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月の都project  作者: 太刀原蒼
2/2

イレギュラー達との邂逅

「初めまして!月宮エレナです!親の仕事の都合で引っ越してきました!これからよろしくお願いします!」

すげえ。最悪のパターンだ。まさかまさかの同じクラスである。


「あ、君確かさっきの!灰条君ていうんだ!これから一年間よろしく!」

「お、おう、これからよろしく」

きらっきらの笑顔と共に月宮さんは俺にそう言った後、早速クラスの女子に囲まれて何処かへ行ってしまった。

「なになに、ナツってばあの転校生ちゃんと知り合いなの?」

永田が馴れ馴れしく肩を抱いてきながら詰問してくる。うわ、やっぱこうなるよねぇ・・・。

「別にお前が期待してるような事は一切ねーよ。さっき偶々出会っただけだ。あとくっつくなってむさくるしい」

そういえば永田は、揉み消し(ディセイバー)だ。

揉み消し屋というのは、主に超常の戦闘などで破壊された物を修復したり、目撃者の記憶の改ざん、果ては表社会にでる影響が出ないよう、どうにかしてくれる者たちの総称だ。以前、揉み消し屋達に代々伝わる特殊な魔術について少しだけ教えてくれたが、全く理解できなかった。まぁとにかく謎魔術で上手いこと世間から我々の事をごまかしてくれる、いわば裏社会の裏方担当とでも認識していればいいと思う。

「へいへいっと。相変わらずだなぁまったく。そんなんだから彼女できないんだよ」

「うるせーよ。分かってると思うけど俺の事はばらすなよ」

「りょーかーい」

軽いなぁ。こっちはもしばれたら最悪消されるというのに。まぁ彼の揉み消し屋としての腕は確かだし(結構お世話になっている)ちゃんとオンオフ切り替えられる人間だからあまり心配はしていないが、それでもあんなに軽い態度だと一抹の不安は拭い切れない。

さて、その後は特に何事もなく時間は過ぎ気づけば放課後になっていた。既にグラウンドからは運動部のものと思わしき掛け声が聞こえてくる。

「エレナちゃーん!この後遊びに行かない?」

月宮エレナは転校初日だというのに随分と打ち解けているようだ。早速遊びに誘われている。

「うん!行く!行くー!」

そのまま女子数人と連れ立って去っていく。

「・・・・?・・・・っ!?ごめん急用できた!また誘って!」

と思ったら急に俯き、突如女子たちとの遊びをドタキャンしたかと思えば血相を変えて教室を飛び出していった。何だ?女子数人もポカンとしている。

むいーん

「お?」

突如、マナーモードに設定していた俺のスマホが鳴った。メッセージ?開いてみると、パピヨンズの本部からだった。

「・・・・・・」

それはこの付近で妙な魔獣の反応が検知されたのですぐに向かって撃滅せよ、という指令だった。恐らく月宮エレナもこの反応を察知して飛び出していったのだろう。ま、行くしかないね。俺も向かうべく、月宮エレナの後を追って教室を後にした。


メッセージに記載された場所に着くとそこは既に人払いの魔術が発動していて、がらんとした大通りで月宮エレナと激闘が繰り広げられていた。おーおーやってんなあ。万が一両方相手することになんてなったら最悪だ。息を殺して見物させてもらおう。

彼女の左腕からは槍のように形作られた爆炎が迸り、間髪入れずに右腕からもでっかい氷刃が奔る。流石は高位の魔法少女、あの特殊部隊に匹敵するという噂は誇張でもなんでもなかったのかもしれない。で、それに対する妙な反応を持った魔獣ってのはどんな奴だ?少し首を伸ばして覗いてみる。

「な!?」

思わず声が出てしまい慌てて口をつぐむ。

それは、昆虫のような節くれだった無数の節足に甲殻を持った〝人間″だった。最早人間としてのパーツが残っているのは僅かだが、間違いない。しかし

「妙だな」

動植物と同化した異形タイプの改造人間はうちの組織にも何人かいる。問題はそこじゃない。なんといか、歪すぎる。昆虫の身体に人間の顔なのは気持ち悪いが何となく分かる。しかし、本来前足があるべき所から顔が生えていたり羽が左右で大きさも種類も数すら異なっているのはもう人外とか以前に生物学的におかしい。しかし、現実としてそこにいる。

「っこの!」

月宮エレナはいったん飛びのき激しい雷撃を放つ。が、それを緩慢な動きで避けた瞬間、凄まじい速さで魔術を放った直後で動けない彼女に迫り、節足の先のかぎ爪を振り上げる。

「しま・・・っ!?」

このまま見ていれば、高位の魔法少女といえども致命傷は避けられないだろう。というか普通に死ぬかもしれない。俺の立場的にはここは見捨て、攻撃直後にあの化け物に不意打ちで致命傷を与えるのが最適解だろう。しかし、気づいた時にはもう行動した後だった。

ガギィ!と懐から抜き放った俺のサバイバルナイフとかぎ爪がぶつかり合い火花を散らす。うわ何て力だ!思わず吹き飛ばされそうになるのを必死で堪える。

「灰条君!?なんで!?」

「月宮!話は後だ!いいからそこどけ!!」

あまりのパワーにかぎ爪をいつまでも支えておけない。

「おらぁ!」

気合いと共に渾身の力で強引にパリィする。

「取り敢えず共闘だ。援護頼むぜ」

「うん、まかせて」

言うや否や細い閃光を怪物に放つ。

「グ、ガアアアア!?」

閃光はかろうじて残っている人間の部分に着弾した様だ。

「甲殻以外には攻撃通るっぽい!」

「了解!月宮エレナ!」

「エレナでいい!」

そのまま次々と閃光を放つが、避けられたり節足で防がれてしまい、当たる気配はなかった。

「俺が行く!誤射は勘弁してくれよ!!」

「了解!」

化け物に向けてダッシュで距離を詰め、斬り裂こうとナイフを振り上げたところで横に転がる。その瞬間、死角から迫っていたかぎ爪が数瞬前まで俺がいた空間を抉っていった。やはりあのかぎ爪を先に何とかしないと人間部分に攻撃何て言ってられない。

「一瞬でいい、腕を止められるか!?」

「まっかせ、て!」

ゴゴン!と、重々しい音と共に節足が何本かせり上がってきた岩に飲み込まれた。俺はその隙を逃さず甲殻と甲殻の継ぎ目に刃を差し込み、次々切断していく。

「グギィ!?」

切断面からは粘液質な黒っぽい血液を滴らせ、化け物は苦悶の声をあげる。

残りの節足が俺を引き裂かんと殺到するが、エレナが炎や氷などで残らず撃ち落とす。

「せええええやあああ!!」

駆ける勢いを余さず生かし、腹部に深々とナイフを突き立てる。

「ぐ、ぎぎぎ・・・・」

暫くびくびくと弱弱しく蠢いていたが、やがてそれも止まり沈黙した。

「やったか!?」

「ねえ待ってそれフラグ!!」

あ、やべと思ったが後の祭りで、最後の力を振り絞って化け物がかぎ爪を振るう。

「危ねえ!」

咄嗟にエレナを突き飛ばす。その瞬間ガスッという音と共に俺の左腕が半ばから千切れとんだ。

「ぐ、ああああ・・・・」

「ちょ、あんた血が!し、止血しなきゃ!119!?」

「落ち着けって、俺は大丈夫だ」

これは強がりでも何でもないが、後々の事を考えるとあまり使いたくない手だった。まぁもう使うしか選択肢は残されていないわけだが。

「どいてろ」

残った右腕でポケットを探り、赤紫色の液体が入った注射器を首筋に突き立てた。

「お、おおおあああああああ!」

メキメキと音を立てて欠損した左腕が修復され、体中の筋肉が強化され、強靭な漆黒の鱗が生える。更に臀部からは太い尾が姿を見せる。

「できれば使わず隠し通したかったがな。改めて名乗るよ。秘密結社クローズクロイツ、戦闘部所属のリザードタイプのキマイラ、灰条薙月だ。」

容赦なく振るわれるかぎ爪を裏拳で弾き飛ばし、刺さったままのナイフで半月を描くように斬り裂いた。噴水のように鮮血をまき散らし、今度こそ化け物は絶命した。

「あんた、そっち側の人間だったの?」

エレナはその両手に魔力を集めながら静かに聞いてきた。

「ああ、黙っていて悪かったな。こっちも消されたくはなかったからな」

「・・・・・・なんで、私を助けたの?灰条君の立場的には、不意を突いて殺すことはあっても助けるなんてありえないでしょう?」

「そのつもりだったんだけどね、気が付いたら行動してた」

「ふーん・・・・ま、それがなかったら私は今無事じゃいられなかっただろうし、そのことに免じて今攻撃するのはやめてあげる」

そう言って、ふっと魔力を消した。助かったー!正直まともにぶつかった場合勝ち目はなさそうだったからマジで助かったー!月宮エレナはその後、上に報告するとか言って去って行った。

「さて、そこにいるのは誰だ?」

いつの間にか、人払いでがらんとしていた大通りに、一人の少年が立っていた。年は10歳前後だろうか、どこからどう見ても普通の一般人だが、異様なプレッシャーを放っていて、無意識に流れた冷や汗が顎を伝って地面に落ちる。一体何者だ?

「これはこれは、僕に気づくとはやるじゃないか」

ビリビリと突き刺さるような悪寒を感じ、思わず飛びさすった俺の、すぐ背後からその声は聞こえた。

「!?」

相手が何者かは分からないが、全力で警報を鳴らす俺の本能に従い全く手加減なしの回し蹴りを叩き込む。キメラ化している状態だと全身の筋肉がかなり強化されているので、ただの回し蹴りでも電柱をへし折る位の破壊力はあるはずだ。

「ははっナニコレ」

ぱしっと、まるで投げられたボールをキャッチする様な気軽さで、その少年は俺の回し蹴りを受け止めた。しかも片手で。

「うっそ!?」

ならばと臀部から生える尻尾を槍のように突き出すが、やはりあっさりと躱され、むんずと掴まれる。

「やれやれ、血気盛んなことで。少し落ち着きな、よッ!」

ドゴッ!!

掴んだ尻尾を地面に振り下ろし、アスファルトで舗装された道路が陥没する。

「がッ」

あまりの衝撃で肺の空気を根こそぎ吐き出させられた。

「ふむ、D14を殺った事の借りはこんなもんかな。全く、彼は数少ない実験の成功例だというのに、あっさりと撃破してくれちゃって。ま、ここで死ぬなら彼もその程度だったということかな」

この子供は何を言っている?実験?くそ、ダメージがでかすぎて思考がまとまらない。

視界も、ぼや、けて・・・・・。

「お前、何者だ・・・・?」

「ん?なんだ生きてたのか。まぁ別にいいや。僕の名は月神。失われた同胞達を救うために立ち上がった月の都projectの第一人者さ」

つきのみやこ・・・?だめだ、限界か。俺の意識は、月神とやらが話した内容を理解する前に、深い闇へと落ちていった。


ここまではなんとなくネタがあったので、こっから先は手探りです。がんばります。

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