バスケ勝負②
また2年生にポイントを取られた。
冬馬達が攻めきれてないわけではない。ポイントもしっかり取れている。しかしそれでも点差は広がっていっていた。
と言うか杏夜さんが強すぎる。
ボールを奪われるのも点を決められるのもほとんどあの人がやってる。
もちろん他の先輩達が決して弱いわけじゃないが杏夜さんはその中でも群を抜いて上手すぎる。
「あの〜…杏…夜さん?手加減してもらってもいいですか?」
杏夜さんのマークにつきながら懇願してみる。
「それは出来ない相談だな。私…じゃなくて俺にはあんまり時間がないんだ。」
もうこれ杏果さんでいいだろ。なんかもうボロ出まくってるし…
そんなことを考えていると杏夜さんが抜きにかかってくる。
させまいと杏夜さんが抜いてくる方向に全力でマークにつく。
しかしそこに杏夜さんの姿はなかった。
フェイント!?しまった!
振り向くと杏夜さんはすでにシュートの構えに入っている。
杏夜さんここコートの真ん中ですよね?まさか入れるつもりじゃ…
そんなこといくらなんでもできるはずがない。そう思ってはいるものの嫌な予感がする。
冬馬は体勢を崩しながらもその背丈を活かしてブロックにはいる。
「お前ならブロックに入ると思ってたぜ。だけど遅い!」
冬馬がブロックにはいる一瞬早く杏夜さんはシュートを放つ。
そのシュートは綺麗な放物線を描いてゴールに向かっていった。
入るはずがない。そもそも距離が遠すぎる。誰もがそう思ったボールは枠にすら当たらずネットを揺らした。
えぇ…。あの距離から入れられるのかよ。そんな声が聞こえてきそうだった。
入れた本人は当然かのように自分のコートに戻っていた。
あなたはどんな化け物なんですか…。そう心の中で思う冬馬だった。
「あの人は俺たち3人チームで抑えるから冬馬は向こう頼む」
迅が近づいてきたそう告げた。
「でもあの人は…」
「大丈夫。俺たちだってバスケ部だ。これ以上の点差はやらないようにするさ」
「任せとけ」
「任しといてよ」
「わかった。じゃあ任せる」
「一応俺もいるからな」
ひょこっとたけるが顔を覗かせる。
「よし、いくか」
「まずポイント返そう」
迅がドリブルをさながら鼓舞してくれる。
よし、やってやる!杏夜さんは…あれ?さっきまで向こうの方にいたのにいない?
まさかと思いすぐさま自身のコートに戻る
ゴール下からコートを見ると凄い勢いでこちらに向かってくる杏果さんが見えた。
迅、光、輝の3人が全力を出して追いかけているがなかなか追いつかない。
たけるが杏夜さんの前に出るもすぐに抜かれてゴール下近くまで侵入を許してしまう。
「させません!」
全力でマークにつく。ゴールには絶対に近づかせない。スリーも打たれても今度は止めれる。
そう思っていた。
杏夜さんはゴールの裏手に回った。
流石にそこからじゃ入らないしファールでこっちボールのはず…まさか入れるつもりじゃ…
杏夜さんは仰向けに飛びそのままゴール裏からシュートを放った。
そのボールはゴール裏のポールを綺麗に避けそのままあろうことかゴールネットを揺らした。
そのシュートはこちら側の心を折るのに十分なシュートだった。
そこからはどんどん点差が開いていき、16対46になったところで10分たった。
杏夜さんのせいもあるが全員の疲労がすごい。
たけると佐久間が入れ替わるが正直僕も変わりたい…
向こうも交代が済んだみたいだ。
…あれ?杏夜さんがいない?杏夜さんが交代したのか?
あたりを見渡すと杏夜さんらしき人が凄い勢いで体育館の出口に向かっていった。と思ったら出口の方から杏果さんが出てきて隣コートの女子バスケの方に交代してでていた。
やっぱりあの人化け物だ。
冬馬の試合はその点差を埋められず35対52で負けたのだった。