ようこそ闇鍋会へ③
「よし、じゃあ2回目始めるか…」
鍋の中を食べ切り、一度、出汁をリセットし直して再スタートをきった。
流石にあれにまた素材入れたら食べれるかどうか怪しくなりそうだし……。
「今回も俺から入れていくから、それから時計回りで入れていってくれよ」
2回目、部長が何かを鍋に入れる。ぽちゃぽちゃぽちゃと音はするけどそんなに重量を感じない軽い音がした。
(てことは野菜とかじゃないな)
こう言うところで考えるのも闇鍋の楽しみなのかもしれない。
次に優斗先輩が何かを入れる。今度はほとんど音が鳴らなかった。
これに関してはなにが入ったか全然わからない。
(優斗先輩のことだから変なものを入れてはいないと思うんだけど……)
冬馬のばんが回って来る。今回は水をあらかじめ切っておいたくずきりを入れることにした。
ちょっと固まってしまったのかじゃぽんっと勢いよく入ってしまう。
次に杏果さんのばん。
ちゃぽん、ちゃぽん、ちゃぽん、ちゃぽん、ちゃぽん。
合計5個何かを入れた音が聞こえた。
(音的には固形の何かだけど……なんだろう)
そして問題の美月ちゃん。
ぱきゃ、きりきりきり。
どぼどぼどぼ。
(あーもうこの子ほんとになに入れてるか分かんない。ほんとに怖い)
蓋を閉め5分間ほど火にかける。
「さて…今回は鍋の蓋を取ってからちょっと見てみるか」
「そ、そうですね。それがいいと思います」
「じゃあ開けるぞ!」
かぱっと鍋の蓋があく。
そこには水炊きだったのに薄い赤色に変色した出汁になった鍋があった。
「と、とりあえず入れていこうか」
優斗先輩がお玉でみんなの器によそっていく。
冬馬の器の中には豚肉と薄揚げ、白いこれは角餅かな?それとくずきり、謎の豆が入っていた。
「えーっと……各々なに入れたか教えていただけませんか?」
「俺は薄揚げ」
「僕は豚のしゃぶしゃぶ用のお肉だよ」
「僕はくずきりをいれました。杏果さんは……」
「私は今回普通だぞ、鍋と言えば餅だろ」
「まあ、ありと言えばありですね。水炊きにもちってのも変ですけど……」
寄せ鍋とかなら大いにありなんだけどね、おもち。
「で…最後に美月ちゃんはなにを入れたの?」
聞きたくない、できれば聞きたくない。
「私凄いんですよ!誰かがおもちを持ってくるって読んでたんです!」
「たしかに杏果さんがもってきたけど…」
「だからおもちといえばこれです!煮た小豆を持ってきました!これでぜんざいの完成ってことです!」
そう言うと湯で小豆と書かれたパッケージの空いたカンカンを自信満々に見せつけてきた。
確かにおもちとはベストマッチではある。でもこの鍋、それ以外も入ってるし、なんなら昆布だしが出てるんですが……
「と、とりあえずいただこうか」
顔をひきつらせながら優斗先輩が先人を切って食べる。
「うん…食べれないことはない…かな」
流石の優斗先輩でもフォローしきれないだと!?
冬馬持ちと口食べてみる。
塩っけのなかにほんの少し小豆を感じる。つぶのところ以外はほとんど味が薄く、でも若干の甘みがすごくお肉とかとマッチしている。悪い意味で。
おもちだとまだマシだけどそれでも小豆の量が鍋の出汁に対して、圧倒的に少ないせいで決して美味しいとは言い切れない味だった。
「部長…ラスト不味くないですか?」
「みーちゃん最後の一個入れる前に教えて欲しいんだけど……」
「杏ちゃん先輩でもだめったらだめです〜。入れて食べてからじゃないと」
「食べきれなかったら勿体無いしさここはひとつ聞いといた方がいいかなって」
「大丈夫ですよ♪最後は私の大好きな物ですから!安心してください!」
不安しかない……
ちゃんとルールに鍋に合うものって条件をつけるべきだった。
後悔しても後の祭り。ここにきてまさか美月ちゃんの天然っぷりが炸裂するとは思いもしなかった。
第2回の闇鍋会はなんとか食べ切り、最終ラウンドへと向かうのだった。