ⅩⅩⅩⅩⅩⅢ:ブリーフィング
リレー小説『=BlanK † AWard=』
執筆者:久遠蒼季
一同は再び、ゼラニウムの喫茶店スペースへと集合した。本来なら開店準備を始める時刻だが、既に店の前には臨時休業の張り紙を出している。それぞれ席へと着き、話を聞く姿勢に入った。
「それじゃ、集まったわね」
朝食は作戦会議の後に、と前置きして、結子は地下支部から持ってきておいたスライド式のホワイトボードに、一枚の紙を貼り付ける。それは大型の庫森町の地図。昨晩提示したモノよりも詳細な情報が書き込まれた、一般流通していないアーセナル謹製の管理用地域詳細図である。そこには赤い丸印が四カ所つけられていた。
「昨日説明したとおり、緒摘山の地下百mの位置にレイドが出現しているわ。最低でもC3ランクオーバー。能力は、周囲のレイドを従わせるという点以外は不明。今後、個体名を〈イースターエッグ〉とします」
最低でもC3ランクオーバー。その言葉に、一同の表情は険しくなる。レイドのランクは一つ上がる度に二次関数的な曲線を描いて強大になる。加えていえば、DランクとCランクの間には決して越えることの出来ない厚い壁が存在している。アーカイブには一度の戦闘による撃破失敗例も少なくなく、武装魔導師による部隊を再編成し再度挑み、犠牲を払いながらの討伐は珍しくない。そしてCランクオーバーのレイドにはそれぞれハウンドやラプターなどの群体名の他に、固有の名前が与えられることが多い。
イースターエッグ。豊穣を司り、色とりどりに着色され、お菓子を詰められた卵。春を祝うはずの季節外れの地下に埋まった卵の中身は、未だ不明のままである。
指でタバコの空き箱を遊ばせていた十条寺は、ピンと箱を指で弾き地図を指さす。
「で、その赤丸が今回のポイントか」
「その通りよ」
結子は答えながら、地図の 四点を順に指さしていく。昨晩説明された四カ所の穴である。
「この四カ所からレイドの反応が検知されているわ。使える機材で調べてみたところ、緒摘山の地下に伸びてるのが確定したわ。ただし、今は奥へと帰っているのかレイドの反応は無し」
そうして一息ついて、結子は追加の資料をホワイトボードにマグネットで貼りだしていく。
「地下の〈イースターエッグ〉の他に確認されたレイドの反応は四体。D2クラス以上D1クラス以下。検知されたのが一瞬のせいで特徴までは不明」
地図の丸の近辺に張られた四枚の紙。それがレイドを表していることはすぐに理解できた。
「そこでみんなにはこの機材を持って行って貰います」
テーブルへと並べられる八つのアタッシュケース。結子はそのうち一つのロックを解除し、蓋を開けて一同へと見せる。そこに入っていたのは、固定された四本の銀色のボトル。大きさとしては少し長いアルミ缶程度。その側面にはボタンが備えられており、いくつかのパーツが組み合わさっているように見えた。
「設置型結界式。魔力を伴ったものの通行を禁止する強力な結界よ」
それを見た庫森支部の面々は思わず息を飲んだ。庫森支部が設立されてから一年。この結界が使われたことはほとんどない。内蔵されたスピリアから魔力を装置で練り上げて結界を張り上げる魔導具。それが非常に高価な物であり、かつ一定時間しか持たない使い捨ての装置であることをよく理解していたからだ。
結子が用意したアタッシュケース八つは、支部に用意されている在庫の全てである。それほどの事態が起こっているのだ。
ありさは口に指をあて、思わず息を漏らした。
「これを指示するポイントに、奥へと進むごとに一つずつ設置していって、奥を目指すってことよね」
「そうよ」
アタッシュケースを閉じ、再び結子はホワイトボードへと向き直る。
「目標はレイドの進行ルートの遮断、及び〈イースターエッグ〉が孵る前に撃破すること。撃破が確認でき次第、処置班が穴を完全に塞いで事件解決」
言葉にすればたったそれだけ。それだけのことが途方もないようなことに感じられた。
「結界は魔力を伴ったものの通行を禁じるだけだから、《アワード》さえ起動してなければ戻ってこられる。無理は禁物。命の危険を感じたら迷わず撤退を選んで」
その言葉にどれほどの意味が籠められているのか。一同はシンと静まりかえっていた。
「それでは、作戦に当たるツーマンセル四組を発表します」
かくてその口から、命を預けるそれぞれのパートナーの名が告げられた。
さてさて、久遠蒼季でございます。
物語はついに動き出します。
今回はその為の作戦会議ですね。
パートナーは一体誰に!?
それでは、今日はこの辺りで。




