ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅨ:前を向いて
リレー小説『=BlanK † AWard=』
執筆者:久遠蒼季
最終回
○
「しっかし、また病院送りとは……。我ながら情けねぇな」
白い部屋の中、両腕を頭の後ろへと回し、ハインツは天井を見上げた。消毒液の臭いはあまり慣れたい物ではない。
あの〈イースターエッグ〉破壊戦から早数日。
最も重傷を負ったのはハインツであった。
C3クラスレイドとの戦闘、その最中にアラクネストごと自身を氷漬けにしたのだ。無事である方が異常である。
残存レイドを全て撃破し、さらには輝核も全て回収する頃には、全員の体力は限界であった。地上に戻ると同時に彼らと入れ替わるようにアーセナルの処理班が突入し、ひとまず全員が病院へと搬送された。
「歳なんじゃない?」
ベッドの隣に座り頬杖をつくありさは、半眼で告げる。今回入院したのはハインツだけである。作戦を共にしたセイルの面々は、軽く言葉を残してもう庫森町から離れている。彼らには彼らの戦いがある。長居をしている暇はなかったのだ。
「……かもなぁ」
ありさの言葉にさして気を悪くした様子でもなく、さらりと告げる。
「調子くるうじゃない」
「……」
ハインツは少し目を瞑る。
「あのなアリサ」
そのまま、ゆっくりと口を開く。
「人生は、まだまだ長い。戦いの感触なんて、不変じゃないさ」
その言葉に、ありさは目を伏せる。手にはまだ、倒した時の感触が残っていた。それは達成感として得られると信じていた物。
だけど今、それはどこか空虚であった。
「なんでなんだろ」
「そんなもん、ポンと答えが出てはこないだろ」
さっくりとハインツは告げる。
「逆に言えば、その新しい感覚は、成長の兆しなんじゃねぇか?」
「……成長?」
「そうだ」
少し間を置くように、ハインツは深く息を吸い込み、目を開く。
「お前はこれから、まだまだいろんな事に出会うだろう。それが楽しいことなのか辛いことか、選ぶ事は出来ない。出来るのはそれらから目を離さないことだ」
「大丈夫だ。お前はまだまだ立ってられるさ」
その言葉に僅かに息を飲み、ありさは一つ息をつく。
胸にいろいろな言葉が去来する。言葉は、上手く纏まりそうもない。それでも、それが深いではない事は確かだった。
「っ、ちょっと先輩だからって、知った風なこと言って」
「ハハッ」
ありさの言葉に、ハインツは軽く笑って返す。
「最年長なんだ。先輩風くらい、いいだろ?」
長く息を吐きながら、軽く筋を伸ばすように身をよじる。
「そうね」
返すありさの表情も、どこかすっきりとしているようだった。
梅雨の向こうに消えた、誰かの夢。
それは自分が奪った未来だ。
それでも、目を背けたりはしない。
きっと、それが歩くという事だから。
はい、久遠蒼季でございます。
というわけで、このリレー小説企画『=BlanK † AWard=』は完結となりました!
エンディングとしては、かなりあっさり風味に仕立ててみました。
どこか清涼感のある雰囲気にしあがっていればなぁと思います。
企画の発足から約1年ぐらい、いろいろな事がありました。
登場させるキャラクターの打ち合わせ等々、慣れないことも多くて大変でしたが、作品そのものはいかがだったでしょうか?
リレー小説という媒体もあって読みづらいところも多々あったかと思います。
それでも、ここまでつきあってくださった方には、心から感謝を。
これからに関しましては、もし、何か気が向いたら企画を行うかもしれません。
体力が持てばですけど!
それでは、今作品はこの辺りで。
またどこかでお会いしましょう。




