ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅣ:前へと進む、その為に
リレー小説『=BlanK † AWard=』
執筆者:久遠蒼季
「……ダメ。ここからは進めそうにない」
ミチルはマップを見ながら首を横に振る。〈イースターエッグ〉の下に開いた穴だが人間が通れそうにはない。
「下手に砕く訳にもいかねぇか」
「そうだね。迂回しよう」
十条寺に短く返し、茜も踵を返す。
そうして一同は仲間の元へと駆けだした。
○
「――己を弾丸とするか」
地の底に、アラクネストの静かな声が響く。
ありさの突きだした《ウィル》は確かに上半身を穿っていた。蜘蛛の胴体から生えた上半身の内、左半分は直撃と共に放たれた雷撃によって炭と消えていた。
「惜しいな、それでは届かない」
それ以外の部位は健在である。
「上に飛べ、アリサッ!!」
ハインツの叫びとほぼ同時にありさは跳躍する。その直後、ありさの胴体があった位置をアラクネストの拳が通過した。
ハインツの直感が告げる。
この戦いに次の機会はない。
故に、この攻防で決着を付ける。
躊躇わずに、ハインツは地面を殴りつける。それと同時に地面に氷が走りアラクネストの眼前で隆起し壁となる。ありさは氷壁を蹴り、転がり落ちるように背後へと回る。だがすぐさまその後を追うように残った右腕が振り下ろされた。
「オラァッ!!」
その一撃を遮るように、ハインツが上空から飛来する。魔力弾を弾き、さらには氷壁を足場に目標の頭上へ。全体重をかけて弾丸と共に撃ち穿つ。追撃から回避行動に移るが、蜘蛛側の右足が一本吹き飛ぶ。
「だが、こちらの腕も足も、そちらより多い」
「知ってるよ、んなことぉッ!」
着地と同時に迫り来るアラクネストの腕と脚。雨のようなそれらの連撃を、ハインツは起き上がりこぼしのように体を捻り、体勢を整えて起き上がる。それでも躱し切れていなかったのか、肋骨に鈍い痛みが走る。
「加えて言うなら、こちらにはこれがある」
言葉と同時に、糸が放たれハインツの胴体に絡みつく。腕は生きている。だが、これでは回避のしようがない。息をつく間もなく、最後の腕がハインツへと突き立った。
ゴシャッと、肉の砕ける音が反響した。
「……?」
確かに、拳は当たった。手応えもあった。
だというのに。
「捕まえた」
何故、この右腕を引く事が出来ない。
回答は、至極単純。
ハインツに直撃した右腕が、彼の左腕に掴まれてその胴体ごと氷漬けにされているからである。
「さっきよ、己が弾丸になるんじゃ足りない、惜しいっつったよな」
右腕の《アレスグート》に全魔力を装填していく。
「だったら、お前が弾丸になれよ」
言うやいなや、アラクネストに対応を取らせる前に、ハインツはその右拳を体軸の僅かな回転だけを用いて、しかしぶれる事なく背面へと突き出した。
ドゴンッと、爆音と共に籠められた魔力が炸裂し、急激な加速度を生む。流星のように巨大な質量を以て直線的に進む。
巻き込まれながらも、アラクネストは冷静であった。
なるほど、確かに拳を止めた事も、こうして反撃に転じた事も驚愕に値する。
だがそれまでだ。
これは捨て身の一撃。それも先程の焼き直しである。この速度で壁に叩き付けたところで仲間の少女がトドメを刺すのが関の山だろう。であれば拘束されている側へと防御を集中させれば返す拳でどちらも打ち払える。
(なんて、考えてんなら、やはりテメェは見えてねぇッ!!)
ハインツが向かう先は壁ではない。
雷に左半身を焼かれたアラクネスト、死角となったその先は――。
(なぁ、アリサッ!!)
声に出して、名を呼ばれたわけではない。
それでも、《ウィル(意志)》はここにある。
ありさは腰を落としその両刃に雷を纏いながら、バトンのように回転させる。
久遠蒼季でございます。
さてさて、物語もいよいよ大詰めです!
身を削るような攻防が続きますが、その勝敗の行方は――。
最終回まであと少し!
是非おつきあいください!




