ⅩⅩⅩⅩ:呼び起こされるもの
リレー小説『=BlanK † AWard=』
執筆者:鷹木影虎
○
「これから、どうしようかな」
傘を傾け、次郎は陰鬱な雨空を見上げた。ありさとの模擬戦が予定よりも早く終わり、手持ち無沙汰に感じる。夕刻の中途半端な時間で、勢いを増す雨は止みそうにない。
「うーん、ありさは行っちゃったしな」
ありさの姿は、次郎が歩く道の遥か彼方。もはや、目視の範囲外。今さら追い掛けようとも思わないが、帰路の相手を失ったのは少しだけ痛い。
「まぁ、このまま帰ろう」
生憎の雨に寄り道をする気にもなれず、次郎はゼラニウムのカウンターに戻ることを決める。こんな日には、淹れ立てのコーヒーを片手に、再度、読書に耽るのが最適解である。多少の不完全燃焼ではあるが、羽を伸ばすには十分に動いた。
が、その希望を崩すかのように、呼び出しの通知が鳴る。
「結子さんか」
着信画面に浮かび上がる四文字。メールではなく、電話。手の中で、振動は止まらない。
「きっと、悪い知らせなんだろうな」
脳内で弾き出される確率に、次郎は一呼吸を置く。いい知らせが30%、悪い知らせが70%。不穏な気配が勝り、胸中に宿る。無駄に期待をしない方が賢明のようである。
「もしもし、結子さん」
「あ、次郎。申し訳ないけど、討伐依頼よ」
通話開始の数秒で、結果が出る。最も想定される、悪い知らせ。結子の声は落ち着いてはいるが、深刻な状況であることを悟らせる。
「それで、状況は?」
「大型の飛行型レイドが出現しているの。クラスはD1.場所は、庫森の外れ。すでに、刀真、ゆうな、ハインツが急行しているわ。さっきの地震もその影響ね」
想定以上の難敵に、次郎の頭は重くなる。飛行型でD1。起こり得る事象ではあるが、あまり遭遇したくない組み合わせである。そして、地震にはまるで気付かなかった。ありさとの模擬戦をしている途中で、場所が外だから気付かなかったのかもしれない。
「……なるほど。じゃあ、三人に合流すればいいんだね」
「そうなるわね。多くの被害者が出る可能性があるから、迅速に」
「凶暴性が高いの?」
「いいえ、今の様子では凶暴性は低いわ。出現してから山の上を動いていないもの」
電話越しに、結子の一息が聞こえる。どうやら、まだ厄介事を抱えている難儀なレイドのようである。結子に釣られて、次郎も一息を吐く。
「ということは、他に問題がありそうだね」
「そうなの。山が重みに耐えかねて、土石流の発生が懸念されているの」
「それは……大変だね」
「出現時の衝撃、梅雨入りの雨、そして、頻発する地震。複数の要因が積み重なった結果だわ。最近の地震で地盤が歪んでいる上に、雨で地面がぬかるんでいるから」
完全なる二次被害。レイドの出現が起因だが、自然現象は不可避である。
「とりあえず、急いで向かうね」
「お願いね。あ、あと、一般人救助専門の組織も動いているから、場合により協力して」
「一般人救助専門の組織?」
結子から出た言葉に、次郎は小首を傾げる。一般人救助専門の組織がレイド戦に関わるのか。そもそも、一般人救助専門の組織がすでに庫森にいるのかに合点がいかない。
「そう。最近の計器上では不測定の地震の調査のために来ているの。律儀に一報を入れてくれていてね。今回のレイド戦は、土石流の発生を未然に防ぐため、最悪の事態の場合に早急に対応するために、参戦するそうよ」
「あー、そういう絡操か」
「そういうことよ。先に出た三人には詳しく話せていないから、伝えてあげて。状況を聞くと同時に、飛び出そうとしていたから話せてないの」
「ははは、了解だよ」
そう告げると、次郎は通話を切り、開けていた傘を畳んだ。雨に濡れるのは嫌だが、そうは言っていられない。状況的に、早急に合流する必要がある。
「急がないと」
降り頻る雨の中、次郎は山を下り始めた。
こんにちは、鷹樹影虎です。
参戦2周目です。ものすごく忙しいですが・・・・・・(笑)
リレー小説の難しいところは、匙の加減でしょうか。
どこまで踏み込んでいのか?は難しいものです。それも醍醐味ではあるんですが(笑)
ではでは、次回も、よろしくお願いします。




