オセロ大戦②
冬馬対部長のオセロ勝負が始まり数十分後。
「か・・・勝てた~」
冬馬は椅子からずりずりと体勢を崩した。
結果は白(冬馬)36黒(部長)28で冬馬の勝利だった。
「途中まで勝ててたんだがな・・・最後の一手で持っていかれたか・・・」
自己流ながらも必勝法を使ってこのギリギリの勝利・・・というかレベル高くない?この部長に大差で勝った杏果さんに勝てる気がしないんだけど・・・。
「じゃあ次は美月ちゃんと琢磨くんの勝負だね」
ホワイトボードに結果を書き終えた優斗先輩が次の対戦カードを発表する。
「や、やった事ないですけど・・・頑張ります!」
「美月ちゃん初めてなの?」
「はい!でもシロくんと部長さんの勝負を見て大体のルールは理解したので!」
「琢磨~手加減してやんなさいよ~」
「残念だけど初心者だろうと容赦はできんよ。俺も久しぶりに優斗のケーキを食べたいからな」
部長は美月ちゃんあ相手でも手を抜かないつもりみたいだ。流石にルールを理解してても美月ちゃんが勝つのは難しいんじゃないのかな・・・
「じゃあ試合開始~」
しかし、試合は予想だにしない結果になった。
試合が始まると初めの一手を美月ちゃん(黒)が置いたあと、部長(白)が置いたのとほぼ同時に美月ちゃんが次の石を置いていた。まるで部長がそこに置くことを予知してるみたいに。
そんな感じで試合が進んでいったと思ったら、いつの間にか盤面は黒の石だけになっていた。
「これはこれは・・・」
「えっぐいわね・・・」
「ねぇ美月ちゃん・・・本当にオセロするのって初めて?」
「はい、初めてですよ?」
キョトンとした顔で振り向いてくる美月ちゃん。
「部長が置いたのとほぼ同時に置いてたけあれは・・・どういうこと?」
「あれはシロくんと部長さんの試合を見て参考にしたから出来たんですよ。次部長さんならこう置くのかな~って。それで最終的にこの形に持っていくためにはどんな置き方をすれば良いか考えて置いてたんですよ~」
えへへと照れながら微笑んでいる美月ちゃん。
どうやら試合が始まる前から勝負は決まっていたみたいだ。
って言うか美月ちゃんこれで初めてなの?もはや化物でしょこれ・・・
チラッと杏果さんの顔を見る。
そこには口元をひくつかせながら苦笑を浮かべている杏果さんがいた。
「部長・・・あの・・・大丈夫ですか?」
椅子に座って放心状態の部長に恐る恐る聞いてみる。
「あぁ・・・冬馬君か・・・置いたそばからすぐに置かれてね・・・気がついたら試合が終わっていたんだよ・・・。何を言ってるかわからないだろ?俺もね何をされたか今でもわからないんだ・・・なんか生きたまま捌かれる魚にでもなった気分さ」
ふふふっと虚ろな表情で部長は笑っていた。
見事に心が折れて・・・いや、砕け散っていた。
冬馬にできることはそんな部長に対して合掌してあげることくらいだった。