マーズカーンは悩ましい
4話 マーズ•カーンは悩ましい
「戦争に出たいぃ?。」
研究室のリーダー、金谷が研究室を片付けながら言った。
「はい!、半河間俊和、相良カミナ、マーズ•カーン、前線兵に志願します!。」
マーズ•カーン
飾者の能力を持つ男、顔を上半分だけ出した着ぐるみの様な体型の服を着ている。
「あのなぁ、ただでさえ三笠都ハルカのせいでこの有様だ、今人手を離すわけにはいかないし、何より前線には化け物が...。」
「ザ•ミラーが前線を守っているのは知ってます、ですが一度この身で戦争とは何か!、体験しておきたいんです。」
その勢いに気圧され顔が引きつる。
「ま、まぁそう言うなら上報告しておこう、だが航空機は使うなよ」
「空はエビルが支配してるから、ですね」
「分かってるなら良いんだ、骨で帰ってきたらお前らを菜園の肥料にするからな」
「ありがとうございます!」
2人はお辞儀をしたがマーズはしない。
無理やり頭を下げさせられた。
旅の支度をして足を運んだ。
「ガマさん、なんでいきなり戦争行きたいなんて思ったんすか。」
「ん?、マースは戦争行きたがってただろ」
「僕が聞いてるのはなんであんたがって意味なんすけど」
「三笠都ハルカを捕まえるため、ですよね?」
カミナが嬉しそうに聞いてくる。
「お前は殺したいんだろ、俺は確認したいのさ、なぜそうなったのか...」
「それって、生かしたいって事ですか...?」
眉を動かした。間に触った。
「お前...、育成校であいつの何を見てきたんだ...?」
「ガマさんだって、たった1日で何がわかるんです...?」
2人が武器を構えて出方を伺う。
「落ち着いて2人とも!」
そんな言葉を尻目に戦闘を始める。
ガマは鎌で応戦して見定める様にカミナの太刀筋を確認する。
「やめだ、ハルカの下位互換じゃねぇか」
武器をしまって背を向ける。
「あぁ...?」
双剣を両手剣に持ち替え、力を溜める。
「下らね」
ガマが土の盾を作って攻撃を防いだ。
(土なのに、硬い!)
「能力に頼り過ぎて太刀筋がてんでダメ、ハルカは能力持つまで剣術一筋だろ?、お前如きが叶うわけねぇわ」
「ふん...。」
その通りの言葉を言われて反論できない。
「あのですね、まだ協会から50メートルも離れてませんよ」
2人が睨み合いながらハルカの向かった街へ足を向けた。
(互いを高め合いそうだな...)
街にて
「それじゃあ生活用品買ってこい、俺は食料買ってくるからマーズ俺の分の服買って来て」
「なんで中年のおじさんのパンツなんか買わなきゃいけないんですか...」
「はいお前荷物当番確定それと俺はお前と3歳しか変わらない、つまり23!。」
「お風呂はどうするんですか」
「あぁ?、そこら辺に温泉湧いてると思うか?、3日分入って来い」
笑顔で眉をピクピクさせてはいと言った。
ここは東京だが、地殻変動とともに電気や水の供給ができなくなっていた。廃れた街が並び、戦争によって人はいなくなっている。
「買ってきましたけど、2人はなぜそんなに多く買ってるんすか」
2人はリュックからはみ出る程の荷物を持っている。ガマはサバイバル道具の様だがカミナは服だけだ」
「え?、山をガマさんの能力で渡るんじゃないですか?」
「マーズの能力で荷物だけ運べるんじゃないのか?」
マーズが溜息をついた。それはそうだ、マーズの能力は奇飾者「△」、三角形のピラミッドで自分と相手を囲み奇跡で戦うもの、荷物を奇跡で送る事はできない。
山にて
「はぁ...、結局山道か...」
3人はガマの能力に乗って運ばれている。
「恨むならあなたの能力恨んでくださいねガーマさん...」
ムカッ
半河間がスピードを上げる。それに気付いたマーズは自分を三角形で保護した。バッグが枝に引っかかりカミナが宙ぶらりんとなる。
マーズは引っかかりそうになるも目の前で枝が、移動によって弾かれた石に折られ引っかかる事はなかった。
「大人げないですよ!、私も乗せてけー!」
枝に引っかかったままジタバタと動く。
「はぁ、はぁ、疲れた」
なんとか乗せてもらい移動している。
「歳上は労わるもんだぞ」
「年下は可愛がるもんですよ」
「可愛くねーも...」
カミナがガマの首元を手で握りしめる。
「可愛いですよね...?」
「可愛い!うわめっちゃ可愛い!、美女!、才女!、色女!」
手の力が緩み、ガマが必死に呼吸をした。
「マーズさんも何か言ってやってくださいよ」
カミナがマーズに手を近付けると枝が飛んできて手首にヒットした。
「あ、ゴメン解除してないや」
「今のは?」
「奇飾者「△」(トライアングル)三角形の中では僕は奇跡に守られる、まぁ枝が飛んできたのは移動してる最中だからって言う前提があるから発動しただけ、きっかけがなかったら守られない」
「あ、弱点まで言っちゃうんだ...、奇飾者って事は中々に珍しい...。」
「俺もそんな能力欲しかったなぁ...」
ガマが目を煌めかせてマーズを見る。
「ハルカ思い出すのでやめて貰えません?」
「羨ましいんだからしょうがねぇだろ、良いよなお前らは、俺なんて家族が異能力に目覚める中ファーマーなんて笑えるぜ」
「ファーマーでもガマさんは十分強いじゃないすか、俺は操者が良かった...」
「え、皆さん自分の能力に不満持ってるんですか?」
「ある!、せっかくなら操者「地」(グランダー)が良かった!」
操者「地」の場合、土に限らずコンクリートや石でさえも動かせる。
「僕も飾者「空」(グライド)が良かった」
「はぁ...」
2人が仲良く肩で溜息をする中、カミナが声を張り上げた。
「なんで嬉しがらないんですか2人とも!、もっと自分の能力に誇りを持ってください」
「だから能力頼りになってるんだろお前、それにその言葉をハルカに言えよ、あいつだって未確認スキルで研究されるのを恐れたんだろうよ、あれは退屈だからなぁ」
「ハルカは冬馬を殺したんですよ...、能力なんて関係ない...!」
「おー、くわばらくわばら...」
山頂
「さぁ、今日はここまでだ、俺がなんか作ってやるからなんかしてろ」
「大雑把過ぎっす、ガマさん」
ガマが土の家を作り始めた。男の分のカミナの分だ。
「この調子だと1週間と掛からず着きそうっすね、って、なんでカミナちゃんは戦争に行こうとしてるんすか?」
確かに、ハルカを追うだけなら手配班に行けば良い。
「うーん、ハルカの能力がわかったからですかね。」
「え!?、未確認スキルなのに?」
「気になったのは三つ、一つ目は能力が奪える事、二つ目はミヅハの魂を持っていた事、三つ目は戦闘では使わない事」
「つまりは奇系、又は宿者シリーズの能力ってことになるな」
家を作り終えたガマがハンバーガーを食べながら言う。
「はい、手合わせして使わなかったって事は、条件があるって事と同義です。つまり」
「宿者って事っすかね?」
「多分、宿者「能力」いや、どちらかと言えば宿者「魂」ってところでしょうか」
「だが条件のない奇系もいるぞ」
「多分っていってますよね...?」
「す、すまん...」
気圧されてそのままハンバーガーを飲み込んだ。
「それと、もう一つの共通点としては、目の前で死んだ者が何処かに保存されている事」
「確かにエルフもミヅハも目の前で死んだってことになるな...」
「だから三笠都は戦争に行くってことってすか!」
「ん?どう言うこと?」
「目の前で人が死ねばそれが何処かに保存される、つまり能力が追加される訳です、ハルカは能力に関しては知識が深い」
「無限に能力を会得できるわけか!、確かに戦争に行けば楽だな」
「何も考え無しに私に声を掛けたんですか?」
「い、いやぁ?、わかってたんだけどなぁ」
ガマは手に持ったハンバーガーのゴミを丸めて燃やした。
「ご馳走様、じゃあ2人とも早く寝ろよ、明日は陽が登ったら出るから」
「はーい」
2人が仲良く返事してご飯を食べる。
2人だけの空間でマーズが先に口を開いた。
「カミナちゃんって、なんで協会にはいれたんすか?」
「スカウトされたんです、ミヅハを倒したからとは思いますが協会の強さNo.3から」
「えっと、強さで言うと1がパールガープ、2がサウザンド、3は、えーとえーと」
「マリアンヌバリバリ」
「ぶはっ、何その名前、電気使いそう」
「ふふっ、ですよね、最初名前聞いた時笑い堪えるのに必死でしたよ」
「つまりトップ3のお墨付きってことか〜、良いっすねぇ、(って考えるとNo.6のガマさんも中々偉いんすよね...)」
「協会に入るのは夢でしたから、だけど、せめてあの人と一緒に入りたかった」
「信楽冬馬君っすか、良い話ばかり聞く有力株って協会内で言われてたんすけどねぇ」
「なんでもできますからね、彼は、それに比べてハルカは...」
「あのさ、冬馬君は復讐を望んでるんすかね?」
「少なくとも私は望んでます、あの日々が戻ってきて欲しい」
涙を流しそうになったカミナを見て心が痛んだ。
「冬馬君は、まだハルカの中にいるかもしれない、1日でも早く、助け出してあげたい」
「だけど、三笠都は歌舞伎は使うのにミヅハの能力を使ってなかったすよね、なら、既に冬馬さんは...」
「違う!、まだ、居るはずなんです...」
その言葉の後に、カミナの得意な根拠は出てこなかった。残酷な人生を選んでる。
「•••、そうっすか...」
嗚咽を堪えて泣くカミナにトライアングルを使った。
「今ならいくら泣いても叫んでも疲れないし聞こえないっすよ、奇跡があんたを護りますから」
マーズを見て大粒の涙を流す。
トライアングル中では声は発生するものの、それが外に漏れる事はなかった。
(「うわぁぁぁん!!!。」)
土の家で寝ているはずのガマは目を開けて天井を見つめていた。
「やっぱり、あんな強くて努力家でも健気で儚げな女の子っすね」
「お前もキザな奴だな、ハルカを殺す気になったか?」
「悪いけど他人の私怨に手は貸さないっすよ、僕は自分を律しますから...」
「なら、その拳を緩めろよ」
「だって!、辛いじゃないすか、突然2人も仲間が居なくなったんですから...!」
「そのために俺らが仲間になるんだよ、もう寝ろ、明日は早いが気は長い」
「は、はい...」
その夜はガマと一緒に天井を眺めていた。
農耕者に巻き込まれた草を数えると寝れる気がした。