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彼の心を救うのはあの彼女です!  作者: らららんど
一章 過去を振り切れ!
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夏祭り

 俺は仕事終わりに三玖さんに半ば強制的にある提案をされていた。


「ねえねえ、颯くん今日この近くで夏祭りあるんだって一緒にいかない?? 」


「はあ、いいですけど」


「なんだよ〜乗り気じゃないなぁ〜」


「いや、ここは涼しいですけど外は暑いんで嫌になっただけです」


「今年受験だからさ今のうちに遊んでおかないとダメなわけよ?だから一緒に行こっか?」


「分かりましたよ。それじゃ早速向かいましょうか」


 河川敷に向かっている最中に三玖さんが「アレはやってる?」と話しかけてきた。


「なんの事ですか?」


「颯くん、とぼけないでね?ちなみに私といる時ももちろん継続だからね?」


「それは三玖さんを褒め倒してもいいと?」


「いいよ〜いくらでも褒めてくれて」


 三玖さんはまるで勝ち誇っているかのようにこちらを見ている。


 やっぱりやられっぱなしは性にあわない。

「本当に今日誘ってくれてありがとうございます!《《三玖さん》》と出かけれるなんてとても嬉しいです!」


「今、わざと強調したでしょ?」


「え?僕はただ思ってることを伝えたいだけなのにそんなこと言うんですか?」


「颯くん、ずるい」


 三玖さんがちょっと照れたように言ってくる、こういう所だけみたら三玖さんのほうがよっぽどずるい。


 その後も時々褒め倒すようにしながら歩いていたら河川敷に着く頃にはお互いにヘトヘトになってしまっていた。


「颯くん、疲れた〜なんか買って〜」


「年齢的に言えば三玖さんの方が上なのに奢ってもらうってプライドないんですか?こっちは二つも下の後輩ですよ?」


「颯くん女の子に向かって年齢の話はだめだよ〜デリカシーないな〜」


「て言ってもまだ十代ですよ?それは三十近い人が言う台詞です」


 でもせっかくだし飲み物くらいは奢ってあげてもいいかと思ってしまう自分がいた。


 性格はこれでも三玖さんは実際美人なのだ少しは尽くしてみたいと思ってしまうのも男の性だろう。


 そう思って飲み物を買ってくると三玖さんはパァっと表情を明るくしてお礼を述べてきた。


「颯くん、ありがとね!」


「いえ、別に」


 向けられた笑顔がちょっと眩しすぎた。


 周りの男の人達も足を止めて三玖さんに見とれていた。中には彼女と共に来ていた人もいるそうでほっぺや耳を引っ張られたりしていた。


 この空気はとても耐えられるものではなかったので少し小走りで人混みを抜けた。


 花火も打ち上げられるので景色も良さそうでそこまで混んでいないところに席を取る事にした。


 まだ花火が打ち上がるまでには時間があり、お腹も空いていたので屋台で何か買ってくることにした。一応三玖さんにも何か食べるかを聞いて「かき氷!」と元気良さげに返答されてしまっては断れなかった。


 屋台には結構人の行列が出来ていて買うのに時間がかかってしまった。急いで戻るとそこには三玖さんだけでなく他に二人の男っぽいシルエットが見えていた。


「おねーさん綺麗だね、俺たちと一緒に遊ばない?」


「結構です!」


 近づいて見ると明らかにヤンキーっぽい見た目をしていた。片方は金髪でいかにもと言った感じだった。


「まあ、そういうなってどうせ一人で寂しかったんだろう。一緒にいこーぜ」


 三玖さんが腕を取られているのを見て急いで駆け寄った。


「すいません。やめてもらえませんか?」


「あぁん、んだよツレがいたのかよ、冷めちまったぜ」


 案外潔さようで良かった。


 そのまま立ち去ろうとするといきなり三玖さんが腕をくんできた。


「ちょっと三玖さん」


 後ろのヤンキー達には聞こえないくらいの小声で喋ると三玖さんはまるで聞こえていないかのように無視してくる。


 このままだと色々まずい。いい匂いはするし体は柔らかくて嬉しくはあるのだが困惑せざるを得ない状況になっていた。


 しばらくしてあの場から離れると三玖さんがやっと口を開いてくれた。


「うぅ怖かったぁ〜颯くんありがとうね」


「困ってたら助けてあげるのが普通ですから」


 それはいいとして場所を変えても三玖さんが離してくれそうにない。三玖さんはいつの間にか満面の笑みを浮かべているしさっきまで怖がっていたのが嘘のようだ。


「あの?三玖さん?そろそろ離してくれても」


「いやだ」


 まるで幼児退行してしまったかのようになっている。


「そう言われてもこっちが困るっていうか......」


「颯くんはこうしてるのやだ?」


 若干涙を浮かべてこっちを見てくるこんなのみたら断れるわけがなく認めてしまった。


 周囲からは微笑むような視線や若干殺意のこもった視線を感じる。


 三玖さんがずっと笑顔のままでいるので周りの視線を集めてしまうのだ。


 花火よりも美しく見えてしまう程だ。


 俺が視線を向けているのを気づけば三玖さんはこっちを向いて眩しいほどの笑顔を返してくれる。その度につい組まれている腕を意識してしまったりして気が気じゃなかった。


 そのまま一時間半にも及ぶ花火が終わった。


 夜も遅いのでこのまま帰すわけにも行かず家まで送っていく事にした。


 三玖さんの家は俺の家からは遠いのだが方向は同じだったため同じ電車を乗り継いで帰ることとなった。


 その間も三玖さんは腕を離してくれずされるがままになってしまっていた。



「は......颯くん?ど...どうして......」

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