ⅩⅩⅩⅩⅠ:新たなる出会い
リレー小説『=BlanK † AWard=』
執筆者:緑茶
同時刻――庫森の外れ。
D1レイドの潜伏していると思われる場所からは程近い。
「で。変わらずか、奴の居場所は」
スーツを着こなした、渋い出で立ちの男がそう声を発した。
彼の傍らから、緑色の燐光が粒となって舞ってくる。
「うーん。まったくもって。どぉします?」
はんなりとした柔らかな声。
男のすぐ隣の女性――黒いショートヘアーにサマードレス、大きな鍔付き帽子という出で立ちの女性はそう言った。
彼女は目の前に両手をかざし――その先には緑のグリッド線で描かれた地図が、『宙に浮いている』。その傍らには三つの光球を纏った冊子が浮遊している。
紛れも無く――武装魔導師としての証。
「お前の《見張塔からずっと(オールアロング・ウォッチタワー)》で分かることは限られてるからな。魔力探知と、生命探知。で、そのどちらも、俺達以外だと奴しか示しちゃいない」
彼女の宙に浮いた地図は周囲十メートル程を指し示しているようで、丁度自分達の十メートル先程に、青い光と赤い光が二つ重なって点滅している。
「ですねぇ。あかねちゃんはどう思う?」
すると、それまで黙っていたもう一人の女性が顔を出した。
茶髪のロングヘアの出で立ちを赤いローブで包んだ女性だ。
「そうですね。対象が動かないなら、動かすしかない。でなければ状況は何ら変わらない、と考えますが……」
茜、と呼ばれた彼女は少しだけ考えこむような仕草をする――彼女の名は、森永茜。
当然、対象、とはD1のことだ。
「しかし、対象が動けば……山が崩れます。確実に」
「さっすがあかねちゃんだね~」
黒髪の女性はニコニコしながら言う。
「いえ、別に大したことは……」
少し照れつつ、茜は引き下がる。
「身持ちが固い奴ってわけだな。さて、どう口説くか。……好きなタイプのレイドじゃあないんだがな」
「えー? そうですかねぇ。わたし、あの子好きですよ。かわいくて」
「ミチル先輩のセンスは時々分かりません……」
ミチル、と呼ばれた黒髪の彼女――名を天上ミチルと言うが――の言動に少しだけ呆れつつも、茜は左腕の時計を見た。すらりとした彼女の体躯にはあまり似つかわしくない、無骨なミリタリーウォッチ。
「……十条寺さん。『彼ら』は、いつこちらに?」
スーツ姿の中年男性は肩を叩きながら首を回していたが、名を呼ばれ、振り返って返事をする。
「知らん」
「え、知らんって……」
「いや、アーセナルの連中と合流する所までは取り付けたんだが。具体的な時間まではちゃんと決めてなかったな。まぁ、どうにかなるだろう。ここの支部長は優秀だからな」
「マイペースですねぇ、武さんは」
「おう。ありがとよ」
「褒めてないと思いますが……」
会話の応酬をしつつ、彼ら三人は『彼ら』を待った。
――と、その時。
「話もそこそこに出てきちゃったけど。合流場所とか、ちゃんと決めてあるのかな……」
D1レイドの居るという場所へ移動しながら、ゆうながそんなことを漏らす。
「まぁその辺はアレだ。フィーリングだ」
「いい加減な……」
刀真が苦言を呈する。
だが――こんなにいい加減でも、それでいてどうにかなる、どうにかしてしまうのがこのハインツという男であり……言葉尻と表情とは裏腹に、さほど不満を抱いているわけではないのだった。
「お。あいつらじゃねぇかな」
ハインツは、遠くにいる三人の男女を指差す。
――と、その時。
また、揺れた。
その衝撃で、ミチルのすぐ傍にある木が揺れ……。
それを、ハインツ達は目撃した。
そして、「危ない」と言う暇もなく。
「……フッ!」
十条寺武は、背中から大型の破砕砲を取り出し、揺れて倒れてきた木に撃った。
すると――木は、どういうわけかミチルに当たることもなく、停止した。
……見ると、木の根元に、杭が打ち込まれており、それが転倒を阻止していた。
「危なかったな、ミチル」
それは彼の破砕砲が放った杭だったのだ。
「ありがとーございます♪」
「……あの人達が」
「あぁ。間違いない。彼らが、支部長の言っていた連中だ」
その様子を、すぐ近くまで来ていた刀真達は目撃していた。
「あれが……」
――あれは。何かを倒すための力じゃなくて。
何かを、救うための力なのだ。
刀真は目撃して、それを感じ取った。
自分達の戦いは、新たな局面に差し掛かろうとしているのだ。
彼は、そう感じた。
お久しぶりです。緑茶です。新勢力の登場ですね。
これまでと違うのは全員今のところ大人ということです。
この出会いが何をもたらすのか。刀真達の視野が広がって、成長できればいいですね。
ではまた次お会いしましょう。




