ハイエルフの女王と黒豹の厨房
リーフフォレスト王国、王都エルウィング―。
朝日が青空へと昇りきった頃、王都の中央に高く聳え立つ王城の尖塔で翼を休めていた純白の鳥達が飛び立つ。
王城の女王の玉座がある大広間で、金のモールと短い紅い外套に白衣の儀仗着に身を包んだエルフ近衛騎士団、軍楽隊が演奏するファンファーレが高らかに鳴り響き、メロディーを紡ぎ出す。
王国旗と傭兵団「魔弾のラーテル」の団旗が左右に掲げられ、玉座に続く両端に金色の紋様が織り込まれた紅い絨毯を境に左右に王国貴族と騎士団長、聖王国軍司令官と高官、そして、システィナ条約諸国の各国軍司令官と高官達が荘厳な雰囲気で参列していた。
ファンファーレの最後の一音が消え、余韻が大広間に広がり、短い静寂が訪れる。
その時、玉座の向かいの大きな扉がゆっくりと重厚な音を立てながら開くと、黒髪に雪の様に白いミリタリーコートに身を包んだ傭兵団「魔弾のラーテル」の司令官望月秋兎が表情硬く威風堂々と入室した。
秋兎の直ぐ後ろを歩くのは、長い金髪を軽やかに揺らしながら、どこか余裕めいた笑みを浮かべる副官シャーリィ・ワイルダーの艶やかなウェーブの髪とミリタリースーツが映え、彼女が放つ気さくさと豪胆さは、秋兎の硬さを和らげるかのように見える。
更に続いて、落ち着いた表情のマイア・フィオーレ、鋭い眼差しのヒルダ・イスマイル、堂々とした気配を纏うサシャ・クレスティル、そして精悍な立ち姿のフェリシア・エリクセンが女王の玉座に続く紅い絨毯の上を進んでいく。
窓から差し込む光と、再び奏でられた軍楽隊の荘厳な演奏に照らし出され、彼らの姿は、一層鮮烈な輝きを纏い、大広間に集う者全ての視線を奪っていった。
その颯爽たる姿を目にして、圧倒され息を呑む者、勝利への期待を確信へと変える者、そして内心で訝しげに眉をひそめる者など、参列者達の胸中には様々な響めきが広がっていった。
玉座に座したリーフフォレスト王国初代女王フィーネ・ホーク・エルウィングは、紅い絨毯の上を堂々と進み来る傭兵団「魔弾のラーテル」の仲間たちを引き連れ、その先頭に立つ秋兎を彼女は、言葉を発することなく、ただ深いエメラルドの瞳で見据える。紅い絨毯の上を堂々と進み来る傭兵団の仲間達と、その先頭を進む秋兎に彼女は、一言も発せず、ただ深い緑の瞳で見据える。
「あれが、噂の女王の傭兵団か……」
「ようやくリーフフォレストが本気を示したか……」
「寧ろ今更と言ったところか……」
「これで帝国に対抗する我らの大義は固まったな……」
「王国の命運を懸けた一戦を子飼いの傭兵団に任せるとは、女王も大きな賭けに出たな……」
秋兎達の隊列が紅い絨毯の沿道に立つエルフ聖騎士団、団長ユーリ・アウル・ルクシャナとアルヴィナ聖王国軍、リーフフォレスト王国駐在城塞司令官ザヴィーネ・フォン・ヴァイツゼッカーの前を通り過ぎる。
ユーリの視線に秋兎は、内心食えない奴ではあるが、王国軍のザヴィーネやロゼットよりは、話が分かる人物として信頼している事もあり、小さく頷いて視線を返して通り過ぎていく。
「まあ、エルフの正規軍はたかがしれているからな……」
「なんであれ、勝てば良いのだ。勝てば……」
「だが、敗れた時、王国はどうなる……?」
「王国に再び波風が立たねば良いが……」
「いや、あの傭兵団なら間違いなくやってのけるはずだ……」
囁きは大広間のあちこちから漏れ、軍楽隊の演奏と共に石造りの天井へと吸い込まれていく。
――みんな勝手なことばかり言っているわね。
ETC.・・・・。




