今日くらいは、いいですか
真夜中の海は
まるで真空のなかの世界
君の息づかいも
僕の鼓動も
おおげさに聞こえてしまう
砂浜を歩く君の背中越しに
君の存在よりも
大きなものに
僕はホッとしている
空を見上げれば
それほど多くない星たちに
僕はここにいることに
感謝してる
今ここにいることが
前もっての約束で
来ているとしたら
言葉を選んで話さないといけないけど
今夜はそうじゃないから
恋を知ることが
君を知ることにつながっているとしたら
これからの会話は
偽りのないものにと
僕は考えてしまう
そのこと自体は
君にとっては
どうなんだろう
誰かに描かれた道の上を
僕が歩くとしたら
歩いているあいだに気づいたことを
君に伝えることが
君のためになるんだろうかと
考えてしまう
近づきすぎても
うまくいかない距離があることを
僕はあらかじめ
気づいてはいるのだけど
今日くらいは
いいのかも、と
思うことはダメなのかな