万屋部の謎
とある放課後。いつもの部室。
「なぁ琢磨~、寒いから窓閉めて~」
「全く・・・それくらい自分で動いて閉めろよ・・・」
部長が大きなため息をひとつはいて窓を閉めにパソコンの席から立つ。
「最近風も冷たくなって寒くなってきたしそろそろあれを出してもいい頃合いなんじゃないかな琢磨くん」
はい、と温かい紅茶を人数分机に置き優斗先輩は何やら部長に提案した。
「あ~あれか。確かに欲しいなあれ」
「あれか。確かにもう時期だしそろそろ出してもいいな」
さっきから言ってるあれってなんのことだろう・・・部長たちはみんなわかってるみたいだけれど・・・
「あの~・・・あれって何なんでしょうか?」
どうやら美月ちゃんもおんなじこと考えてたみたいだ。
「まぁそれは持ってきてからのお楽しみ、てことで冬馬君!出すの手伝ってくれ!」
「わ、わかりました!」
部長に連れられてきたのは部室の隣の教室だった。
中には使われていない机や授業で使っていた道具であろうものなどいろんなものが置いてあった。
誰も手をつけていないんだろうか、少しだけ埃をかぶっている。
「えぇ~っと・・・確かこのあたりに・・・あったあった!冬馬君こっち来てくれ!」
「はーい」
どうやらお目当てのものが見つかったらしい。
近づいてみると、
「ストーブ・・・ですか?」
「そうだ、これからの冬に向けてはこいつの出番だからな。冬馬君そっち持ってくれ。部室に運ぼう」
「分かりましたけど・・・これって勝手に持って行って大丈夫なんですか?」
「ん~?勝手も何もここにあるやつは全部万屋部で使っていいものだけだぞ?」
「そうなんですか!?」
この部屋にあるもの全部!?
「おん。顧問も許可出してるしな」
この教室の物量はそこまで少ないわけではない。これを好きにしてもいいなんて・・・
そういえば部室に冷蔵庫とか置いてるし・・・ていうかこの部って顧問いたのか。
冬馬の中で謎は深まっていった。
「よし、ここらでいいだろう」
「きたきた!早速つけようぜ」
「あれってストーブのことだったんですね」
「まぁ待て、灯油は・・・十分だな。じゃあ、点火!」
3人がストーブでわいわいしていたが冬馬はそれよりも気になることがあった。
「優斗先輩、この部の顧問って誰なんですか?」
「あれ?知らなかったっけ?校長先生だよ」
あ~・・・どうりで結構好き勝手できるわけだ。
合点がいくと同時に謎も増えた。
「この部ってどうやってできたんですか?」
「この部は琢磨くんが作ったんだよ〜」
「5人いないと部にならないはずなのにどうやって・・・」
優斗先輩はにっこり笑いながら人差し指を口元に起き「ひ・み・つ♪」と囁いた。
あれ?部長ってもしかしてすごい人だったりする?
冬馬の中でまた一つ謎が増える。
部長の方を見るとまた変なことを言ったのだろう、杏果さんに襲われている部長の姿があった。