋をしたあと部長が部屋の明かりをつける。
「さて、と今回なんだが、蓋を開ける前に誰がなにを入れたか言い合わないか?」
「いいですね、そうしましょう!」
(ここでなにが入ってるか分かったらまだ覚悟ができる…!)
そう思った冬馬は部長の意見に大賛成した。
「じゃあそうするか〜みーちゃんもそれでいい?」
「大丈夫ですよ」
「じゃあ、俺は今回冷凍のそば(ダシ付)を2つ入れたぞ。シメってのと年越しだからな」
「琢磨君いい選択だね、僕は水菜だよ。ありきたりすぎたかな?」
「そんな事ないだろ、鍋には必要なもんだからな。冬馬君は何入れたんだ?」
「僕はたらの切り身です。せっかくなら魚介も入れたらなって」
「魚介だったら私も入れたぞ〜私はカキだ!」
「え!杏ちゃん先輩もカキ入れたんですか!」
「じゃあみーちゃんも?」
「私もカキ入れたんですよ〜」
「ここにきて被ったな〜まあ闇鍋だからそんなのもあるだろ」
よかった!最後は普通の鍋になりそうだ!最後の最後で美味しく鍋を楽しめそうでよかった。ほんとに。
「そろそろ頃合いかな〜、開けるぞ〜」
かぱっと部長が蓋を取る。
「よし、じゃあいただきま……」
鍋の具材をお玉で取ったとき、なんとなく見慣れた橙色の固形物が入っていた。
「……なに……これ……」
いや、聞かなくてもなんとなくわかる。これは…
「あ、それ私が入れたカキです」
「え、みーちゃんカキって牡蠣じゃなくて?」
「あれ?杏ちゃん先輩柿じゃないんですか?」
「美月ちゃん…鍋に柿入れないよ……」
ついに言ってしまった…。流石に上げて落とされると言いたくもなってしまった。
でもまあ今までのものを考えると一番マシなのかもしれない…。
ちなみに、なぜ柿を入れたか聞くと、「今年食べれなかったから入れちゃいました」とのことだった。
まぁ、柿だけ避けて食べて最後に食べればまだなんとかよかった。
そのあと、「クリスマスケーキも食べてなかったのでどっちにしようか迷ったんですよ」なんて言われたのでほんとに柿でよかったと心底安心した。
こうして第一回闇鍋会は賑やかに幕をおろしたのだった。