戦時中でも愛したい
7話 戦時中でも愛したい
「なんで2人はここにきたの?」
カミナと戦う前のアリア達だ、凄い勢いで塔に登ったハルカを見て疑問に思った。
「ハルカが能力が手に入るからだって、条件あるみたいだけど」
「まさかドサクサに紛れて奪うつもり?、そう言う能力なのかしら?」
「う、うーん、(魂の中にサミットがいることを言ったほうが良いのだろうか...)」
ハルカは塔に座り込み、遠くの戦場をマリの作った双眼鏡で見る。
そこを見ると凄い数の魂がハルカの中に入り込んできた。
(うわっ!、狭い!)
(邪魔だなこいつら、殺すか)
「我慢しろ、1週間の辛抱だ」
((ぁー、ぁー、家族にあいたぃ!))
(な、なんだか私たちと違うわね...)
(欲望だけ言ってる様な気がするぜ)
「多分既に亡霊になったんだろう、2人は目の前で死んだのをこの目で見たからな、魂の劣化ってものかな」
(それにしてもこの狭さは酷いわ、どうにかならない?)
どうやら本当に狭そうだ、こちらから自分の魂の中は見れない。
「こう、はっ!、ってしたらなりそう」
適当に脳内に高級マンションを思い浮かべる。
「はっ!、」
(おお!、マンション出来たぞ!)
「まじで!?、そんなに簡単なのか!?」
(おお!、どんどん魂が格納されていく!)
「うわ見てみたい...」
(ねぇえ?、おねがぁ〜いハルカぁ、私能力必要な時貸してあげるからぁ、私専用のスイートルームちょーだい!)
(俺様も!、貸しはしないが部屋くらい作れ!、前に逃げる時間作ってやったろ!)
「へーいへい。」
(おお!、ふかふかのベッドに人間界の8Kテレビ!)
「俺が欲しいくらいなんだけど...」
(うむ、悪くはない)
ハルカの見る先、撃った大砲が魔族の能力により跳ね返された。その爆撃で砲撃をした相手が砲弾に直撃した。
「うわ、今人が」
(ん?、入って来たぞ)
(こ、ここは!?)
迷い込んだ魂は、先ほど見た軍人の格好をしている。
爽やかな好青年で、ハルカとあまり年も変わらないだろう。
(あーあのね、実は...)
サミットが丁寧に迷い込んだ魂に説明をした。この部屋のこと、魂のこと能力のこと。
(そ、そうですか、生きてたかと思ってました...)
「で、願いは?」
(ハルカ気早すぎでしょ、童貞ね)
「どどど童貞ちゃうわ!」
(はは、良いんですよ)
兵士は健気に笑う。
(同じ軍人の彼女に会いたいです)
「そうですか、場所は?」
(ここから十キロ先のガンマ地点です)
「アリアー!、マリ!、俺はちょっとここ離れるわー!」
下にいる2人がOKのサインを出してハルカは北へ移動を始めた。
(い、良いんですか?、ここに居る意味があるんじゃ)
「戦争してるのを見れれば良いんですよ、まだ止める手立てもないですし...」
(それに、早く彼女に会いたいのはあんたもでしょ?)
(あ、ありがとうございます!)
「ハルカ行っちゃったねー、凄い剣幕で」
「何かあったんでしょ、あんたは機械いじりに没頭してなさいよ」
興味津々に機械を覗くアリアとマリは、後ろにいるカミナを注意していなかった。
ハルカへん
「ここらへん?」
(はい!、あの砲撃手がそうです!)
「あのって言われても...、いた!」
巨大な大砲に能力を使い砲撃する女性がいた。だがその砲撃も跳ね返されてしまう。
歌舞伎を使用してなんとか切り刻んだ。
「あ、ありがとうございます...」
「あなたが珠美さんですよね?」
「は、はい、何かご用が...」
(珠美...、好きだと伝えたかった...)
「えーと、あの人が好きだと言ってましたよ、あなたが好きで、砲撃手の方が。」
(ムードもあったもんじゃないわね...)
「ゆ、遺言、ですか...?」
「は、はい...」
「龍人...」
(珠美、さようなら、ありがとう、ハルカ君)
そう言うと軍人は体が崩壊し始め、ハルカの体から飛び出て霧の様に霧散していく。
「こ、これは...!龍人!、私もあなたが...」
「うん、珠美、さようなら...」
龍人は明美の頬に触れ、結晶が割れる様に消えていってしまった。
彼女が落ち着くまで、30分かかった。彼女の腫れた目を見て心が痛んだ。
「ここの近くに、負傷者用のテントがあります、その格好を見るとろくに食事していない様子ですので、案内いたします...」
「あ、はい、ありがとうございます」
操者「弾」 獲得
「これは...、体が勝手に理解している...」
(操者か、弾は外れだな)
ミヅハのその言葉にハルカが食いついた。
「何言ってんだ!、操者にハズレなんてないだろ!、どんなに遠くでも見えてさえいれば当てれる必中の能力!、最強と言わずして何という!」
(熱弁するわねぇ、もしかして能力持ってなかった感じ?)
「ああ、何でも良いから欲しかった、願ったら、叶うもんだな...」
「ここです、どうぞお気のめすまま...」
目の前のテントは、ひと回り大きく、森の中に隠れる様に建てられていた。
「あ、ありがとうございます!」
そう言ってテントに入ると、体を負傷した軍人が沢山いた。腕や脚、包帯に包まれた方もいた。まるで、地獄だった。
20人ほどだろうか、うめきながらも生きようとする姿を見て心が締め付けられた。
「戦争は、悲劇です...」
ハルカは歯を食いしばり、渡された握り飯を食べた。
「•••ッ!!はい!。」
最初に異変に気付いたのはハルカだった。
持っていた握り飯が手を滑り落ちた。
「な...」
歌舞伎使用
(おにぎりくらいで能力...)
「操者「衝撃」!」
ハルカが叫ぶとサミットは能力を共有し、負傷者全員をあるものから遠ざけた。
「何かが!、来ている!」
「あるもの」はテントに乗っかる、その触れた部分がサラサラと破壊された。
吹き飛ばされた負傷者全員はテントに乗った「あるもの」に全て破壊され、砂の様に崩れていく。
「珠美さん!」
ハルカが手を差し出す、珠美が微笑んだ。
あと一歩のところで足りず、腕のみがその場に転がった。
大量の魂がハルカの体に入り込み、怨を叫ぶ。
(殺せ、殺せ、私を殺したやつを殺せ)
死者の怨念、共有される思念が刺さる。
「頭が、割れるッ」
「負傷した者など戦力を削ぐだけの無能、お前もそう思うだろ?、無能英雄。」
金髪の人を見下す将校、これはハルカでも知っていた。
「パ、パールガープ...!」