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ショートショート4月~

仮面

作者: たかさば
掲載日:2020/04/21

午後の、少し落ち着いた時間帯。


僕は、一人、挽きたてのコーヒーの香りを、楽しむ。


コーヒーミルで挽いた、少し良い豆をペーパーフィルターの中に入れ、そっとお湯を注ぐ。


ふわっと丸く膨らんだコーヒー豆が、心地よい香りを僕の元へと、届けてくれる。




ああ、とても、とても良い香りだ。




この香りは、あのころの、甘い、たまらなく甘い日々を、思い出す。


共に好んで飲んだ、コーヒーの、香り。


君は今、どうしているだろうか。




共に過ごした時間は、今でも心に強く残る、かけがえのない、甘い時間だった。


共に前を向き、共に支えあい、共に笑い、共に泣き。


僕の横には、いつも君がいた。


時には寒さに震え、互いの熱を分け合って、乗り越えることもあった。


・・・君の熱が、恋しい。




今、君を想い、胸に熱いものが、込み上げて来る。


あの時、僕の手に絡んだ、君の髪。


痛いと、涙をこぼした、君の髪に、そっとキスを落とした。


理由をつけては、君の唇を奪った僕を、君はまだ、許してはくれないだろうか。




いつも真っ赤になって、僕の胸をたたいた、君の怒る顔が、僕のまぶたの裏に、今も残る。


目を閉じれば、あのときの光景が、はっきりと思い出される。


淹れたばかりのコーヒーから、湯気が立ち上り、私を包むのは、君と共に楽しんだ、あの、香り。




ああ、ここにいない、君を想って、少しだけ、戯れをしてみようか。


今、僕にできる、唯一のコミュニケーションの、方法。


君は今、幸せですか。


「はい」なら、湯気が、右に。


「いいえ」なら、湯気は左に。



香りを纏った、白い湯気に、ふうっと、想いをのせて、吐息をかける。


湯気は、真ん中に一瞬まとまり、ふわりと、右に揺らいだ。


ああ、君は今、幸せなんだね。


君を、今後も、思い出してかまわないかい?



香りを纏った、白い湯気に、ふうっと、想いをのせて、吐息をかける。


湯気は、真ん中に一瞬まとまり、ふわりと、右に揺らいだ。


ありがとう。


僕は、これからもきっと、君を思い出して、こうして記憶を辿り、生きて行くよ。


答えをくれた、馨しいコーヒーを、一口飲んで、目を閉じる。




ああ、幸せだ。


君に、今、想いを寄せることができた。


あの日の僕たちを、思い出すことが、できた。


僕に幸せをくれて、本当に、ありがとう。


しばし、思いを馳せて、目を閉じ、香りを、享受する。





「おかあさん。これ、どこにおいたら良い?」



「僕」は、「私」の仮面をそっと被って、返事をする。



「あ、それは私のだから、二階の戸棚においてね。」





ねえ、君は、僕が、今幸せだと、思う?


想いをのせて、湯気に吐息をかけようと思ったが・・・。


コーヒーは冷めていて、湯気はもう、どこにも存在しなかった。

私はやらかし仮面被ってます。

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