オセロ大戦①
放課後、いつものように部室にむかう冬馬。
「あ、美月ちゃん」
部室の入り口近くで後ろ姿を見かけたから声をかけてみる。
「あ、シロくん。お疲れ様です。シロくんも今からなんですね」
「うん、今日も依頼来てるかな」
扉に手をかけ、ガラガラと扉を開く。
部室の中では杏果さんと部長が机に向かって何かをやっていた。
あれって・・・ボードゲーム・・・?
「この俺が・・・この俺が・・・負ける!?」
部長がワナワナしながら呟いている。
近づいてみると、
「オセロ・・・ですか?」
盤面を見ると圧倒的に黒が劣勢だった。どうやら黒が部長らしい。
「実は今日万屋箱に依頼が入ってなくってね、それで部室を整理してたらオセロを見つけたんだ。それで、せっかくだから今日のご褒美をかけて勝負しようってことになったんだよ」
そう言いながら優斗先輩は二人分の紅茶を用意して出してくれた。
「あ、ありがとうございます」
「すみません、いただきます」
「せっかくだから二人も参加するといいよ。参加賞もあるから負けても損はしないよ~」
「ちなみに今日のご褒美ってなんでしょうか?」
美月ちゃんが聞きたいことを聞いてくれた。
「一位の人から順番にこの中から好きなものを選んでもらいます」
そう言うと優斗先輩は冷蔵庫から箱を取り出し中身を見せてくれた。
箱の中には、大きな栗が乗ったモンブラン、綺麗な苺のタルト、おそらくぶどうを使っているでろうムースの三種類が入っていた。
「最下位の人にはこれです」
そう言うと小さな袋に入ったクッキーを見せてくれた。
よく見ると、クッキーの真ん中だけ色が変わっていてキラキラしたものになっている。まるでガラス細工みたいだ。
「そのクッキーってもしかしてステンドグラスクッキーですか?とっても綺麗ですね!」
「美月ちゃんよく知ってるね。その通りだよ。ちなみに参加賞もこのステンドグラスクッキーだからみんなもらえるからね~」
にっこり微笑みながら優斗先輩はステンドグラスクッキーが入った小袋を僕たちに渡してくれた。どうやら参加決定みたいだ。
「じゃあ二人共優勝目指して頑張ってね~」
せっかく参加したんなら一位を目指したいな。
狙うはご褒美の中のモンブランだ!
「ま・・・負けた・・・」
どうやら一回戦の部長対杏果さんの試合が終わったようだ。
結果は白(杏果さん)42黒(部長)22と大差をつけて杏果さんが勝っていた。
「ご褒美がかかってるんだ、こんなところで負けるわけにはいかないのさ。私は勝って苺のタルトをいただくんだ!」
どうやら杏果さんのお目当ては苺のタルトのようだ。
「屈辱・・・この俺がよりにもよって杏果なんかに・・・」
「部長いつになく悔しそうですね」
「元々この勝負は琢磨くんが杏果ちゃんに仕掛けたものだったからね。杏果ちゃんを本気にさせるためとはいえご褒美がかかった杏果ちゃんは強かったね」
いつの間にかホワイトボードに書かれた総当たり表に優斗先輩が今回の結果を書いていた。
優斗先輩も案外乗り気みたいだ。
「じゃあ次は冬馬くんと琢磨くんの対決といこうか!」
幸い、オセロなら少しだけ腕に覚えがある。そしてこの勝負一番の敵になりうる杏果さんが狙っているものは僕とは別のもの。最悪2位になれればモンブランは確実。
椅子につき盤面の真ん中に石を置き準備をする。
「冬馬君・・・悪いが後輩に負けるわけにはいかないんでな、全力でいかせてもらうぞ!」
「すみません部長、今回の勝負僕も負けたくないんです」
「シロ~頑張れよ~」
「シロくん、部長さん、どっちも頑張ってください!」
「じゃあ二人共、勝負開始だ!」
ご褒美をかけた戦いの火蓋が今切って落とされた。