文化祭!
「ただいま30分待ちになりまーす。しばらくお待ちくださーい」
万屋部部室の入口にかなりの行列ができていた。こんな光景今まで見たことなかった。
そんな部室の中も人がいっぱいになっていて、撮影ブースにも行列がかなりできていた。
「ご注文ですか?しょ、少々お待ちください!えーっとえーっと・・・」
「美月ちゃん落ち着いて、僕の方でも請け負うから」
「シロくん、ありがとうございます!」
万屋部メイド喫茶は部長の読み通り大盛況だった。
これホール2人はさすがに回らないんじゃないのか!?
「休憩まであと1時間半だから気張れよ!」
キッチンのブースから部長の声が聞こえてきた。あと1時間半これか・・・
「まさかここまで忙しくなるなんてね、杏果ちゃんの方は大丈夫そうかい?」
優斗先輩に言われ、杏果さんの方を見てみる。周りには女子と男子に囲まれておりキャーキャー言われながら写真を順番に撮られまくっている。
その顔は疲れきってるを通り越してる感じだった。
って言うかさっきから表情が一切変わってないんだけど・・・あれ生きてる?
「ダメかもしれないです」
「・・・お昼休みは杏果ちゃんにいろいろ買ってあげようか」
もう一度杏果さんの方を見てみる。
あ、目が合った。
口を少しだけ動かして何か言ってるように見える。なになに・・・?
(こ、ろ、し、て)
あー・・・これはダメですね・・・
助けられない現状に、杏果さんの方から目をそらしホールの作業に戻った。
「そう言えば、美月ちゃん!もうじきお色直しの時間だよ!」
「そうでした!ちょっと抜けますね!」
杏果さんの衣装は1時間毎にお色直しで衣装を変えていっている。そのおかげかおんなじお客さんでも何回も並んだりして一向に減らない、それどころか新規のお客さんも混じっていってどんどん増えていってるのが現状だった。
「部長!お色直し終わるまでホールの方手伝ってください!」
「さすがに回らないか・・・優斗、すまんが少しの間1人でやれるか?」
「やらなきゃいけなそうだからね、頑張るよ」
さすが優斗先輩、頼りになりすぎる。
お色直しには杏果さん次第にはなるが今までの傾向でいくと10分から最大20分くらいかかっていた。これが終わるまでは3人で回さないといけなくなる。正直早く戻ってきて欲しい・・・
でも今回は7分ほどで戻ってきた。最速だ。
「杏果さん、大丈夫ですか?」
戻ってきた杏果さん近寄り声をかけてみる。
「ブツブツブツ・・・」
「えっと・・・」
なにかブツブツ言いながら杏果さんは持ち場に戻っていった。
「あ、美月ちゃん。今回は早かったね」
「えぇっと・・・杏ちゃん先輩すごい大人しくってすぐ出来たんですけど・・・なんだかずっと部長のこと言ってて・・・」
「あー・・・ちなみにどんなこと言ってたの?」
まぁだいたい察しはつくけど・・・
「えっと、確か、右ストレート、アッパー、ボディーブロウしてからの回し蹴りとかなんとか・・・」
予想してたよりもかなりリアルな仕返しを考えてた。
終わったあと部長大丈夫だろうか・・・
「と、とりあえすあともう少し頑張ろうか」
「そ、そうですね」
狂気に染まりつつある杏果さんは少し頭の隅に置いておいて、休み時間までのあと1時間をなんとか凌ぎきることに専念することにする。
昼休みは昼休みで杏果さんが暴れないように優斗先輩と一緒に頑張らないとな・・・
仕事が終わってもこれは落ち着く暇がなさそうだ。
そんなことを無意識に考えながら残りの1時間僕は必死に動き続けた。
合間合間に優斗先輩と美月ちゃんに休憩時の相談と対策をしっかりと練りながら。