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=BlanK † AWard=  作者: 久遠蒼季、すたりあ、緑茶、リブ本
《ChapterⅠ》
4/99

Ⅳ:図書館にて

リレー小説『=BlanK † AWard=』

執筆者:リブ本



   ○



 午後四時を回った頃。平日のまだ早い時間とあってか、庫森図書館はがらんとしていた。造りは大きな吹き抜けとなっており、その影にひっそりと並んだ机は自習場所にはうってつけである。

 ――彼もまた、この場所の虜であった。

「孔雀丸」

 背後からぽんと肩をたたかれた孔雀丸こと烏丸次郎は驚きで少し跳ね上がる。振り返ると制服姿のありさが不敵に佇んでいた。

「や、やあ。ありさ……それにゆうな、刀真も。学校帰りかい?」

 ありさの少し後ろから、刀真が軽く会釈をし、ゆうなは小さく手を振った。

「そうよ。調べ物があってここに寄ったの。あなたは?」

「僕は、まぁ……今日は大学が休みだったからさ」

「そう。ホント、図書館好きね。そんなあなたを見込んで教えてほしいんだけど……」

 おのおのが、目的の本の場所を尋ねる。

「お安い御用さ」

 次郎が本の在処を指摘すると、三人は礼を言って彼の元を去っていった。

 ふぅ、と一息ついて机に向き直る。

 ―――数分ののち、またしても後ろから

「勉強してるの?」

 ひょこっ、と今度はゆうなが机を覗き込んだ。早々に目的を果たして手持ち無沙汰なのだろう。次郎は椅子ごと振り向く。

「そうだよ。勉強しないと成績がまずいのさ」

 ありさは目を丸くした。

「ホント? 孔雀丸さんが成績ピンチなんて意外だよ。……あっ、寝坊が多かったとか?」

「やだなぁ、寝坊なんかしないよ」

 次郎はへらへらと笑いながら答えた。

「じゃあ……居眠り?」

「そんなんじゃないさ。三ヶ月も学校を休んだもんだから……」

 ―――言い終るや否や、しまった、と苦い顔をする。

「三ヶ月も……何かあったの?」

 この質問が来るに決まっているからである。

次郎は言葉に詰まった。いつもの調子なら涼しい顔で嘘の理由をでっち上げ早々に話題を切り上げるのだが―――ゆうなの漆黒の瞳の前ではどうもそうはいかなかった。

「―――あ、ごめん……。あんまり踏み込まないほうがよかったかな……」

 彼女が申し訳なさそうに口を覆うのを、次郎は「いいんだ」と制した。

数秒沈黙した後、若白髪で灰色になった髪を揉みながらおもむろに口を開いた。

「なんていうか……わからないんだ」

 ゆうなは怪訝な顔をする。

「どういうこと?」

「そのまんまの意味だよ。なんで休んだか、僕にもわからないのさ」

「それって…、」

 ―――ゆうなは続けて質問しようとしたが、やめた。彼の眠たげな目の奥が、暗雲がかかったかのように淀むのを見たからだ。

 代わりにぱっと明るい声色で言う。

「そうだ、一緒にゼラニウムに寄って帰ろうよ。折角鉢合わせたんだし」

 次郎の瞳に再び光が宿る。

「そうだね。刀真たちもそろそろ用事が済むだろうし、僕もこの辺で切り上げるとするよ」

 そう言って、机の上の本をかき寄せて帰り支度を始めた。

「白髪、抜いてあげよっか?」

 冗談めかしてゆうなが言う。

「相当薄毛になっちゃうよ」

 次郎は気の抜けた笑みを浮かべる。―――この白髪も、大学を休む前には確かに無かった筈なのだ。


お久しぶりです。リブ本です。

このあっつい時期には、エアコンを27度に効かせた部屋でアイスやら夏みかんやらを頬張りながら執筆すると気分が乗りますね。こんな感じで、作業の周辺を独自のロマンに基づいて飾り立てるのが好きです。ひょっとするとスタバで勉強する高校生とか、旅先で仕事するサラリーマンとかにも共通するところがあるんじゃないでしょうか。

ただ孔雀丸が図書館で勉強するのは、落ち着くからとか、隣人がやかましくて家で勉強できないとか、調べものに困らないとか単純な理由あってのことだと思います。

ではまた次回お会いしましょう。ありがとうございました。


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