万屋部の忙しい日
ある日の放課後。この日は万屋部が最も忙しい日だった。
「買い出しの依頼終わりました~」
「こっちも1.2.3組の買い出しやってきたぞー」
「家庭科部の依頼終わりました~」
「みんなご苦労。帰ってきてすぐで申し訳ないがまた依頼が来てるぞ」
「げぇ~・・・またかよ~・・・」
「どこも文化祭の準備で人手不足だからね」
近々文化祭が行われるため、どのクラスや部活道もその文化祭に向けての準備が活発になっていた。その手伝いで万屋部には今までにないくらいの量の依頼がどんどん届いていた。
「杏果はこのあと女子運動部の方の依頼をこなしていってくれ。美月ちゃんは演劇部の舞台衣装や設備の手直しの依頼が来てるからそっちの方に。優斗は食堂の方で料理の手伝いな。俺と冬馬君は生徒会の方の手伝いに行くぞ。各々、終わり次第戻ってきて依頼があればやっていく予定で頼む」
部長が仕切り、みんなに指示を出す。
「これ終わるの~・・・」
「大丈夫だ安心しろ。生徒会長には事前相談してて今日だけ万屋部の受付は7時半までにしてもらってる。それまでに来てる依頼全部こなしたら終わりだからな」
7時半まであと1時間と40分弱。依頼件数は10件以上。なかなか厳しい・・・
「優斗~、今日のご褒美は~?」
杏果さんがぐでーっと机にへばりつきながら聞いた。
「ごめんね杏果ちゃん。さすがに今日は用意できなかったんだ」
「そんなぁ~・・・」
「その代わりと言ってはなんだが今日は終わったら焼肉だ、俺のおごりで」
「マジで!?」
机に引っ付いていた杏果さんが勢いよく復活した。
焼肉は、しかもおごりとなるとご褒美のケーキと同様かそれ以上なんだろう。
「だからみんなには頑張ってもらいたい。終わったら焼肉で打ち上げだ!」
「よっしゃ~!行ってくる!」
その言葉に杏果さんは勢いよく部室を飛び出していった。
「じゃあ僕も行ってくるよ」
「わ、私も行ってきます」
杏果さんに続くように優斗先輩と美月ちゃんが部室を後にした。
「俺たちも行くか」
「そうですね」
そうして僕たち2人も部室を後にした。
「生徒会の依頼って何するんですか?」
「ん~?各部にテントを配布したり、催し物の舞台の設置とかいろいろだな」
なんか気になるやつもあってちょっぴり楽しそうだ。
「万屋部は去年もこの時期は生徒会の依頼が増えてたからな。舞台裏なんかの依頼も来たりするしなかなかない経験ができると思うぞ」
「まぁ今年は万屋部も出し物をする予定だからあんまり当日の依頼は受けない予定なんだがな」
「そうなんですか?初耳なんですけど・・・」
「それに関しては今日の打ち上げの時に話すさ。と、着いたな」
話してる間に生徒会室に到着していた。
「入るぞ~」
「おじゃましまーす」
ガラガラっと扉を開くと中には1人の生徒が作業をしていた。
「お、来たな」
「よぅ、依頼で来たぞ。こっちはうちの戦力の冬馬君だ」
「今日はよろしく冬馬くん。生徒会で書記をしている松岡だ」
「あ、よろしくお願いします」
体格いいなこの人。
「で?まず何すればいい?」
部長がすぐさま本題に入った。
「とりあえず運動部のところにテントを持って行って欲しい。重いから2人で持っていってくれ。場所はわかるよな?」
「おう、グランドのところの倉庫だろ?」
「そう、そこだ。それが終わったら体育館の舞台装置のチェックだな。これは俺も一緒に行くからテントの方が終わったらまた声かけてくれ。俺はここにいると思うから」
「はいよー。じゃあ冬馬君行くか」
「はい」
「よろしく頼む」
生徒会室をあとにした僕たち2人はテントが置かれてある倉庫に向かった。倉庫の中に入ると少し埃っぽく、でも土の香りもしていて何とも言えない匂いに包まれていた。
部長と一緒にテントを持ち、いろんな部のところへと持っていく。どの部もいろんな準備で忙しそうにしていた。
僕にとっては初めての文化祭が、今始まろうとしていた。(まだ準備だけど・・・)
〜万屋部メモ〜
・尾上琢磨
〜プロフィール〜
・身長172センチ。ちょいぽちゃ。
・万屋部部長。
・杏果さんとは幼馴染みでよく理解している。
・部では事務が主で基本依頼にはあまりいかない。
・生徒会や教師陣、他の部活の部長などかなり顔が広く付き合いも深い。
・甘いものより辛い物の方が好き。
・何故か校長と仲が良い。校長が万屋部の顧問となっている。