冬馬の休日
ある日の日曜日。
今日は部活はお休みの日で僕は自室のベッドで横になっていた。
なんだかんだでこうして休みを満喫できるのは久しぶりだったりするため今日は一日ベッドでグダグダしていようと冬馬は心に決めていた。
読みためていた小説もあることだし、たまにはこうしてゆっくり出来る日を楽しもうと小説片手にゴロゴロしていた。
そんな時。
[ピーンポーン]
チャイムが鳴る。
郵便なんて来る予定あったっけ?そんな覚えはないんだけど・・・だとしたらたちの悪い勧誘か訪問販売だろうか・・・
僕はチャイムを無視することにした。
[ピーンポーン]
また鳴らされる。
[ピンポピーンポーン]
しつこく鳴らされる。
[ピンポンピンポンピンポン]
あーもううるさい!
誰だ全く・・・
しつこいチャイムに観念した僕はむくりと状態を起こし、玄関までゆっくりと向かった。
「はいはーい、今開けますよー」
扉を開けるとそこには冬馬のお腹あたりまでの身長の小柄な女の子が立っていた。
「ちょっとお兄ちゃん!いるならすぐ出てきてよ!」
妹の夏菜だ。
「なんだ夏菜か・・・てっきり勧誘かなんかだと思ってたよ」
「せめて玄関まで来て確かめてよね。可愛い妹がわざわざ来てあげたんだから」
自分で可愛いとか言うことか・・・確かに可愛いけど・・・
「とりあえず中に入れて。外ちょっと寒いんだから」
「はいはい。どうぞー」
「で、今日は何のよう?」
「お母さんが一人暮らしでしっかり食べてるのかって、これ持って行ってって言われたの」
そう言って夏菜はなにか入ったタッパーを手渡してきた。
「なにこれ?」
「肉じゃが、昨日の晩御飯の残り物」
「肉じゃがか。まぁ、ありがとう」
「あとお兄ちゃんがちゃんと部屋をきれいにしてるか見に来たの」
「余計なことを」
「なによ。何か問題でもあるの?」
「別にないけどさ・・・なにか飲む?」
「温かいのがいい」
「じゃあココア入れるから座って待ってて」
「ふーん、部屋はちゃんと綺麗にしてるみたいね。感心感心」
小学生のくせに何様のつもりなのか。
全く・・・せっかくグダグダしようと思ってたのにと僕はしぶしぶココアを入れた。
「はい、ココア」
「んーありがとー」
「で、もう一度聞くけど、今日は何のようなの?」
「お母さんからのお使い」
「じゃあもう目的は終わったわけだ」
僕は遠まわしに帰ることを促す。
「でも帰らないけどね」
「なんでだよ」
「なによ。帰ってほしいの?」
ぷぅっと頬を膨らます夏菜。
「遠路はるばる会いに来た可愛い妹を追い出してまで今日なにか大切な用事でもあるの?」
「遠路って・・・自転車でも15分位の距離じゃないか」
「歩いてきたから遠路なの!」
また無茶苦茶な・・・
「まぁ、特に用事ってことはないけどさ・・・」
「じゃあいいじゃない。それとも・・・いない方がいいの?」
夏菜の目がうるうるしている。
僕は観念してため息をひとつついた。
「わかったよ。いていいよ。別に出かける用事もなかったし」
そう言うと、夏菜の顔が一気にパッと明るくなった。
「じゃあじゃあ久しぶりにゲームしよ!お兄ちゃんいっぱい持ってるでしょ!」
多分これが本当の目的だったんだろうな。来年から中学生になるとは言ってもまだまだ甘えてきてくれるのは兄として少し嬉しいことなんだろう。
「お兄ちゃん早く準備してよ~」
こうしてこき使われるのもなんだかんだで喜ばしいことなんだろう・・・。
こうして僕の休日は、グダグダゴロゴロから可愛い妹とのゲーム大会へと変わったのだった。
〜万屋部メモ〜
・川神夏菜
〜プロフィール〜
・冬馬の妹。小学6年生
・しっかりもの。ただ冬馬の前ではちょっとわがまま。
・冬馬の事は言わないが大好き。