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=BlanK † AWard=  作者: 久遠蒼季、すたりあ、緑茶、リブ本
《ChapterⅡ》
68/99

ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅧ:貫きの意志

リレー小説『=BlanK † AWard=』

執筆者:久遠蒼季



   ○



 タバコの煙をくゆらせながら、十条寺はD1ハウンドを観察する。

 体格は大きく、それに伴い爪や牙も肥大している。直撃だけは必ず避けること。特性は骨と関節と肉を増幅させた身体の伸縮、及び自在回転。

「っとぉ!」

 落ち着いて考える間を与えないかのように、縦の振り下ろしが十条寺を狙う。その一撃を横っ飛びに躱しながら、距離を測る。

 現在、目測で五mほど。本来であれば、デモリッションガンである《承黒》の射程圏内ではあるが、雑に撃つ余裕はない。外せばそれが隙になり、それが致命的なミスへと繋がりかねない。

(Ⅳ章が有効な相手じゃぁ、ねぇなぁ……)

 自らの能力を試算する。アームド・ウェポンに武装された能力こそ、武装魔導師(ウィザード)の唯一であり、頼るべきカードである。だがそのどれもが常に有用に働くわけではない。場面を読み、能力をどう使うか。

(ま、腕の見せどころだな)

 先程、任せておけと言ったばかりだ。無様な姿を見せては、格好がつかない。

 大人は格好付けてなんぼである、というのが十条寺の信条である。

 縦では当たらないと判断し、ハウンドは横に腕を最大限に伸展させる。避けられないように、大きく薙ぎ払う腹づもりだろう。逃げ場はもう後ろか上かの二択に絞られる。そんな相手を前に、十条寺はタバコを吐き捨て、叫ぶ。

「Ⅲ章《乱牙(らんが)》、装填!」

 形状そのものは、自動拳銃の銃身を巨大化させた形状を持つ《承黒》。その銃口部分の下端に、空間から現れた巨大なカートリッジが装着される。その重さに耐えかね、砲門を下にして《承黒》が地面へと押しつけられる。

 その間に、振り抜かれたハウンドの腕が迫る。それに合わせ、十条寺はグリップを再び固定し直し、トリガーを引いた。

 ガインッ、という鈍い金属音。全体を覆うほどのハウンドの腕は、地面に突き立った《承黒》により、阻まれていた。

 Ⅲ章《乱牙》。端的に言えば、装填した杭を射出する能力である。杭は着弾と同時に展開するように根を張り、その地点に固定される。対価としてその杭が収められた超重量のカートリッジを装着する必要があり、発射時の反動も跳ね上がる。本来は崩れそうな災害現場の補強を目的とした物である。

 ハウンドは行く手を阻む、《承黒》をそのままへし折ろうと身を捻る。

 しかし、微塵も動く気配はない。

「動くわけねぇだろ」

 そんな様子を嘲笑うように十条寺はハウンドへと言い放つ。

 本来、遠方へと射出する杭を銃身本体に残したまま、地面へと打ち付けたのだ。地面に固定された杭と一体となった《承黒》は不撓不屈の意思を表すかのごとく、柱となっている。

(乗ってきてくれよ……)

 祈るような気持ちで、十条寺はハウンドを挑発的な視線で睨む。

 そう、このままでは意味はない。これでは武器を犠牲にして、柱を一本立てただけだ。読みが外れれば、終わりである。

 D1クラスのレイド全てに、人語を解す機能が備わっているわけではない。

 しかし。

「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 レイドとは元来、ベースとなった生物の攻撃性を増大させた物である。そして多くの動物には人の意志を感じ取る力が――、特に悪意に対しての機微はある。そんな状態で、挑発的な態度や視線を向ければどうなるか。

 結果、ハウンドは十条寺へと猛突進した。

「ハッ!」

 笑みを浮かべ、十条寺はグリップの固定を外し、同時にⅢ章をも解除する。

 攻撃を受け止めていたのは杭であり、固定された《承黒》であり、体は固定されていたグリップへと預けられていた。

 グルリと、《承黒》と共に、十条寺の体がハウンドの腕を起点に回転される。腕を乗り越え、ハウンドの正面へと転がり込み、仰向けの姿勢で上体を起こして、真っ直ぐに砲を構える。後端は地面へと押しつけ、しっかりと固定する。

突然目標を見失い、ハウンドの腕が自身の体へと巻き付く。

 その刹那に、十条寺は引き金を引いた。

 放たれる魔力砲。その一撃はハウンドの頭部へと着弾すると同時に爆ぜ、後頭部の輝核を一撃で粉砕した。

 輝核を砕かれたことにより、ハウンドの体が塵と消え、後には元となったであろう犬とD1ランクの輝核だけが残された。

「あー……。しんど」

 グリップから手を離し、十条寺はようやく一息ついた。

「っと」

 ほんの数秒休んだ後、ゆったりと立ち上がって刀真の元へと歩いて行く。

「ほれ、なんとかなったろ?」

 ふふんと、十条寺は笑ってみせる。そうして刀真を抱え起こし、体の何点かを調べていく。

「ま、見たところ骨も折れてねぇし、打撲と脳震盪ってところか。とりあえずは《アワード》を停止させて魔力を肉体の自然治癒に回せば、数十分で動けるようになるだろ」

 言われた通り、刀真は未だ宙に浮いていた魔導書へと手を伸ばし、閉じた。それと同時にアームド・ウェポンも消失し、フッと体が軽くなったのを感じた。瞬間的に治すようなことは出来ないが、ひとまず時間さえ取ることが出来れば十分である。

「……すみません」

「そりゃ、何にだ?」

 か細い刀真の声に、十条寺は背を向ける。

「足手まといに、なってるから」

「……」

 十条寺はあくまで、自然災害への対応を主眼に置いた魔導結社の一員である。対する刀真は対レイド戦を専門としている。だというのにこの体たらくである。本来であれば、自分が前線に立って戦うべきで――。


「ばっかだなぁ、お前」

 バッサリいかれた。


「あのな、俺はお前の倍近く生きて、いろいろ経験してんだ。出来るとことも、もちろん多い」

 あくまで背を向けたまま、十条寺は話を続ける。

「えーっと、で、まぁ上手くいえねぇけど、最初からなんでも出来るヤツなんていねぇんだから、周りを頼りながら強くなれ、みたいなことが言いたいんだ。あとは適当に察してくれ」

 そのまま、十条寺は刀真から離れるように歩いて行く。

「んじゃ、連絡いれねぇとな」

 その声は、どこかうわずっているようで、それが何となく、刀真には嬉しかった。

「こちら十条寺。交戦中だったD1ハウンドを撃破。どうぞー」

 


久遠蒼季でございます。


ということで少々ピンチだった刀真・十条寺組もひとまず決着です。



今回はオッサンが一人で立ち回る話でしたが、いかがだったでしょうか?

能力の組み合わせというのはなかなかに頭を抱える物で、どれが有効でどれが有効でないか、思考を止めていては戦いになりません。


それでは、今日はこの辺りで。

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