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=BlanK † AWard=  作者: 久遠蒼季、すたりあ、緑茶、リブ本
《ChapterⅡ》
62/99

ⅩⅩⅩⅩⅩⅩⅡ:コンフリクト・ディスオーダー

リレー小説『=BlanK † AWard=』

執筆者:久遠蒼季

 息を整え、茜は《ロートケプヒェン》を構える。銃床を肩に当て眼下の穴を覗き込む。穴の数は現在六。どの穴も暗く深く奥へと続いていた。

「! 危ない!」

 茜の横へと回り込み、次郎は咄嗟に横へ障壁を描く。

 ガインッ、と斜めに構えられた障壁へと激突するモール。その奇襲は弾かれたが、その勢いを利用して洞窟の天井へと新たな穴を空けて姿を消した。

 横の壁には新たな穴。

「いよいよ、まずいなぁ」

「そうだね」

 ゆるりとした口調で次郎は言うが、状況はかなり悪い。相手がモグラの形状を取っていて、さらにここは地中。穴から狙えるというのなら、その範囲は三百六十度、全方位となる。洞窟の直径は五mほど。こうやって宙に立っているだけで天井はそう遠くない。

 無数の気配がこちらに狙いを定めている気配が、肌に痛い。

「どうしようかなぁ……」



   ○



「あっちもこっちも、戦闘開始、みたいだな」

 十条寺は入ってくる通信に眉間に皺を寄せる。その少し先では前方へと警戒しながら短刀状態の《ガーディアンズ・アーム》を構え、龍斗も通信の内容を整理していた。

状況はどこも芳しくない。

 こちらもそろそろ会敵してもおかしくはない。

「そろそろ、だな」

そう呟き、十条寺は腰のホルスターから《アワード》を抜き放った。

「リアクト・オン」

 開かれた魔導書から光の紙片が放たれ、収束し、そして弾けた。現れたのは、巨大な砲。外見だけなら自動小銃の銃身だけを異様に肥大させたような形状を取っている。砲門は上下に二つ、下部には孔が開いていた。色は光沢のない黒。それを右腕で抱え込むようにして抱え、ズシリとした重みに、十条寺は確かな力を再認識する。

 破砕砲(デモリッションガン)のアームド・ウェポン《承黒(しょうこく)》。その重量故に、戦闘が予想されるまでは待機させておいた、超弩級の武器である。

「気ぃ抜くんじゃねぇぞ」

「はい」

 そんな短いやりとりの中にも、刀真の緊張は見て取れた。

(原因は、まぁ、お察しだな)

 どうにもこうにも、ぎくしゃくしているようだ。知らない大人との共同作戦が原因、というよりはもっと根が深いところに問題があるように見える。

 前衛である刀真を先頭に、開けた空間へと出た。刀真はすかさず球体型の光源を投げ、周囲の状況を確認する。

 そして、それはそこにいた。

「ハウンド……」

「クラスはD1ってところかね?」

 二十m四方に広がる空間の奥。先へと進む穴の前に、門番を司るようにレイド、D1ハウンドが構えていた。全長は四mほど。手足の長さもあり、下手な乗用車よりも既に大きい。それにともない爪も牙も肥大化し、瞳だけは同じように獰猛に輝いている。

「んじゃ、事前の打ち合わせ通りに」

「了解です」

 十条寺の耳打ちに、刀真は低く腰を落とす。それを敵対行動と認識したのか、D1ハウンドは地面に脚を踏みしめ、低い呻り声を上げる。

「こちら十条寺。D1ハウンドと交戦開始」

 短く通信へと伝える十条寺の声。それを切欠に刀真はハウンドへと駆けだした。走りながら、刀真は《ガーディアンズ・アーム》のグリップ後端から柄を伸ばし、左手に持ち替えて右腕鎧装に当て、捻る。

「抜刀ッ!」

短刀の切っ先が伸びて刃が装着され、さらに魔力で刃の対、鎬が形成される。短刀を一振りの刀へと換え、一足でハウンドへと間合いを詰める。

それを迎え撃つように刀真へと前足が振り下ろされる。

リーチの差は歴然。その一撃は刀真の一閃よりも遙かに速い。

 しかし、

「弾けな!」

 砲撃はその上をゆく。

 腰溜めに構えられた《承黒》から放たれる魔力砲撃。狙い通り、刀真へと攻撃が到達するよりも速く、ハウンドの足下へと着弾する。

 キュガッ、という轟音と共に、その地面が綺麗に抉り取られた。体重を預けていたハウンドの前足を残して。

「!?」

 唐突に支えをなくし、ハウンドの体がぐらりと揺れた。すぐさま削られた奥へと脚をつこうとする。だがその無防備になった横っ腹に爆ぜる魔力砲撃が二発、三発と撃ち込まれる。

「ハッ、効いたかよ?」

 これこそが、十条寺の《承黒》の能力、Ⅱ章《黒鉄(くろがね)》である。放った魔力砲弾に爆発する性質を付与し、無機物に着弾した場合に限り中心点から球状に、微塵へと粉砕する。砂や小石程度まで砕かれる瞬間は消し飛んだようにさえ見える。

 この能力で破砕できるモノは、無機物に限られる。それは地面や建造物であり、人や動物などの生き物はもちろん、魔力が通ったモノも砕くことは出来ない。故に、戦闘を行うにあたり火力として望むことは出来ない。

 しかし、その道を作ることは出来る。

「かませ、刀真!」

「はい!」

 叫びを受けた刀真は側部から跳躍し、崩れ落ちたハウンドへと刀を振りかぶる。

 初手で不意に足場を崩して一撃で仕留める。それこそが、二人の狙いであった。

「剣技」

 輝核の位置はハウンドの後頭部。倒れている今の状態なら狙える。

 ゴキリ、と何か嫌な音が響いた。

「斬滅け――」


 ぐるりと、ハウンドの首が横から百八十度回転し、刀真へと向き直った。


「な、に」

 どう見ても、関節可動域を逸脱している。通常の生物なら脊椎を損傷して死亡してもおかしくない。

 通常の生物なら。

 ゴキゴキゴキゴキッ、と異音を撒き散らしながらその首は関節と肉を増やしたように伸び、刀真へと向かう。瞬間的に防御の姿勢を取るが、それでも空中では回避できずに頭突きを食らい、背後の壁へと叩き付けられた。

「刀真ッ!」

 ぐらりと、地面に力なく倒れる。

「クソ!」

 駆け寄ろうとするが、ブンと振られた腕が行く手を遮る。十条寺とハウンドの距離は六m近く開いていた。またも腕を伸ばし、その道を阻んだのだ。離れたその獣の瞳は、次はお前だと言わんばかりに見開かれていた。

「そうかい、それがお前の特性か」

 引きつった笑みを浮かべながら、十条寺は構え直す。

 D1クラス以上のレイドが得る特性は、何も炎や氷といったわかりやすい属性や魔力による硬化などに限られない。

 こうやって、骨と肉と関節を増やして伸ばしてくる個体だっているだろう。

 刀真は起き上がろうとしている。命に別状はなさそうである。だが戦線復帰となれば、すぐには無理そうだ。

 精神安定剤であるタバコをくわえる余裕もなく、十条寺は手にした《承黒》を改めて構え直した。



   ○



「アリサ、そろそろ戦闘準備を――」

「わかってるわよ!」

 ハインツの言葉を遮るように、ありさの叫び声が洞窟内に木霊した。一瞬言葉を失い、辺りが水を打ったように静まりかえった。

「……ゴメン」

「気にすんな。こんなアナグラの中だ。気も滅入るしな」

 そういって軽く手を振り、ハインツは洞窟の奥へと歩を進める。

 レイドもそうだが、こちらも状況としてはかなり良くない。ありさに心の余裕がなくなってきている。現にここ数日、認めたくないあだ名ではあるが『ケチャップ』などと呼んで軽口を叩くこともない。

どこか張り詰めている。

 洞窟の直径はどんどん広がって現在七m近い。

「ん?」

 ただただ奥へと続いていた前方の光景が、わずかに変わった。


どうも、久遠蒼季でございます。


さて、少し設定のお話なのですが、レイドはクラスが上がることにより、戦闘能力が跳ね上がります。

その中でも特殊な能力を得るケースは多々あるのですが、それは焔を纏ったり氷を吐いたりといろいろです。


でも、今回のような変わり種が唐突に出たりするので、対策は大変だったりします。




さてさて、戦闘の行方はどうなるのか。



それでは、今日はこの辺りで。

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