学内新聞撮影会①
「杏果も戻ってきたことだしみんなに話がある」
突然部長が大きな声で告げた。
「なんだ〜話って〜」
スイートポテトをはむはむしながら杏果さんが聞いた。流石にスパーリングの疲れがあるのか少し元気がないみたいだ。
「まずはこれを見てくれ」
部長が一枚の紙を取り出した。
あれは・・・学内新聞?
「知ってるものも多いと思うが毎月、新聞部が掲載している学内新聞の端っこに万屋部のことを記載してもらってるんだ」
よく見ると[お困りごとは万屋部へ!万屋箱に依頼を書いていれてください!なんでも解決いたします!]とか書いてあって依頼書の書き方とか細かい事も書いてあった。
正直今知った。
「んで〜それがどうしたんだ〜」
「来月もありがたいことに載せてもらえることになってな。毎回文字ばかりだったが今回は写真付きのものにさせてもらえることになったんだ」
「写真付き・・・ですか?」
「そうだ。そこでモデルなんだが、今回は冬馬君と杏果の2人にやってもらう」
「僕ですか!?」
「なんで私なんだよ、そこはみーちゃんでいいじゃん!」
「美月ちゃんには衣装担当兼杏果のメイク担当を任せようと思ってるんだよ。冬馬君の方は優斗に任せようと考えている」
「へぇ〜、みーちゃん服なんか作れるんだ」
「はい!がんばります!」
美月ちゃんはやる気満々みたいだ。
「撮った写真のところに今回の衣装作成者の名前も載せるつもりだ。これで美月ちゃんの存在をアピールすると同時に文化部からの依頼を増やすのが今回の目的だ」
「いつも運動部の依頼が多くてなかなか文化部からの依頼は少ないからね」
確かに・・・文化部からの依頼はなかなかくる量は多いとは言えない。
「今週末の日曜日に撮影をしようと考えているから空けといて欲しいんだが大丈夫か?」
「僕は大丈夫ですけど・・・」
「私も行けるっちゃ行けるけどさ・・・ちなみにどんな衣装か決まってるのか?」
「勿論だ」
自信満々に部長が答える。まるで聞かれるのが分かっていたかのようだ。
「どんな衣装だ?」
「万屋部はなんでも請け負う部だからな。そういうイメージで冬馬君には執事イメージの燕尾服を、杏果にはメイド服だ」
瞬間、部長に向かって銀色の何かが飛んでいった。
「おいおい杏果危ないじゃないか」
部長の顔面めがけて飛んでいったフォークを本で上手くガードした部長。
フォークって本に刺さるんだ・・・
「あんなフリフリしたもんなんか着れるか!」
「大丈夫です!杏ちゃん先輩なら絶対似合います!」
「やだ!みーちゃんのお願いでも絶対やだ!」
「まぁまて杏果、話を最後まで聞け。今回撮影に協力してくれたものにはそれ相応の報酬を用意している。優斗」
部長が指をパチンとならし優斗先輩とチェンジした。
「今回協力してくれる人、特にモデルの2人だね。この2人にはケーキの食べ放題を用意するつもりなんだ」
「ケーキ食べ放題!?」
その単語に杏果さんが凄い勢いで食いついた。
「そ、好きなものを好きなだけ食べてもらって構わないよ。どうせなら笑顔の所を撮りたいからね。もちろん甘い物以外にも用意するつもりだよ〜」
「この日は食堂を貸し切る予定だからな」
なんかすごい用意周到な気がするんだけど・・・
「食べ放題ぃ・・・」
杏果さんがすごい葛藤している。
「メイド服以外ならいいのか?」
はぁ・・・とため息をつきながら部長が杏果さんに提案した。
「メイド服じゃなくてもいのか!」
「まぁ別にかまわんがその代わりにこちらで決めさせてもらうぞ?」
「ん〜・・・出来ればカッコいいのがいいんだけど・・・黒とか使ってシンプルなやつ」
「条件が多いな・・・まぁそういうことらしい。いけそうか美月ちゃん?」
「分かりました!」
うん?凄いあっさり決まったような・・・
「冬馬君もそれでいいか?」
「え、あ、はい。大丈夫・・・です」
「じゃあ決まりだ今週の日曜日、時間は11時に部室に集合で」
そうして決まったその日は2人の採寸をして解散となった。
なんかすっごい引っかかるな〜・・・杏果さんはもう食べ放題のことしか考えてないし・・・
気にしすぎなのかな?
少し気がかりは残ったもののなんだかんだで冬馬も日曜日が楽しみなのだった。
〜万屋部メモ〜
・雨宮美月
〜プロフィール〜
・身長162センチ
・天然でマイペース。いつもニコニコしてる。
・趣味は裁縫。いつも小さな裁縫セットを持ち歩いいている。
・頭はかなりいい。一度見たら大体のものはできる。
・ただし運動は苦手。
・万屋部に入ったきっかけはなんとなく。他とは違うような感じがしたとのこと。