バスケ勝負①
球技大会当日。
各々の球技が開始され冬馬のチームも開始の時間を待っていた。
冬馬のバスケチーム、チーム1年4組の試合開始時間はあと30分後に迫っていた。
「頼むぜ万屋部」
「ん〜…できるだけ頑張るよ」
苦笑いを浮かべながら答える冬馬。
一回戦の相手は2年5組。いきなり先輩との試合だ。
しかもこのクラス杏果さんと部長のクラスなんだよなぁ…
相手チームの方に目をやると何度か見たことのある先輩達がいる。
数えた限り5人チームなのかな?
「冬馬きてくれ〜」
少し離れたところからチームメイトの声がする。
呼ばれて行くとチームメイト全員集まっての作戦会議が始まった。
「初めは俺と光と輝、冬馬とたけるの5人で行く。1試合20分だから10分になったら佐久間がたけると交代して出てくれ」
こちらのチーム構成は光と輝、リーダーの迅はバスケ部部員で残りのたけるくんと佐久間くんはバレー部部員。高さもあり経験者が多いから決して弱くはないはずのチームだ。
「迅、相手のチームどうみる?」
佐久間くんが相手チームについてリーダーに問いかける。
「見た感じ交代相手がいない5人チームなのか、バスケ部の中岡先輩と太田先輩以外は見ない顔の先輩だな」
「どういう作戦で行く?」
「そうだな…主力は冬馬に任せようと思ってる」
「僕!?」
いきなりのリーダーからの宣告に驚きを隠せない」
「大丈夫だ。先輩達は俺と光と輝の3人で抑えるからさ、たけると交代した後の佐久間、冬馬は攻めまくってくれ」
守りはバスケ部、攻めは他の人って感じか。
「お前は身長高いしバスケ部のヘルプにも何回かきてるから期待してるぜ」
「が、頑張るよ」
「冬馬はダンクもできるからいけるって」
「先輩達に見せつけてやれ!」
「万屋部としての力見せてやれ」
ここまで期待されるとプレッシャーになるけど負ける気はないからちょっと燃えてくる。
「もちろん俺たちも攻めれる時には攻めるから安心してくれ」
「俺(僕)も攻めるぜ(よ)」
流石双子、息ぴったりだ。
「お前達2人は守りの要でもあるから頑張れよ」
『任せとけ!』
こうしてチームの方針は決まった。
気になるのは相手チームだが…
ちらっと相手チームを見る。
するとちょうど体育館の入り口から1人誰かが走ってきた。
見たところ小柄で髪の毛をまとめてるみたいだけど…顔は帽子を深く被ってるせいかよく見えない。
ただどこかで見たことのある様な感じがする。
「なんだよ、向こうのチームも6人だったか」
「まぁそうだろうとは思ってたけどな」
『でも俺(僕)達の敵じゃないよ』
「前半で大差つけてやろうぜ」
みんなやる気に満ちている。
ただ1人冬馬を除いては。
「どうした冬馬?」
「なんかあの人見たことある様な…」
「でもあんな人バスケ部で見たことないぞ」
「だったら気にしなくても大丈夫じゃね?」
「ん〜…だといいんだけど…」
[それではバスケットボールの試合1年4組対2年5組の試合を始めます]
アナウンスが鳴りそれぞれのチームがカートに入る。
お互い挨拶と握手を交わす。
冬馬の前にいたのは先ほど来た小柄な生徒だった。
握手を交わすがやっぱり見たことがある。
もしかして…
「杏果さん?」
男子チームにいるはずのない人の名前を呼んでみる。
「だ、誰だそれは、わ…俺は杏夜だぜ」
うわぁ…バレバレだ…
「なにしてんですか…これ男子の試合ですよ」
「俺は男子だぜ」
そういう時からりと向きを変えポジションについていった。
なにやってんだかあの人。許されるんだろうか。わざわざ男子のふりまでしてくるなんて。
って言うか杏果さんが来てる…あれ?これってまずくない?
急いでチームメイトに知らせに行きたかったが試合開始のホイッスルがなってしまう。
ボールジャンプ要員だった冬馬は向かわなければならなかった。
そしてなにも伝えられないまま試合は始まってしまった。
1年チームのボールでスタート試合はスタートした。
「冬馬パスだ!」
冬馬は持っていたボールをたけるにパスする。
「よっしゃ決めてやるぜ!」
たけるがドリブルをしようとした瞬間、小柄な謎の人物、杏夜(杏果さんだろう)にボールを取られた。
そこからは早かった。
バスケ部3人をごぼう抜きしたあと綺麗にポイントを奪っていった。
「おい、なんだよあのちびっこいの」
「早すぎる」
『バスケ部にあんな人いなかったのに』
杏夜くんは悠々と自分のコートに戻っていってる。
やっぱりあの人は杏果さんで間違いない。
だとするならば…
「みんな、あの人は僕が止めるよ」
冬馬対杏果(杏夜)のバスケ勝負が始まるのだった。
〜万屋部メモ〜
〜中之宮迅〜
・バスケ部所属の1年生
・バスケを始めて5年、そこそこ上手い
・1年生の中ではリーダー的存在
〜小田島光、輝〜
・双子兄弟
・どちらもバスケを始めたのは同時期
・コンビプレーが上手で相手を翻弄させるのが得意
・見た目も似ているので光が輝に、輝が光になったりして遊んだらもしている。周りは変わったことに気付かないこともある。