Ⅷ:嵐の前の
リレー小説『=BlanK † AWard=』
Ⅷ:嵐の前の ※旧Ⅳ話
執筆者:リブ本
「毒島君、よろしく。君の席はここだ」
そういって担任が促したのは一番前の列―刀真の隣の席であった。後ろに座っていたありさ、ゆうなははじかれたように顔を見合わせ、続いて刀真に目をやった。刃巫女はそんな二人を気にも留めず、つかつかと指定された席に歩み寄る。
「お前は……」
「刀真くんじゃない、昨日ぶりぃ!」
ケタケタと笑いながら刃巫女は席に着いた。頬にはゆうなの攻撃による軽い火傷が残っていた。肩の傷も・・・ある。制服が、ガーゼか何かで盛り上がっているのがわかった。しかしそれを気にも留めぬ彼女の言動に、刀真は面食らってしまった。
「おお、君たちは知り合いなのか。それは都合がいい、龍御君、彼女にいろいろ教えてやってくれたまえ。では一時間目が始まるので私は失礼するよ」
担任はそうとだけ言っていそいそと教室を出てしまい、間もなくチャイムが鳴った。
刃巫女は刀真のほうに振り向いて、あやしく目を細めた。
「そういうことだから、よろしくね。お礼に私からも良いことを教えてあげる――」
○
十七時、庫森支部。
「と、言うことなんです」
刀真は今日の学校での出来事を話した。
「なんだって! あのアーカイブの女が? そりゃあ大変だ! どうりでゲッソリしてる」
ハインツの言葉通り、刀真の顔は心なしか疲れて見える。
「あいつに何かされたのかい」
椅子に座り書物を読んでいた次郎も、それを中断し心配そうに刀真たちに歩み寄った。
「大丈夫、危害は加えられなかったよ。でも、それだけじゃない」と、ゆうな。
苦々しい顔でありさが続ける。
「―あいつによると今夜、強力なレイドが現れるそうよ。場所は庫森町はずれの農場跡地……」
その言葉に、一同は張り詰めた。
「……信じていいものかね、そりゃ」
ハインツは怪訝な顔をしている。
「俺も正直、罠じゃないかと思ってます」
刀真も疑っていた。
「こんなときに結子さんが留守なんてタイミングが悪いなあ。いつ帰ってくるんだろ……」
ゆうながじれったそうにそういうと、間髪いれずにありさが言った。そう、支部長である結子は昨日から庫森支部を空けている。
「今朝『一日空ける』って言って出て行ったから、少なくともすぐには戻らないわよ。いいじゃない、行きましょうよ。もしあいつらが現れたら、今度こそ叩きのめしてやるんだから!」
せき立てるような口調だ。ハインツはなだめるように言った。
「おいおい、随分血気盛んじゃねえか。だがなアリサ、アーカイブは本来俺たちの敵じゃねえ筈なんだ。それに、もし毒島がよこした情報が本当なら、あいつらはレイドの出現を予測する技術があるってことになるんだぜ。出来れば仲良くしたいだろ……」
次郎は顎に手を当ててうつむき、しばらく考えるような動作をして、言った。
「……僕の考えではその強力なレイドとやらはちゃんと現れると思うよ。だから、あらかじめそこで張ったほうが有利だと思う」
そして顔を上げ、辛辣な顔で続ける。
「むしろあいつらの目的は、僕たちとそいつを戦わせる事だろうね……」
一同は黙り込んだ。おのおの、頭の中で思索を巡らせ始めたのだ。
が、暫くの沈黙のあと、突如ゆうながパン、と手を打ちそれを遮った。
「皆、とにかく行こう! レイドが現れるのが本当なら倒さなきゃ町の皆が危ないよ。今はそれで十分だと思う!」
鳩が豆鉄砲をくらったような顔をする刀真だったが、やがてふっと笑った。
「そうだな。俺は賛成だ」
次郎もゆっくり頷く。
「僕もそれでいいと思う」
ありさは頬を両手で軽く打った。
「強力、ってんだからね、気合入れなきゃ。」
「――決まりだな」
ハインツもにやりと笑った。
始めましてこんにちは。4番目に執筆いたしましたリブ本です。
人様に公開するような作品を書いたのは初めてなので色々拙いところがあるかと思われます。いやぁ、筋道立てて話を書くのがこんなに難しいとは思わなかった。ホントは戦闘まで書きたかったのですが、無事力尽きました。
あ、私の持ち寄ったキャラクターは孔雀丸こと烏丸次郎です。彼は何故あんな見た目や能力をしているのか、それはもう天啓としか言いようが無いですね。
ではまた次回、ありがとうございました。