文化祭!②
「杏果さん落ち着いてください!」
「杏果ちゃんダメだよ!」
「杏ちゃん先輩落ち着いてください~!」
「殺してやる!お前だけは今ここで始末してやる~!!」
すごい力だ。3人がかりでギリギリ押さえ込めている。
休憩に入って人がはけた瞬間、ふりふりの服のまま杏果さんは部長に襲いかかった。その速さは通常の倍くらい早く感じた。動きにくい服装のはずなのに・・・
そんな倍速の杏果さんは部長に一撃喰らわせたあと、僕たち3人に取り押さえられていた。
「いま部長がいなくなったらさすがに午後からが回らなくなりますよ!お願いですから落ち着いてください!」
「琢磨くん!キッチンのところにお菓子があるからそれを持ってきて杏果ちゃんの口の中に早く入れてくれ!」
「わ、わかった」
部長がキッチンブースから小さなお菓子みたいなものを持ってきて杏果さんの口の中にそれを入れた。
「むぐっ!・・・もむもむ」
杏果さんの動きが止まったので恐る恐る拘束を緩めていく。
「杏ちゃん先輩・・・落ち着きましたか?」
「・・・美味しい・・・」
「よかった、落ち着いてくれたんですね」
「それにしても、よくお菓子なんてありましたね」
「合間合間に作っておいてよかったよ」
あの忙しい合間にお菓子を作っていたのか・・・さすがは優斗先輩。
「杏果ちゃん、とりあえず休憩だからゆっくり見て回ろっか」
コクっと杏果さんが頷き、そのまま優斗先輩と一緒に文化祭の人ごみの中に消えていった。
「僕たちもせっかくですし行きますか」
「そうだな」
「私、文化祭なんて初めてだからすっごい楽しみです!」
杏果さんと優斗先輩を見送ったあと、部室の入口に[ただいま休憩中]の札をかけて部室を後にした。
「部長・・・さすがに今回のはまずいんじゃないんですか?」
移動中、部長にため息混じりで僕は言った。
「杏果のことか?」
「あれじゃあ僕らの身が持たないですよ?」
「しかしあれ以外に部費大量獲得の術が思い浮かばんかったんだ。それに俺の身ひとつで部費を大量に獲得できるんなら俺はこの身を捧げるぜ」
「なんかかっこいい風に言ってるけどそれ僕たちにもとばっちりなんですけど・・・」
ただ一応はどうなるのか分かってやってるんですね・・・
「それにしても杏ちゃん先輩、やっぱりすっごく可愛いですよね~」
「確かに、前の撮影会の時もそうだけど可愛かったよね。目が死んでたせいで人形感がさらに増してたから」
後半の杏果さんは目に光が灯ってなかったしほとんど脱力状態だった。そのおかげで等身大の人形みたいになっていた。
「でも私フリフリの服もいいんですけど、燕尾服みたいなのも絶対似合うと思うんですよ!」
美月ちゃんがらんらんとした目で語りかけてくる。もう杏果さんの扱いが完全に着せ替え人形のそれなんだよな・・・
でも確かに見てみたい。あの人身長小さいけど何着ても似合いそうだしな~。
そんな会話をしていると、校内放送で催し物の放送が聞こえてきた。
[ただ今よりステージにて大食い大会を始めたいと思います!飛び入り参加大歓迎!1位の方にはなんと豪華賞品をプレゼント!こぞって参加よろしくお願いします!]
「お、ちょうど今からなら参加してみるか?大食い大会なら昼代も浮くだろうし」
「私、興味あります!」
「美月ちゃん本気で言ってる?」
「本気も本気です!せっかくですし、それに楽しそうですし♪」
まぁ美月ちゃんも参加するなら僕も参加しないとだよな~・・・
「じゃあ3人で参加だな!」
「ちなみに何食べるかとか分かってるんですか?」
「パンフに書かれてるんじゃないか?えっと・・・げ、シュークリームかよ。これ俺無理なやつだな」
「え、じゃあ・・・」
「私とシロくんの2人ですね!頑張りましょうか!」
うそん!?
「頑張って1位取ってこいよ~」
こうして僕は美月ちゃんに連れられほぼ強制的にステージに上げられたのだった。