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=BlanK † AWard=  作者: 久遠蒼季、すたりあ、緑茶、リブ本
《ChapterⅡ》
43/99

ⅩⅩⅩⅩⅢ:渦巻く

リレー小説『=BlanK † AWard=』

執筆者:久遠蒼季

「どうも。アーセナル庫森支部のハインツ・アルブレヒトです」

 最年長であるハインツは率先して一歩前に進み、十条寺へと挨拶する。

「龍御刀真です」

「各務ゆうなです。よろしくお願いします」

「よろしく。俺たちは、まぁなんつかーかレイドと戦うっていうより、災害救助活動してる小規模魔導結社だ」

 後ろに控えた刀真たちに、視線を向ける。

 魔導結社とは何もアーセナルやアーカイブのような大規模なものに限らない。彼らのように目的を持って結成される物もある。例えば《アワード》の研究であったり、災害救助活動であったりだ。

 彼ら、セイルもそんな小規模魔導結社の一つである。

「今は周辺には生体反応はありませんので、ご安心を」

 後ろに立っていた茜が補足を入れ、宙に浮いた地図を示す。そこには山の中腹から山頂までが描かれており、赤い点と青い点が浮かび上がっていた。こんな能力もあるのかと刀真は感心するばかりであった。

「それじゃ、役割分担で大丈夫か?」

 十条寺はピッと指を向ける。その指は山頂とその下を指していた。レイドと土石流対策。その二分ということだろう。

「了解です。んじゃ、行くぞお前ら」

 ハインツはテキパキと動き始める。D1クラスのレイドの出現。今は動きが少ないとはいえ時間に猶予はないと考えた方がいいだろう。

 三人は頷き合い、すぐさま山を登り始めた。

「なるほど。いいチームだな。さて、俺たちも俺たちの仕事だ」

 出番がない方がずっといいがな、と軽く零して十条寺達は土石流による被害予測を算出とその対策に取りかかった。



   ○



「んー、さすがに連絡は取ってからいくべきだったかなぁ?」

 次郎は件の山の麓で腕組みをして首を捻っていた。今から連絡を取ろうにもあいにくの充電切れである。

「戦闘が始まったら分かるとは思うんだけど……」

 独り言をぼやきながら首を捻る。周囲に人気は無い。庫森支部の面々はおろか、救助部隊とやらの影も見当たらない。

「っと、あれは……」

 ふと、遠くに見知った顔を見つけ次郎はそちらへと駆け寄っていく。

「おーい!」

 呼びかけながら、横に並び立つ。そこにいたのは、同じく傘を差したありさであった。

「アンタも呼び出し? ってことは、合流できてないんだ」

「そうなんだよ」

 ありさもまた、結子から電話を受け現地へ急行してきたのだ。

「ちなみに、ケータイって使える?」

「ん? 使えるわよ」

 ほら、と画面の方を次郎に向ける。雨の降る夜の中でも液晶はしっかりと灯りをともしていた。アンテナ三本、電池も半分以上。十分である。

「なら、みんなと連絡をとって欲しいんだ。僕のは電池切れでね」

 肩をすくめ、次郎は笑う。

 とその瞬間、背筋に悪寒が走り二人は咄嗟に振り返る。そこには何もない。雨に打たれた街灯が小道を照らしていた。

「孔雀丸もってことは、勘違いとかじゃないわよね?」

「周囲にレイドの気配はないみたいだけどね……」

 二人はほぼ同時に《アワード》を抜き、いつでも起動できる状態にして歩き始める。山頂のレイド以外に何かがいる。周囲の調査が必要である。

 合流は後だ。



   ○



 同じ頃、結子はゼラニウム地下の庫森支部で結子は資料の山と向き合っていた。辺り一面、レポートとファイルで埋め尽くされている。

 何かが引っかかる。そう感じて近似のレイドの発生資料を全て広げているのだ。

(そもそも、発生したレイドが暴れていないというのがそもそもおかしい)

 レイドとは輝核を取り込んでしまい、異形と変化した物である。その本質は攻撃性の強化。目についたものは何であれ破壊しにかかる。それが人だろうが物だろうが山だろうが。だからこそアーセナルは各地に支部を結成してレイドを討伐しているのだ。

 だというのに、今回の件では全く動きがない。

 これは異常事態である。

 レイドが出現直後に破壊活動に移らなかった事例そのものは一定数報告されている。だがしかし、それはあくまで圧倒的少数であり、比率でいえばかなり少ない。

(となると、元となった生物との関連)

 大型かつ飛行型のレイド。詳細な形状は聞いていないが、飛行するとなれば鳥類か虫のどちらかだろう。

(それに、地震)

 ハインツにはレイドが原因であると答えたが、詳細は分かっていない。ただ地震用の計器が作動せず、また微弱ながら魔力反応が検知されたからこその回答である。飛行型のレイドの発生だけで地震が起こるとは考えづらい。何か他にも要因があるはずだ。

「レイド、動かない、鳥、もしくは虫、動かない……」

 ブツブツと、一人呟きながら思索を巡らせていく。手元の資料に決定的な物は見当たらない。視界に入ってくるのは、定点迎撃型や土地型などのデータばかりだ。

「定点迎撃型……?」

 その単語に、ふと結子は顔を上げる。攻撃性がいくら強化されようと、それより優先されることがあればそちらの行動を取るのがレイドである。最もわかりやすいのは、いくら凶暴化しているとはいえ自身の命が危険にさらされれば、突撃ではなく撤退を選ぶという点である。これは基本行動に分類されており、行動パターンの一つである。

 優先される内容。推察を向けるならば、レイドの元となった生物である。

 想定されるのは、鳥類か虫。

 その共通点は――。

「……卵生」

 言葉を口にした途端。身の毛がよだつのを感じた。

動かずに攻撃行動を取らないレイド。ここ数日の、庫森町を限定とした地震に似た揺れ。さらに庫森支部のレイドの感知能力の有効範囲を考慮に入れていく。現在一同がいるレイドが発生した緒摘山(しょづみさん)の地下は探知範囲外であった。

 もしこの予測が正しければ、D1クラスのレイドが発生したどころの話ではなくなる。

 あぁ、この嫌な予感が外れてくれればと、結子は自らの眼帯を手で覆った。


久遠蒼季でございます。


さてさて、新章も動きが出て参りました。

なにやら大きな問題が起きている模様。


はてさて、どうなることか。



それでは、今日はこの辺りで。

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