ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅤ:深遠より覗くモノ
リレー小説『=BlanK † AWard=』
執筆者:久遠蒼季
巨大レイド。体長四m程度。距離を取り、こちらの様子を伺っている。足下に簡易の光源を散布しているが、それでも詳細はうかがえない。
ベースになった生物。『不明』。視認できる情報は全身が毛に覆われ、鋭い爪を持つ四つ足という事だけ。体格的には熊のようにも、犬のようにも見える。
「おまけに能力も不明、ときたか」
距離、目測で十m。次郎はいつでも障壁を展開できるように《ワイヤードジェム》をゆったりと伸ばしていく。
槍の穂先を下へ、柄を上に伸ばすようにゆうなは構える。
轟ッ! と咆哮と共に巨大レイドが腕を振りかぶりながら突撃する。全員の本能が、アレをまともに受けてはいけないと叫んだ。
バックステップと共に次郎はまず勢いを殺すための簡易障壁を展開する。
押さえたところでしっかりと――。
「ガァアアアアアアアアアアアアアア!!」
ゾンと、まるでバターでも引き裂くように障壁が裂けた。
驚愕よりも速く、一同は回避行動へと専心する。そこに割り込むように、ゆうなは槍に焔を纏わせ、迫り来る豪腕を弾きにかかる。
ゾン。
と、塵が払われるように、焔が掻き消えた。
「ッ、ハァ!」
身を滑らせるように後方へと転進し、槍だけをその場に残す。槍はゆうなの身代わりになった用に豪腕に叩き付けられ、宙を舞った。
転がりながらゆうなは自身の《アワード》を閉じ、再度開く事により《クリムゾン・ブレイザー》を手元に戻す。幸いなことにダメージはほとんどない。
だが。
「まっずいなぁ……」
ゆっくりと息を吐きながら、ゆうなは思考を整理する。
裂けた障壁、消えた焔、宙を舞う槍。
「エネルギー状態の、魔力融解」
それが、ゆうなが出した能力の結論であった。
その言葉に、他のメンバーが身をこわばらせる気配を背に感じた。何せ、今の面子にとって相性最悪なのだから。
「大丈夫」
そんな不安を断ち切るように、ゆうなはしっかりと告げる。
「レイドの能力は無敵の力でも、万能の力でもないよ。何かしらの原理がある」
しっかりと、前を見据えて。
「だから、前を向いて戦うんだ」
○
「チッ、いよいよ通信もダメか」
走りながら、ハインツとありさは通信機を触るが、ノイズしか返ってこない。恐らく通信に障害が出るほど魔力の濃度が高くなってきている。
「ちょっと、アレ!」
走り抜けた先、二人は開けた空間へと唐突に飛び出した。周囲には何もない。はずだというのに、周囲が妙に明るい。光源を用意するまでもないほど、燐光が周囲を照らしていた。
その中心には、影。
何かを圧縮、凝縮したような影。
上には、未だ石が落ちる、暗い孔。
不意にこちらへと首を向けたソレと目が合った。
その瞬間、未知の悪意が視線をもって、二人を捉えた。
さてさて、久遠蒼季でございます。
最深部に到達した一行とは別のところで、花開く悪意。
閉ざされた空間で戦う二人の運命は――?
それでは、今日はこの辺りで。




