オセロ大戦③
「じゃあ次は杏果ちゃんと美月ちゃんの試合だね」
(杏果さん杏果さん、美月ちゃんに勝てそうですか?)
杏果さんに小声で自信の有無を聞いてみた。
(あの琢磨が瞬殺されたんだ、正直自信はない・・・でも流石にあんな負け方だけはしたくない)
そう小声で言うと杏果さんは机に座り準備を済ませる。
「さぁみーちゃん!私は琢磨のようにはいかないからな!」
「よろしくお願いします!杏ちゃん先輩!」
「じゃあ試合開始~」
杏果さん(黒)対美月ちゃん(白)の試合が始まった。
初手の杏果さんから順に石を置いていく。美月ちゃんも部長戦とは違い、少し考えながら石を置いているみたいだった。
「優斗先輩、杏果さんてやっぱり強いんですか?」
「ん~・・・その日次第・・・て感じかな」
「と、言いますと?」
「杏果ちゃんは琢磨くんみたいに頭を使ってプレイするタイプじゃないんだ。どっちかって言うと感覚、第六感っていうのかな、そんなので何でもやっちゃうんだよ。だから琢磨くんに勝つ時もあれば負ける時もあるって感じなんだ」
「なるほど・・・ちなみに今日の杏果さんってどんな感じなんですか?」
「そうだね・・・さっきの琢磨くんとの試合を見る限りかなり調子はいいと思うよ。琢磨くんにも大差で勝ててたし、それに何より今回はご褒美がかかってるからね、杏果ちゃんが本気にならないはずないと思うよ」
優斗先輩が言うように杏果さんは本気みたいで、ただひたすら盤面を見て石を置いている。どうやらかなり集中しているみたいでこちらの声は聞こえてないみたいだ。
~数分後~
お互い残りの石はひとつのみで杏果さんの手番なんだけど・・・
もうこれどう頑張っても杏果さんの負けは確実の盤面だった。それにこの盤面って・・・
「これはまた見事に真っ白になったね・・・」
結果はまた美月ちゃんのストレート勝ちだった。
「か、勝てました~」
ふーっと一つ息を吐いて美月ちゃんは脱力した。
「おめでとう美月ちゃん。今回も狙ったのかい?」
「ありがとうございます優斗先輩。あの・・・狙ったって?」
「いや、盤面が自分の色だけにしてるから琢磨くんの時同様に狙ってやったのかなって・・・違うのかい?」
「え、このゲームっていかに早く盤面を自分の石だけにするゲームじゃないんですか?勝敗が決まらない時は石の多さで競うのはわかったんですけど・・・」
その場にいた全員が凍りついた。
どうやら美月ちゃんは勘違いとは言え、完封することが前提で今まで戦っていたらしい。
「あ〜・・・杏果ちゃん・・・大丈夫かい?」
「うわぁ~シロ~仇取ってよ~!」
「無、無理ですよ!」
先輩二人の心を見事に砕いた美月ちゃんに勝てる自信がまるでない。
「でも次の試合は冬馬くんと美月ちゃんなんだよね・・・なんていうか・・・頑張って」
優斗先輩が目を合わさずに応援してくれた。結果が見えてるからなんだろうか・・・
「あの・・・美月ちゃん・・・手加減してくれたら嬉しいんだけど・・・」
「やり方がわかんないですけど・・・とりあえず頑張りますね!」
「じゃあ試合開始~」
開始の合図とともに冬馬は自分の石(黒)を置く。
大丈夫、自己流必勝法で粘って完封だけにはならないように立ち回っていれば・・・!
そんな意気込みで戦った数分後、盤面は綺麗に真っ白になっていた。