オセロ大戦④
「じゃあこれが最後の試合だね。冬馬くんと杏果ちゃんの試合なんだけど・・・大丈夫かな?」
そこには心を折られた両者が座っていた。
「今の杏果さんになら勝てそうな気がしますよ」
精神的ダメージは杏果さんの方が上。そして杏果さんは感覚で戦う人ならば勝てる可能性はまだある!
「ここで勝って・・・せめて2位には・・・」
「じゃあ試合開始~」
満身創痍の2人の戦いは10分以上かかった。
序盤はお互いほぼおんなじ枚数であったものの中盤、終盤になるにつれ杏果さん(黒)が徐々に押され始めていった。
「うぅぅ・・・」
美月ちゃんと戦ったショックがよほど効いているのか、盤面に白が多くなるにつれ杏果さんの攻めが大雑把になっていっていた。
落ち着いてやれば今の杏果さんに勝つ事は容易だった。
こうして試合は無事に(?)幕を下ろした。
「はい、じゃあ結果発表だね」
オセロってこんなに疲れるもんだっけ?普通に運動した時より体力使った気がする。杏果さんと部長は完全にダメになっちゃってるし・・・。
「一位は美月ちゃん、おめでとう~」
「あ、ありがとうございます。でもなんか申し訳ないような・・・」
「あ~・・・大丈夫だよ。それより、はい、好きなの選んでいいよ~」
「ええっと・・・じゃあ・・・」
美月ちゃんがちらっとこちらを見たあと、これでっとムースを指さした。
「じゃあ次は2位の冬馬くんだね、どれがいい?」
「じ、じゃあモンブランで!」
「はい、どうぞ~。じゃあ最後はっと・・・杏果ちゃーん、お目当ての苺のタルトだよ~」
「イチゴタルト!」
その単語一つで杏果さんは復活した。
水を得た魚ってこんな感じなんだろうな・・・。
何はともあれ、各々が目当てのものにたどり着けたみたいで良かった。
優斗先輩が入れてくれた紅茶とモンブランを手に席につこうとしたとき美月ちゃんが耳元にこっそり近づいてきた。
「シロくんが狙ってたのってモンブランで良かったですか?」
わざわざ聞きに来てくれた。女神さまかな?
「うん、ありがとう美月ちゃん」
「それは良かったです」
にっこりと微笑んで女神さまは去っていった。
いつ気が付いてたんだろう・・・そんなに欲しそうな顔してたのかな・・・
もしそうだったら・・・っと少しはずかしくなりながらご褒美を口にした。