Ⅵ:The Days
リレー小説『=BlanK † AWard=』
執筆者:すたりあ
○
放課後。
「優」
終礼の後、ありさは真っ先に青年の元に駆け寄る。
咲良優。ありさのクラスメイトであり、幼ななじみでもある彼は、おもむろに振り返った。
「帰ろっ」
歯を見せて笑うありさに、優も微笑み返す。
「うん、帰ろっか」
刀真、ゆうなとともに校門へと向かう。全員帰宅部なので特に学校に残る理由もない。
「でね、そしたら友だちがさー」
優は先程からありさの話の聞き役に徹していた。
彼女の輝くような笑顔は、どこか心地よいものがあって落ち着く、と優は昔から思っていた。
しかし、あの日……。優が事故に遭い、走れない身体となった日から、ありさも変わってしまった、とも感じている。
「どしたの? ぼーっとして」
ありさの心配そうな声で優は我に返る。
「ちょっと考え事してた」
「そ。具合でも悪いのかと思って心配しちゃった」
不安げに揺れる瞳に優は動揺する。
天真爛漫な彼女の儚げな姿。普段の彼女ならこんな脆い姿を人前に晒すなんてありえない。
きっと信頼してくれているからだろう、優はそう思い、ありさの頭をそっと撫でた。
「僕は大丈夫だよ」
「うん……よかった」
俯き恥ずかしそうにするありさを見てふっと笑みがこぼれた。
「高松さんって、優には優しいよな」
横並びになって歩くありさと優を見ながら刀真がぼやいた。
「まぁ確かに、刀真くんとの扱いは全然違うけど……。優しい、とはちょっと違うと思うな」
ゆうなが苦笑いで答える。
「そっか」
さして興味などなかったかのような返答をすると、二人の会話はそこで途切れた。
別れ道につき、先頭を歩いていたありさと優が振り返る。
「じゃあねー」
刀真とゆうなを見送ったあと、彼女たちは公園へと向かう。
「おまたせー!」
ありさが元気よく公園へ飛び込むと、無数の足音がぱたぱたと寄ってきた。
ありさと優に群がる数人の子ども。見た目はおおよそ低学年の小学生だろう。
「おそいー! 早くあそぼ!」
子どもたちの一人がせかしてくる。
「よーし、早速鬼ごっこしよっか! 最初はあたしが鬼ね!」
子どもが一斉に散り、ありさも走り出す。
その場に残った数人の女の子に優は声をかける。
「今日は何する? ブランコかなー、シーソーがいい?」
「……ブランコ。お背中押してほしいの」
大人しめの女の子が答える。他の女の子も頷き同意を示す。
「じゃ、行こっか」
「ありさねーちゃん!そーゆーの大人気ないってせんせーがガッコーで言ってた!」
「くやしかったらもっと早く走れるようになりなさいよ!」
ドタバタ走り回るありさ達を見て、ブランコに乗ってた子が優に押されながら話しかける。
「ねぇ、すぐるにーちゃんはもう走んないの?」
「んー、そうだね。にーちゃん最近すぐしんどくなっちゃうからね」
「そうなの?早く元気なからだになるといいね」
「……そうだね」
果たして、それはいつになるのだろうか。
もう一度、あの日のように、心地よい風の中を走れる日は来るのだろうか。
ぼんやりと虚空を見つめながら、優は自身が陸上部にいた日々を思い出していた。
「じゃーねー!」
午後五時。子どもたちが帰る時間だ。
子どもたちが見えなくなるまで見送った後、ありさ達も家へと向かう。
「優、また明日」
「うん。またね」
彼が家に入ったのを確認し、ありさは自分の家と逆方向へ足を進める。
向かう先はゼラニウム。彼女が日常から、もうひとつの日常へと飛び込む瞬間だ。
○
日も暮れ、辺りが静まり返る頃、庫森支部のメンバー達は任務へと向かう。
山奥にD3クラスのキツネ型レイドが二体出現したとの報告を受けたのだ。
「よし、いくよ!」
ゆうなの掛け声で一斉にレイドに飛びかかる。
刀真とハインツが先制攻撃を仕掛けようとしたとき、目の前で敵が急所を突かれ、白い煙を放出する。
レイドの体にはナイフが突き刺さっている。メンバーの武器ではない。一体誰が。
「そこにいるのは?」
次郎がおもむろに声を発する。一同が次郎の目線の先を見ると、人影がこちらを見て笑っているように見えた。
お久しぶりです。すたりあです。
キャラをもっと掘り下げようず、とのことで自キャラのありさ、そして優に焦点をあてたのが今回の話です。
戦いから解放されたときのありさが書けて満足です。
時間がないので今回はここら辺で。
また次回お会いしましょう。