豹と狼
木製のロッカーの前でエーリカは脱いだ漆黒の軍服の上着をハンガーに掛けて、首元に手をやって紅いネクタイを緩め一息つくと、少し前のことを思い出す。
戦車、装甲車、戦艦、そして、装甲列車・・・・。
趣味で製造していた物がこんな時に大いに役に立つなんて皮肉だなとエーリカは思った。
調子に乗ったニュルンベルク広場の大演説の後、イナンナ、ドーラ、紅莉栖、響を連れてそのまま工廠エリアにある格納庫に向かった。
響の情報どおり、格納庫には機関車、電源車、炭水車、指揮車、火砲車、警戒車の六輌編成の立派な装甲列車が綺麗に整備された状態で格納されており、壁際には白いシートが被せられた新品のレールと枕木が整然と積まれ、奥には建造途中の車輌が三両そのままの状態で放置されていた。
響が言うには、建造中で放置された三輌の車輌を輸送用の貨物車に改装して使えば輸送トラックの十倍以上の資源を輸送できるそうだ。
紅莉栖も、骨組みは完成しているから貨物車に必要なパーツを製造して組み立てれば二、三日で輸送任務に投入できると説明した。
なら、資源地の立地条件さえ合えば鉄道輸送は現実的に可能だと感じ取った。
ETC.・・・・。