球技大会②
午前中の試合が終わりお昼休憩にはいった。
冬馬が部室に弁当を持っていくと部長と優斗先輩がすでに座っていた。
「お疲れ様です部長、優斗先輩」
「おう、お疲れ!」
「お疲れ様冬馬くん」
2人ともお弁当を食べながら返事をしてくれた。
「部長と優斗先輩は午後からも試合ですか?」
「そうだな。午前中は全勝だ」
「僕もなんとか勝ち残ったよ」
「僕らのチームは1試合目で負けちゃいましたよ」
椅子につきお弁当を広げながら戦況の報告をした。
「と言うか杏果さんらしき人が出てたんですけど…あれってどう言うことですか?」
「んぁ?」
部長の間の抜けた声が聞こえる。
「その人は自分のこと杏夜だと名乗ってたんですけど杏果さんですよね?」
杏果さんと部長は同じクラスのはず。絶対何か知ってるはずだ。
「もしかして今年もあれ…やってるのかい?」
あれとは?
「まぁ…満場一致でやることになったわけなんだがな」
「あの…あれってなんですか?」
「この前杏果ちゃんが全部の種目にでるっていってたでしょ?」
「言ってましたね」
「それが文字通り全部に出てるんだよ」
「はい?」
優斗先輩が何を言ってるのかわからない。
文字通りって事はもしかして…
「だから"男女”どっちもの競技に出てるって事だ」
「それは反則でしょ…」
「まあ条件があるから反則ではないんだよねこれ」
「条件?」
「そう。あいつが本出場してるのは女子テニスとバトミントンの2種目だけなんだ」
「じゃあ残りのは…」
「補欠扱いだよ」
補欠の選手があんなに強いなんて聞いたことがない。
「だからあいつが試合に出れるのなんて1試合せいぜい10分くらいが限度なんだよ」
「おまけにほとんど休みなしで試合だからね。まぁ杏果ちゃんにとってはちょうどいいんじゃないかな」
確かにバスケの試合も10分で変わってたしすぐに女子バスケの方にもいってたな。
「にしてもずるいような…」
「でも杏果ちゃんにしたら10分で試合を決めないといけないからきついと思うよ」
「あいつテニスとバトミントン約5分で終わらして休憩してるけどな」
10分の制約なんて無いようなもんじゃないか。
「そう言えば美月ちゃんもまだ残ってるんだっけ?」
「結構ギリギリみたいだけど勝ち進んでるみたいだね」
「美月ちゃん運動苦手な気がしてたんですけどすごいですね」
「うまく相手を揺さぶったりして戦ってるみたいだったよ」
「でも次は流石に勝てないんじゃないか?」
「次の試合誰なんですか?」
「杏果ちゃんみたいだね」
「あ〜…確かにそれは杏果さんが大差で勝ちそうですね」
「いや…もしかしたらもしかするかもしれないよ」
優斗先輩がニヤリとしながらそう呟いた。
「どう言うことですか?」
「美月ちゃんも伊達に万屋部の人間じゃないってことさ」
そう言うとお弁当を鞄にしまい始めた。
「さて、午後の試合も頑張ろうか」
「そうだな。そろそろ行くか」
「僕は応援ですけど2人とも頑張ってくださいね」
「うん、頑張るよ」
「まぁサクッと優勝してくるさ」
「そう簡単にいかないように応援頑張りますよ」
こうして午後のひとときは過ぎていった。