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第7話 夢は美少女チーレムだ

 カーテンを開く音が耳を刺激する。まどろみの中にいる俺を、窓から入ってくる光が目を覚まさせる。


「おはようですの、タカヤ」


 俺にそう挨拶をしたルナはなぜかふくれっ面だった。俺も目をこすりながら「おはよう、ルナ」とあくび混じりに言う。

 体を伸ばして、骨をポキポキと鳴らす。寝ている場所が床だったからそこまで眠れなかった。昨日の疲れの一部を全身で感じながら俺は床に手を付いて立ち上がる。


 と、ルナが「ちょっと!」と俺に怒ってくる。


「わたくし、床で寝ていたはずなのですが」

「女の子を地べたで寝かせるわけにいかねーだろ。お前が寝た後に能力で動かしたんだよ」

「ふぐぐ……」


 昨日の夜。2人で話した後、年増の女性、ルナ曰く「母で王妃」が部屋に来て俺を馬小屋に案内した。ここで眠れということらしく、俺はそれを渋々了承した。

 しかしその後、ルナが馬小屋に来て、寝室として自分の部屋を貸してくれたのだ。多少抵抗やミーナの反対もあったが結局そこで共に眠ることになり、俺はルナからベッドで寝るよう指示された。あとは先ほどの言葉通りの流れになったというわけだ。


 そうこうしていると、部屋の扉がガチャリと開いた。ミーナが朝食を持ってやって来たのだ。


「お嬢様、朝食の用意ができました」

「ありがとうですの、ミーナ。さ、タカヤもご一緒に」


 ルナがそう言うと、ミーナが木でできたトレイのような物に乗っている皿を小さな机に並べていく。3つの皿には1つずつ、目玉焼きを乗っけたトーストがある。


「それでは、いただきますわ」


 俺たちは机の周りに座って目の前の料理を見た。


「……俺はご飯派なんだがな」

「ゴハンが何かはわかりませんが文句を言わずに食べてください」


 ミーナは少しムッとして答える。さすがに今のは失言だったな、俺はどんよりと気を落としてトーストを食べ始めた。

 食べ終わった後。「それでは、私は食器を片付けてきます」、そう言ってミーナが立ち上がり、トレイの中に皿を置いて部屋から出て行ってしまった。


「……いつもここであいつと食うのか?」

「母や姉妹と食べていては下手をしたら食事にありつけませんの。ですから仕方がないですわ」

「ならしゃーねーか。そんで、今から何すんの?」

「ミーナが戻ってくるまで部屋で待機ですわ。今日は様々な仕事が入っているとのことですから、1日中部屋に缶詰めかもですわね」

「え〜……」


 俺は床でぐったりとする。1日中部屋に缶詰めって、パソコンや漫画もないのに? それは地獄と同じようなものだ。俺は地獄ではなく美少女ハーレム(てんごく)へ行きたい。


「また下心出してますわね」


 俺は突然のルナの言葉にドキリとする。


「いやいや! 出してないぜ! 俺はいたって清純だぜ!」

「その言い方だと図星かしら。おおよそ見当はついていますわ、大勢の美女と恋仲になって遊びたい、というハラですわね」


 俺はまたも言い当てられて「うぐっ」と声を詰まらせる。ルナが「また図星かしら」とコメント。マズイ、流石にこれは引かれる。


「まあわたくしはタカヤのそういうところ好きじゃないですが……だからと言って良き友人じゃなくなるなんてことはありませんわ。恋仲もそうですけど」


 真っ向から「あなたには絶対に惚れませんわ」とアピールされて俺はさらに落ち込む。言い方からしても本気だ、わざわざ思考を読む必要もない。俺は男心に傷を付けた。しかしそんな俺にさらにルナは追撃する。


「アドバイスをしますが、女の子は顔が良くて能力が高いというだけでなびくと思わないことですわね。性格も良くないと魅力的とは思えませんし、少なくともわたくしは性格を一番重視しますわ。さらに言うなら“たくさんの女の子に囲まれよう”と画作しますと余計に女の子から嫌われますわ。それが許されるのは一部の人間が一部の女性にする時だけですの。女は妊娠するリスクがある分相手を選びたがりますからね。あとは……」

「オッケーオッケー。よくわかったから」


 少し頭が痛くなる。そんな風に言われても、ハーレムは男の夢だから仕方ない。ルナは「ここからが重要ですのに……」と顔を膨らませてボヤいていたが、あいにく俺はそんな話よりもどうすれば俺の(チーレム)が叶えられるかが知りたい。


 ……でも、とりあえず千里の道も一歩から、だよな。俺は理想卿完成のために、まずは未来のビジョンを本格的に練り始めた。

 となるとやっぱり手始めは……俺はルナの顔を見た。

 ズキリ。なぜか、胸が痛んだ。俺はこの感覚に少し疑問を持って、顔を苦々しく歪めた。


 すると、扉がいきなりガチャリと開いた。


「ルーナー。お姉さんと遊びましょう〜」


 見たことない女だ。俺はドアから出てきたそいつに細い目を向けた。するとそいつは「ッチ」と舌打ちしながら部屋から出て行った。


「今の誰?」

「わたくしの姉ですわ。ミーナがいない日はいつもあんな感じで部屋にやってきますの。……無論、わたくしで遊ぶために」


 自分はおもちゃだとでも言いたげな言葉。俺はルナへの差別の大きさを改めて実感した。

 力が弱いから、疎まれる。俺とは真逆の、似た気持ち。思わずイライラして頭をガリガリと掻きむしった。


「ったく、なんだってルナがんな目に遭わなきゃならねーんだ」

「社会の常識ですから仕方がありませんわ。……ま、幸いにもタカヤがいるからそんなこともなさそうですけど」


 そういえば、ルナは姉が来ることを予想していたのに不安がっている様子がなかった。

 ――俺が、いるからか。俺はルナからの信頼を感じて、少し嬉しかった。


 すると、ルナは突然「さて、と」と言って立ち上がって、体を軽く動かした。


「さあ、タカヤ。わたくしと一緒に城を回りますわよ。しばらくここで住むのでしたら、建物の間取りくらい覚えないと話になりませんわ」


 俺は立ち上がって、「オッケー」と彼女と共に城巡りを開始した。

【技術解説】

□キャラの役割決め

これは展開の技術というよりキャラの作り方の一種。つまり、そのキャラにどんな役割を与えるか。ただ「主人公」や「ヒロイン」だけじゃなくて、「どういった主人公なのか」、「物語において主人公は何の象徴になるのか」、また、サブキャラ達に関しても「役割は何か」、「何を象徴するのか」などなど考えると良い。

今回の場合、主人公「タカヤ」は「どんなに誰かが泣いてても、拳1つで原因をぶっ飛ばしてすべて解決するヒーロー」という役割をはたしている。

ただし、この役割決めと言うか象徴と言うか。「あった方がいい」であり、「必ずないといけない」わけではない(そんなこと言ったらこの技術解説の話は全てそうなのだが)。


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