球技大会①
「なぁシロ〜、お前って球技大会何出るんだ?」
漫画のページをめくりながら杏果さんは訪ねてきた。
それは今週金曜日におこなれる球技大会の事だった。
「僕ですか?」
「ん〜」
気のない返事をしながらまた一枚ページをめくる杏果さん。
「僕はバスケに出ますよ」
「ふーん」
杏果さんは興味なさげにページをめくる。
聞いてきておいてなんなんだろうかこの人は。
ちなみに今回の球技大会種目が4種目あり、バスケ、テニス、野球、バトミントンの中から出場種目を決めなければ行けなかった。
「ちなみに私はバトミントンなんですよ。あんまり自信ないんですけど」
「へー…」
美月ちゃんの事でもやっぱり興味なさげだ。
「優斗先輩、杏果さんどうしちゃったんですか?」
「なにがだい?」
「杏果さんがなんか冷たいっていうかさっぱりしてるっていうか…なんかいつもと違うんですよ」
「ありゃ精神統一してるんだよ」
部長が近寄ってきてこっそりと言ってきた。
「精神統一…ですか?」
美月ちゃんが首を傾げる。
「美月ちゃんと冬馬くんは同じクラスだったよな?」
「そうですけど…」
「俺と杏果は同じクラスなんだが優斗が違うクラスなんだ」
「そうなんですか?」
「あれ?知らなかったかな?」
今初めて知った。
「で、だ、前回は俺たち3人同じクラスだったからほとんど余裕で俺たちのクラスが勝てたんだが今回は優斗が敵でしかも冬馬くんも敵だからな。あいつも本気でやるつもりなんだろうよ」
「なるほど…それで」
ちらっと杏果さんの方を見ると何も言わずに漫画のページをめくっていた。落ち着くためにやってるだけなんだろうな。
「…そういえば杏果さんって何にでるんですか?」
「ん?全部だ」
聞き間違えたかな?
「すみません。全部って聞こえたんですけど聞き間違いですよね?」
「聞き間違いじゃないぞ。あいつはバスケとバトミントン、テニス、野球に出るんだ」
なにそれ、ありなの?てかできるの?
「それってありなんですか?」
「ルール的にはなんら抵触してないからセーフだよ」
「去年もやったからな」
「できるもんなんですか?」
「あいつを誰だと思ってるんだよ」
確かに…杏果さんならやりかねない。
「杏ちゃん先輩ってやっぱりすごい人なんですね」
「こと運動においては最強だろうな」
「でも今年は勝つよ」
「僕のクラスも負ける気はありません!ねぇ美月ちゃん」
「はい!頑張りましょうシロくん!」
もうすぐ開催される球技大会。そこの王者と言っても過言ではない杏果さんに挑み勝って見せると強い意気込みを抱く。
しかし、ふと疑問もよぎった。
「あれ?球技大会って男女別だった様な…」
その疑問は優斗先輩が入れてくれた紅茶の香りと共にどこかへ消えて行った。