大掃除
「この靴、古くなってるからもう捨ててもいいですか?」
「あー…そうだな。それは捨てていいだろ」
「ねーねーこの書類の束捨てていい?」
「それは裏紙として使えるからまとめてこの棚に入れとくか」
いつもの放課後いつもの部室。
そんないつもの部室で今日は年末に向けてみんなで大掃除をしていた。
「えー…そう言ってゴミが増えるんじゃん。捨てようぜー」
「そうやって資源を無駄にするのはよくないんだよ。あと紙代も部費出てるんだ。ちょっとでも節約のために置いとかないとだな」
「わーったよ。じゃあこれは保留でっと…」
「あのー…このボロボロのバトミントンのラケットはどうしましょうか?」
美月ちゃんが棚の奥の方からガットの切れたラケットを見つけてきた。
「あー!それそんなところにあったんだ」
「おい杏果、お前前のやつどっかいったって言ってたのちゃんと探してなかっただろ」
「いやー…探したけどそんときは見つからなかったんだよ…」
バツが悪そうに杏果さんがどもりながら言う。
「でもこのラケット網のところが切れちゃってますよ?」
「それくらいなら杏果が直せるから直して置いとくか。おい杏果、ちゃんと直しとけよ」
「じゃあじゃあ直ったらこのラケットいただいてもいいですか?」
「どうする杏果」
「私は今持ってるしおふるでよければみーちゃんにあげるよ」
「ほんとですか!?」
「よかったね美月ちゃん」
「はい!」
美月ちゃんにとっては少し早いお年玉ってところだろうか。すごく嬉しそうにしている。もし美月ちゃんが犬ならすごい尻尾振ってる感じなんだろうな。
そんな微笑ましい光景を見ながら冬馬また仕分け作業に戻った。
〜1時間後〜
「とりあえずここは片付いたかな」
「だな。結構いらないものも捨てれてすっきりしたし掃除もしたし、こんなもんでいいだろ」
「疲れたー。なーなー休憩しようぜー」
「そうだね。ちょっと休憩しよっか。すぐお茶を入れるよ」
「だな。冬馬くん、美月ちゃんも休暇しよう」
『はーい』
「今日は甘めのロイヤルミルクティーにしようか」
「やった!なー優斗ーお菓子もつけて欲しいんだけど」
「今日はスコーンだよ。この間クランベリーのジャムを作ったのを持ってきてるからそれをつけて食べてみてほしいな」
机の上にスコーンとミルクティーが並べられる。
「なんだかアリスのお茶会みたいですね」
「美月ちゃんはロマンチストだね」
「いっただっきまーす」
「お前は美月ちゃんを少し見習え」
「私は花より団子なんだよ」
「自分で言わないでくださいよ…」
「まぁまぁ、みんなこれを食べて後半も頑張ろうね」
「後半は隣の部屋だからな。あっちは大変だぞ」
「いっぱい食べて英気を養っておくれ」
「頑張ります!」
「まふぁふぇお!」
「杏果ちゃん食べながらしゃべらない」
他愛もない会話をしながらふと今年の終わりを感じる。来年もこの人たちと楽しく過ごせるのかなとふと考えてしまう。
ジャムをつけたスコーンはすこし甘酸っく感じた。
「冬馬くんどうかしましたか?」
「ううん、なんでもないよ。しっかり食べて残りも頑張ろうね」
「はい!頑張りましょう!」
にっこり笑ってくれた美月ちゃんを見て微笑み返した。
いい来年を迎えるために残りも頑張ろうと心に決めたのだった。




