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彼の心を救うのはあの彼女です!  作者: らららんど
一章 過去を振り切れ!
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プロローグ 〜彼女の喪失〜








 この幸せな時間がずっと続くと思っていた。

 だが現実はそんなに甘くはなかった。








 中三の七月下旬の夏だった。宿題を早く終わらせるべく机に向かっていた俺。


 八月の予定は結構入っていてとても楽しみにしていた。


 宿題はほとんど終わって、明日までにで終わらせようと思っていたのでこの後の勉強の予定を夕食の野菜炒めを食べながら考えていた。


 そうしていると母が話しかけてきた。


「驚かないで聞いて欲しいんだけど」


「ん。わかった」


 ご飯を口にしながら聞き返す。


 すると母は、

(はやて)がよく遊んでた、瑞希ちゃんが昨日交通事故にあったのよ」


「えっ!どういうこと!!??」


「今は病院で安静にしてるけど、脳へのダメージが大きいらしくて......」


「そ、そうなんだ......」


 ちなみに瑞希こと齋藤瑞希は俺の彼女だ。


 母には伝えていないが。


 そんなことを聞いて正気で居られるはずがない。


 できるだけ平静を装いながら自分の部屋へ戻った。


 自室では気が気でない思いで過ごすばかりだった。


 いても立ってもいられずお見舞いに行こうとしたのでどこの病院かを母に教えてもらい向かっていた。


 早く瑞希に会いたい気持ちで早まる足も病院に瑞希がいるということが信じられずだんだんと足が重くなって行った。


 二十分で行ける道に三十分もかかってしまった。


 病院に着くと受付に向かいカウンターの人に話しかける。


「本日はどのようなご要件でしょうか」


「齋藤瑞希さんってこちらに入院していますか?面会希望なんですが」


「齋藤瑞希さんですね、はい、こちらに入院しています。面会希望の方はこちらの書類を書いていただくことになっているのでで書いて貰えますか?」


「わかりました」


 紙に必要事項を書き記すと、

「小鳥遊 颯さんですね。齋藤瑞希さんの病室は311号室です。」


「ありがとうございます」


 とにかく急いで向かった。


 病室に着くとノックもせずに勢い良くドアを開けてしまった。


 すると既に先客が1人居た。


「あら、颯くんじゃない、お見舞いありがとうねぇ」


「瑞葉おばさんお久しぶりです。あの、今の瑞希の状態って......」


「お医者さんからは、脳に大きなダメージがあると言われているわ。しかも、手術が必要な程のね。移転先を探しているらしいのだけれど今は熱中症患者が多いらしくてどうしようもないわねぇ」


 俺は瑞葉おばさんがこんなに落ち着いていることに少なからず憤りを覚えた。


「な、なんでそんなに落ち着いていられるんですか!!自分の子に命の危険があるんですよ!」


 おばさんは無言になってしまった。


 そうだ、よく考えれば自分の子がこんな状態で普通にいられるはずがないのに......


「すいません。少し頭を冷やしてきます。」


 そう言って病室から出る。


 すぐ近くにあるベンチに座った。


 何分たっただろうか。


 ぼーっとしていると病室からおばさんが出てきた。


「さっきは本当にすみませんでした。人の気も知らずあんなことを口走ってしまって」


「いいのよ、あなたも瑞希と話したいことがあるんでしょう。話してきなさいな」


 本当にいい人だなと思った。


 小さく会釈を返すと小さな笑顔を見して帰ってしまった。


 だんだん小さくなっていく彼女の背中はとても大きく見えた。


 病室に入ると瑞希は深い夢の中だったようだ。


 さっき入った時はよく見なかったがよく見ると目も当てられないほどだ。


 堪らず目を背けてしまった。


 そしてそのまま話し始めた。


「瑞希。夏終わったらまた一緒に学校行って一緒に勉強しような。それで同じ高校行ってまた一緒に生活するんだ。それが普通に出来ると思ってた。俺と瑞希ならできるよな?」


 目尻から涙が出てきそうになるがそれをぐっと堪える。



「瑞希待ってるぜ。」



 ―――瑞希は二日後に他界した。―――



なにか感想でも持っていただければぜひお寄せください。

また、ブクマやレビューして頂けれると嬉しいです。

よろしくお願いします

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